二人の野球少年(1)
ここまで読むと優はため息をはいた。
「懐かしいねえ.... この続きは?」
「いや、まだ書いてねえんだよ。最初のミッションが思い出せなくてねえ。」
俺たちは俯いた。
「せめて、同窓会には出なよ。 満智子ちゃんも来るらしいけどさ。」
俺は満智子ちゃんの名前を聞くたびに胸がしめつけられる想いにかられた。
「まあ、同窓会くらいだったらな。さ、今日は帰るかあ。結局、健太も来なかったしな。」
「え?」
不意に後ろから声がした。
「僕ならさっきからここにいたよ?」
びっくりして俺と優が後ろを向くと、大久保健太が立っていた。
「お前、相変わらず存在感ねえなあ」
「ひ、ひどいよ!!まあ、仕事のせいで、遅れちゃったのは僕だから申し訳ないんだけどさ…
それより、その話の続き!僕なら覚えてるよ!」
「...え?」
「それだよ、それ!そのノートの話!」
「ああ...なんだっけ?始めてのミッションって」
「ほら!僕のお兄ちゃんの話だよ!」
村のはずれに村と町を結ぶ大きな橋がある。その名も、「吉郎の橋」。昔、村に田んぼを耕すための水を確保するために大きな用水路を引いた。その時、中心になって用水路を作ったのが「山田吉郎」という人物だった。その用水路の上にある橋なので「吉郎の橋」なのだ。・・・っというわけで健太を追ってきた3人はこの吉郎の橋まで来た。何も知らない健太の後ろには3人の少年がいる。
「おい、どこに行く気なんだ?」
耕が聞く
「知らないから、尾行してるんだろう。」
祐司は笑いながら言った。
「でも、健太君のおうちは町にはないはずだけど・・・」
優介は不安そうに、健太の後姿を見ていた。
すると、健太は時計を見て少しはや歩きになった。それについていく三人。橋を渡ってから町までは一本の道である、三人はいつ健太が後ろを向いても気づかれないように木の陰に隠れたりした。そして、とうとう町に来た。町に入るには東、西、北、南の4つの門からしか、入ることができない。祐司達が通ったのは東門だ。
「久しぶりだなあ。町に来るのは。」
祐司が思わず大きな声を出してしまった。すかさず、優介が口を抑えて健太の方を見たがきづいていなかった。というよりは、もう健太は遠くを歩いていた。
「しまった、おいてかれる!!!」
3人は急いで健太を見失うことのないように、走った。っと突如、祐司の足が止まった。
「どうしたんだよ。」
耕は祐司の視線の先を見ると、なぜ祐司が止まったのかわかった。視線の先には魚専門のペットショップがあった。祐司の趣味、その1「熱帯魚が好き!」である。祐司の家には水槽が3つあるとか・・・
「おまえ・・・、今はそんな時間ねえぞ!!」
耕は祐司を引っ張った。
「だって、だって、だって・・・・・ごめん。すぐ行くから、さきに行ってて。」
祐司はお店に直行した。
「っち・・・しょうがねえ行くぞ!」
耕と優介はまた走り出した。
なんとか、健太を見失うことのない位置まで近づけた。もう2人は、健太を追うことに精いっぱいで何も考えていなかったが、健太の目的地はもう近かった。
とうとう、健太は公園の前で立ち止まった。(町の中でも、前に述べたように中学校があり静かな地区があるのだがそこに公園がある。)
夕方の公園に子供の姿は少なかった。その中に一人サッカーのボールでリフティングする青年がいた。それから、健太はその青年に向かって手を振った。
「お兄―――ちゃん!!」
青年はそれに気づくと手を振り返した。