二人の野球少年(4)
「嘘をついてる?」
耕が聞き返した。
「ああ、お兄さんはサッカーがやりたいって言ったんだろ?おかしいと思わないか?」
「べ、別に自分のやりたいって言ったことは個人の問題だから良いじゃないか。」
耕は祐司の考えについていけなかった。それは、優介も健太も同じだった。ちょうどその時、祐司は昨日のおじさんから聞いた話を思い出していた。
「好きなことをしている時、人は良い顔をしている…」
「え?」
「お兄さんが本当にサッカーがやりたかったら、リフティングをしているときに悲しそうな顔をするか?」
「た、たしかに…」
「だからね、お兄さんは本当にサッカーがしたいわけじゃない。何かしらです野球部に入れない理由があるはずだよ。」
祐司の推理に三人はうなずいた。しかし、優介は慎重になって言った。
「でも、それだけで決めつけて良いのかな?」
「そこで僕は考えた…」
祐司は得意げに言った。
「お兄さんと一緒に野球をすればわかるさ!」
「なるほど~」
一同は納得した。
「じゃあ…健太!明日は土曜だから午後からお兄さんと遊ぶ約束をしてくれないか?」
「了解!リーダー!」
「耕と優介も大丈夫?」
「おK!!」
「じゃあ、決まりだな♪」
「じゃあ、また明日~」
それから四人は綺麗な夕陽の中、我が家へと帰っていった。
「ただいま~」
「おかえりなさい。」
祐司が家に着くと母親の、のんびりした声に返ってきた。祐司は自慢の鼻で今日の夕食はカレーライスだとわかった。もっとも、カレーの匂いは気づきやすいのだが…
「兄ちゃん、お帰り!今日はどんなミッションだったの?」
祐司に話しかけてきたのは、祐司の唯一の兄弟である。雄平である。
「ま、まあぼちぼちだな。」
「答えになってないよ!」
「あ、そういえば雄平は野球好きだったよな?明日、午後から野球するんだけど一緒に来るか?」
「あ、うん!行く! にしても、兄ちゃんは誤魔化すのが上手いね…」
「なんか、前にも言われた事があるような…」
「そうだ!兄ちゃんは中学になったら、町南中学校に入るんでしょう?」
「ああ、そのつもりだけど?」
「じゃあ、僕とは離ればなれだね。僕は町北中学校に入ると決めたんだ。」
町の中学には北と南の二つがある。
「え…何で北中学校に入るんだ?うちらの小学校のだいたいの人は南だろ?」
「それがね、僕は中学校に入ったら野球部に入るつもりなんだけど南中には無いんだって。」
「え?!」
祐司は健太のお兄さんは南中に行っている事を思い出した。
「なるほど…!」