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プロローグ

 西暦二一一六年。


 ネット通販の大手アマ○ンからの宅配物は、宅配用ドローンによって配送され、道路の上を、たくさんのドローンたちが飛び交っている。


 農場や工場では、作業用ドローンが人間に代わって様々な仕事を行い、それらのドローンは全てAI(人工知能)によって管理されている。


 科学技術の発達は家庭にも及び、現代の家はホームAIと呼ばれる人工知能と家庭用ドローンによって、家庭内の一切合切の仕事が取り仕切られている。

 掃除、洗濯、炊事、買い物……家庭内の金銭管理さえ、ホームAIが滞りなく決済する。


 昔存在した主婦と呼ばれる職業は既に存在せず、全てを機械に任せておけばいい。


 人間がすることは、AIから上がってくる報告を決済し、新しい仕事を割り振るだけ。



 本当はAIだけで全てを執り行った方が、人間が介在するより仕事が早く片付いてしまうが、それでは人間が機械によって支配されてしまう。



 ……なんてのが、僕、鈴木優一(すずきゆういち)が学校の授業の一節で習った内容だ。

 事実、今の時代はドローンとAIがいなければ、人間の生活が成り立たない。




 現に我が家のホームAIである(ぜつ)なんて、見た目は黒髪黒目の幼女にしか見えないのに、彼女が家にいなければ大変なことになってしまう。


 毎日食べる食事は、彼女が遠隔操作する家庭用ドローンによって調理されている。

 その料理を作るために必要な食材は、彼女がネットを経由して購入する。

 食材は宅配元から宅配用ドローンで家まで配達され、家庭用ドローンが受け取る。

 その食材の生産元では、農業用ドローンたちが作物を育てている。


 全てが、AIとドローンによって成り立っている時代だ。





 まあ、そんな難しい話はさておいて。





「ユウ、ユウ、これやろうぜ、これー」


 鈴木次郎。

 僕の父の弟、つまり叔父さんは、27歳になってもいまだに実家(我が家)に居候している人で、高校一年である僕から見ても、かなりダメな人だ。

 なにがダメかと言いだすと、とにかくきりがないほどダメとしか言いようがない。


 そんな叔父さんは、警備会社勤務。

 警備員と言っても自宅警備員でなく、本物の警備員なので、給料はちゃんと稼いでいる。



「何をするの、叔父さん?」

「オンゲ」


 そう言って叔父さんは、何もない空間にひとつのウインドウを開く。



 コミュニティー・リンク。

 通称リンカーと呼ばれる、首輪型の装置を、現代人は誰でも首につけている。


 リンカーは、現実とVR(仮想現実)をつなぐ為の装置で、これを介することで、現実(リアル)の世界にいながら、仮想現実の光景を同時に見ることが出来る。

 今目の前に現れたウインドウは、リンカーが見せてくれる仮想現実の光景だった。


 ついでにリンカーはネットにも繋がっているので、ネットサーフィンをしたり、離れた相手とメールや通話を自由にすることもできる。


 百年前にあったPCパソコンなんてものは、現在ではただの骨董品のスクラップだ。スマホなんてものも、歴史の教科書の片隅に、小さく書かれているだけ。


 それら過去の遺物から技術進化したものが、リンカーだ。




 僕の前で開かれたウインドウには、RPGで定番の中世風の世界が広がっていた。

 そこでは剣や魔法を武器にして、ドラゴンを筆頭としたモンスターと戦っている動画が再生されている。

 最後に表示されたタイトルは、VRMMORPGロード・オブ・ラグーン。



「普通のVRMMORPGでしょ?」

「チッチッチッ。ユウよ、それは大きな誤りと言うものだ」

 十歳以上年上の叔父さんは、わざとらしく指を振る。



「このラグーン(ゲーム)では、プレーヤーの操作するアバターをかなり自由に作り込むことが出来るんだ!」

 どうだ凄い事だろう!

 なんて言いたげに、叔父さんが握り拳を盛大に振り上げる。


「叔父さん、もしかして……」

「みなまで言うな。さあ同士よ、早速ラグーンの世界へ旅立とうではないか」


 なんて言われ、僕は叔父さんに後ろから押され、寝室へ連れていかれた。




 プレーしようとしているラグーンは、全神経接続 (フルダイブ)と呼ばれる技術を用いたゲーム。


 全神経接続 (フルダイブタイブ)を用いたVRMMORPGをプレーするためには、人間の現実(リアル)での感覚をリンカーが全てカットし、感覚の全てがVR(仮想現実)の物へ置き換えられる。

 これによってプレーヤーは、リアルに限りない感覚をゲーム内で体験することが出来るようになる。

 ただしゲームのプレー中は、体の感覚がカットされるため、現実(リアル)の体を動かすことが出来なくなってしまう。


 だから、プレー中はベットの上で寝ている必要があった。



 僕は叔父さんに誘導されるまま寝室のベットに寝かされ、そのままVRMMORPGロード・オブ・ラグーンをプレーすることになった。



 僕としても暇を持て余してもいたから、叔父さんの提案に素直に従うことにした。


 もっともこの人、

(絶対にゲーム内でやらかすよな)

 僕は、これから叔父さんがしでかすだろうことに気が付いていたけど、何も言わないでおくことにした。




 ◇ ◇ ◇




 というわけで、まずはゲームにログインして、一番最初にすること。

 プレーヤのアバターの作成から入る。



 プレー開始時に、人間、エルフ、ドワーフ、獣人、小人族など、いろいろな種族を選択できるようになっている。


 一般的でないところを上げれば、不死者(アンデット)なんて種族があって、ゾンビやスケルトンがある。

 他にもオークとかゴブリンとか。

 ……この辺になってくると、敵役のモンスターになってしまう。それも、すぐにやられる雑魚じゃないか?

 こんな種族を選択する人が、本当にいるのだろうか?


 あとは悪魔族なんてのもいるけど、これは職業魔王をやりたい人ならプレーしそうだ。

 ゲームの敵役でも、強いキャラなら、皆やりたがるよね。


 聞きなれないところでは天族とか、長命種(メトセラ)とか。

 天族っていうのは、翼がはえているから天使かな?

 メトセラの方は、身長が低くなったエルフって感じで、尖った小さな耳と、牙を持っていた。

 もっともその牙は小さいので、あまり目立たない。


 ――シャタとロリか?

 なんて僕は思ってしまった。



 選べる種族の数は膨大だけど、課金しないと選択できない種族までいる。

 僕は課金するつもりはないので、無料で選択できる中から、ベターに人間を選ぶことにした。



 性別は男性。

 そこからは、アバターの作成(キャラクリ)に入ることになる。


 ここで僕は、二、三時間かけて、キャラクターの外見をこだわって作っていった。



「ムフフフフ、ユウよ。俺は少なくとも一〇時間以上かかるので、キャラクリで十分楽しんでおきなさい。オッフッ」


 キャラクリをしている途中、ゲーム内部に小さなウインドウが開いて、叔父さんの声だけ聞こえてきた。

 通話専用の『sound only』状態だ。



 ただ、叔父さんの声は興奮気味で、ウインドウの向こうで、叔父さんが何をしているのか、僕は分かってしまった。


「叔父さん、また拗らせてるんだね……」




 ◇ ◇ ◇




 キャラクリが終わった後、僕はゲームを放置状態にして、意識を現実へ戻した。


 叔父さんはキャラクターの外見に並々ならぬこだわりを持つ人だから、アバターを完成させるまでに相当な時間をかけるだろう。

 本人が一〇時間と言っていたけど、本当に最低で一〇時間なんて平気でかける人なので、ゲーム内で待っているのがバカバカしかった。



 なお、VRのプレー中には、思考加速と呼ばれる技術が用いられる。


 人間の思考は脳内にあるニューロンとシナプスの結合によってなされているのが、前世紀での定説だったが、実はこれは半分誤り。

 正確には、人間の脳内にはそれ以下の量子レベルの次元でも、思考がなされている。


 この量子レベルでの思考領域の事は、"量子脳"と呼ばれている。

 量子脳における思考速度は常に一定でなく、人間の感情の起伏などによって、速度が変化した。


 例えば普段の生活で、いいことや楽しいことをしている時は、すぐに時間が経過してしまうように感じる。

 逆に嫌なことがあるときは、自分では一時間以上、時間が過ぎた気がするのに、実は一分も経過していないなんてことがある。

 あるいは、死にそうになった人が、わずか数秒の間に、それまでの人生すべての出来事を走馬灯のように振り返ることもあるという。


 これらの現象は、全て人間の量子脳の思考速度が加速、または低下することで、体感時間が変化して起きる現象だ。


 リアルの時間経過一に対して、量子脳の思考速度が変化することで、体感で一〇〇倍以上に感じたり、逆に一以下に感じてしまうことがある。


 現代では、量子脳の思考加速を、VR技術を用いることで人工的に操作することが可能になっていた。

 リアルでは無理だが、VR空間内では人間の量子脳を思考加速させることができ、それによってリアルの時間一に対して、体感時間を一〇〇倍、一〇〇〇倍に加速することが出来る。


 体感速度一〇〇〇倍の時間の中にいれば、現実では一秒しか経過してないのに、VR空間内では、一〇〇〇秒分の時間を経験することが出来た。



 現代のVRMMORPGでは、この思考加速技術が標準で使われていて、ゲーム内では常に一〇倍の思考加速が行われている。


 そのためゲーム内で一〇時間プレーしても、リアルでは一時間しか時間が経っていない。ということが、思考加速技術によって行われている。




 とりあえず、叔父さんのゲーム内でのキャラクリに一〇時間かかるとすれば、リアルでも一時間以上必要になるだろう。



 僕も叔父さんに影響されたせいで、ゲームのキャラクリに時間をかける癖がついてしまった。

 だが、それでも叔父さんほどではない。


「とりあえず、読みかけの漫画でも読んでるか」

 叔父さんのことはしばらく放置して、その間時間を潰すことにした。




 ◇ ◇ ◇




 現実(リアル)時間で一時間以上待った後、ゲーム内にいる叔父さんから呼び出されたので、僕は再びベットで横になって、放置していたラグーンへの世界へ再度ダイブした。


 キャラクリは既にできているので、あとはゲームの世界へ降り立つだけ。


「それじゃあ、俺は先に行ってるぞ」

 散々人を待たせておいて、叔父さんは先にゲームの世界へ降り立ってしまった。


 僕もそれに続いて、キャラクリの空間から、ゲームの世界へ降り立った。




 ゲームの世界に降り立って、目の前に広がっていたのは緑の平原だった。

 頭上から降り注ぐのは暖かな太陽の日差し。遠くに雲がポツリと浮かんでいるだけの空から降り注ぐ光は暖かく、太陽の香りがした。


 ただ、さっきまでのキャラクリ空間と違って、いきなり太陽の下に出てきたので、手をかざして、光から目を庇う。


 平原には穏やかな風がそよいでいく。

 風に運ばれて、草木の匂いが鼻腔を刺激し、風の穏やかさを肌が感じ取る。



 あらゆる感覚が現実そのもの。

 あまりにも現実的リアルすぎて、ここがゲームの中でなく、本当に地球と異なる別の世界なのではないかと、錯覚すら覚えるほどだ。


「すっ」

 ――ごい。


 そう言おうとした僕だけど、いきなり背後から抱きしめられた。



 ――ボヨン

 背中に当たる感触が柔らかい。それもただ柔らかいなんてものじゃなく、そのまま横になって、眠りの中へ沈んでいってしまいそうな心地よさ。


 背後から延びた両腕に体を抱きしめられてしまい、僕は身動きもできず、その場に拘束されてしまった。


 心臓がドキドキと跳ねて、思わず顔が熱くなる。



「フ、フハ、フハハハハ、どうだユウよ。この完全無欠なる、パーフェクトバストの威力は!」

 そして背後からするのは女の人の声。


 ただし甘ったるさなんてものはまるでなく、逆に偉そう。

 僕の体を拘束していた両腕が離れたので、咄嗟にその場から飛んで離れた。

 そして、後ろを振り向く。


「なっ、なっ、何をやってんるんですか!叔父さ……」

 すごく豊満な胸をした女性がいた。


 ゲーム内の僕よりも背が高くて、身長が二メートルに届くだろう高さ。

 その体は健康そうな肉付きをしていて、特に胸の部分に関しては、もはや狂気。


 思わず目が釘付けになりそうになるけど、僕は何とか体ごと背けて、見ないようにする。

 それでも自分の理性に反して、少しだけ目がその方向を向いてしまうのが情けない。


「クッ」

「おうおう、青少年。お前の反応はまるで中坊だぞ。高校生なんだから、自分の欲望にもっと素直になれってんだ」


 僕の葛藤を完全に無視して女性――中身は叔父さんで確定――が、僕の前で大きな胸を両手で左右から押さえつける。

 完璧だった形が崩れてしまうが、だけどそれは……


 い、いけない、視線が外せなくなってしまった!

 どうしよう……。


「……」

 目の前の女性の中身が叔父さんだということを理解していながらも、僕はその胸から視線を動かせなくなってしまった。


 ……のだけど、先ほどまで自信たっぷりで自慢していた女性が、なぜか固まってしまう。


「お、叔父さん?」

 もしかしてラグでも起きて固まったのか?それともバグか?


 そんなことを考えている僕の前で、叔父さんは突然膝から崩れ落ちて、地面の上に蹲った。


「ヒイッ、フッ、フウッ」


「ちょっ、何感じてるんですか!

 喘ぎ声なんて出さないでくださいよ!」


 だが、そんな僕の前で、女性は涙を流しだす。



「クウッ、こんなのは間違っている。俺は、なんてことを、しでかしたんだ……」

「叔父さん?」


 なぜか涙を流し、声まで泣き声になったぞ。



「ユウ、いいか。絶対に女アバターを使ってはダメだ。特に、巨乳は絶対に禁止」

「いや、僕はそう言う趣味はないからしないです」

「そうだよな。けど、俺は今日初めて知ったよ。胸は揉むから楽しいのであって、揉まれて楽しむものではないと……」

「はい?」


 この人何言ってんだ?

 いや、叔父さんが訳の分からないことを言い出すのは今に始まったことじゃないけど、いきなりすぎないか?


「俺は、とんでもない大罪を……そう、それこそ女という神聖なる神を、この手で殺してしまった」

「言ってる意味わからないんですけど……」


「ゴメン、俺もう無理。落ちるわ」


 なんか1人で好き勝手なことを言って、女性はログアウトして、その場から消えてしまった。



 えーと、このラグーンの世界って、五感が物凄くリアルだ。

 ……ってことは、もしかして自分の胸を揉んだときに、男としてでなく、女性として感じてしまったのか?


 だから、神殺しとかなんとかって……



「や、やめよう。叔父さんの奇行を理性で考えたらだめだ。頭が痛くなってきたから、今日はこれでログアウトしよう」


 結局僕もラグーンというゲームをそれ以上プレーすることなく、ゲームを終えた。




 ただ、ゲームからリアルに戻ると、叔父さんの寝室からシクシクと泣き声が聞こえてきた。



「ねえ、ユウちゃん。何があったの?」

 一人部屋ですすり泣く叔父さん。

 そんな声を聴きながら、黒髪黒目のまだ10歳にもならない小さな女の子が、僕に尋ねて来た。

 ただし、その姿は半透明。


 彼女は人間ではなく、我が家のホームAIの絶。

 家の一切合切を管理している、人工知能だ。


 彼女の姿が半透明で見えているのは、リアルの存在でなく、リンカーを介して、VR(仮想現実)の姿として見えているからだ。



 そんな彼女の疑問に僕は答える。


「叔父さんって、たまに訳が分からないから」

「んー、たまにっていうか、いつも訳が分からないよね」


 ホームAIの絶は辛辣だが、的確な事を言ったと思う。


「そうだね」

 僕もあっさり納得してしまった。




 それから三日間、叔父さんは仕事に行く以外は、自分の寝室に閉じこもりきって、家族の誰とも顔を合わせなかった。


 ただ、仕事へ向かう時に部屋から出てきた叔父さんの顔を見ると、なぜかゲッソリと頬がこけていて、明らかに正常じゃなかった。


「太陽が黄色く見えるぜ……」

 なんて、一人で呟いてる。




 そのことが心配になって、僕はホームAIの絶に尋ねてみた。


「ねえ絶、叔父さん大丈夫かな?」

「大丈夫だよ。何が辛かったのか知らないけど、いつもみたいにエロゲに没頭して、現実逃避してるだけだから」

「……」

「あ、そろそろ部屋の窓を開けないと。閉めたままだと臭いがこもるから嫌なんだよねー」


 絶が遠隔操作する家庭用ドローンが、叔父さんの部屋のドアを開けて入っていった。




 ただ、絶の姿は僕の隣に残ったまま。


「ユウちゃん。ユウちゃんは、絶対に次郎(叔父さん)みたいなダメ大人になっちゃダメだからね」

 絶はこれでも高性能のAI。


 人格や考え方は人間に近く、感情だって人並みにある。

 ただ、見た目が小さな女の子なだけだ。

 とはいえ、そんな小さな姿の子からも、ダメな大人判定されている叔父さんは、かなり重症な人だ。


 悪い人ではないんだけど、頭のネジが四、五本どこかへ飛んで行ってるんだよね。




 その後僕と話していた絶は、叔父さんの部屋の中へ入っていった。


 そして部屋の中からは、

「ホラ、いい大人が何日も現実逃避してないの。っていうか、そんなにフラフラになるまでエロゲするなんて、何考えてるの。これ以上やったら本当に体が危ないから、しばらくエロゲ禁止だよ!」

「ちょっ、絶。お前なんてことするんだ!」

「エロゲのデータへのアクセスは全て禁止!」

「や、やめろ、絶ー。俺の純愛を返せー!」

 叔父さんの部屋から、情けない叫び声が聞こえる。



 昔で言う電子情報は、現在では量子科学が発展したために、量子情報と呼ばれている。

 各家庭にはこの量子情報の蓄積、管理、処理を行っている量子(ホーム)サーバーと呼ばれる機械があり、そこにはデジタル化された写真や動画、他にはゲームなどの情報が管理されている。

 量子(ホーム)サーバーは、昔のPCの百年後の姿と言っていいだろう。


 ホームAIの絶の本体はこの量子(ホーム)サーバー内にあり、彼女は家庭内の情報管理も行っている。

 ついでに、ゲームもここで管理・処理されていて、その中には叔父さんのプレーしているエロゲも含まれていた。


 そして絶にアクセス禁止と言われたら、プレー不可能になってしまう。


 現代のAIは非常に賢い。

 それこそ、ダメな家人の行動に、強制的にストップをかけてしまうくらい。




 僕は、この二人にそれ以上深く関わることなく、叔父さんの部屋の前を後にした。


「宿題でも片づけるか」

 叔父さんみたいに現実逃避するつもりはないので、僕は目の前の問題を片づけるていくことにした。




 ただ後日、叔父さんからまたしても、

「ラグーン、プレーしようぜ!」

 と、なぜかやたら高いテンションで言われた。


「叔父さん、頼むからもっと大人になろうよ」

「……」

 僕の言葉に叔父さんはしばらくフリーズしたけれど、その後何事もなかったかのように、

「さ、ラグーンの世界へレッツゴー」

 そう言いながら、俺の背中を押してきた。



 これが僕の叔父、鈴木次郎27歳。

 いまだに結婚できない独り身の大人。

 30歳までもう少しなので、そのうち魔法の使えない魔法使いになれるだろう。


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