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transmigration  作者: さーどん
第一章 【彼女】
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《彼と彼女》1

「結局…土曜になって頭痛が治るとは」




はあ、とため息が漏れた。

あれから結局、頭痛がなかなかおさまらなかった私は結局一日学校を休んでしまった。



みんな、心配してお見舞いに来てくれた。

自分にこんなに人望があったのかぁと思わず涙ぐんでしまう程の人数だった。

実際ちょっと泣いた。



それでも、やっぱり気は晴れない。


理由は簡単だ。そう!




せっかく今まで遅刻しても休まないように頑張っていたというのに!!



「なんて…勿体無い」



布団にぼふんぼふん八つ当たりして、そのまま布団にくるまり芋虫状態になる。



あぁもう。今日一日はこうしとこうかなぁ。


そう考えていると。




ピンポーン。



なかなか押されないインターホンが狭い家に響き渡る。

もうなんだってんだよ…。

郵便かな。たまに来るんだよなぁ。それにしてもなんで今なんだろ。寝たいんだけどなぁ。


投げやりに下着にズボンのままでドアを開ける。


「はいはー…」


途中まで言いかけ、ドアの向こうにいた相手の顔をみて絶句した。












ドアの向こうにいたのは、

顔を真っ赤な絵の具でていねいに染めたように真っ赤になっている、田中健吾君だった。



「ッあああああああああああ!!??????」

「ごごごごっ、ごごごごめっ!!すぐっすぐ服着るから!!!」



阿鼻叫喚の嵐。

これはもうお嫁に行けないわ私は…ははは。




「あぁごめん…叫んだりして。」

「イヤイヤヘイキデスヨ。ワタシコソオミグルシイモノヲ」

「片言になってるよゆかりさん」



もうこれは…死ぬしかないわー。最後にどこ行こうかねぇ。ははは。


そこまで考えて…心配そうに私の方を見つめる彼に気づく。

あ。流石にこれは死ねないわ。めっちゃ心配そうだもん。




と、いうか。


「…今日、どうしたの?突然訪ねて来て…」

「…あっその、……まあ、月曜…さ、交流会あるらしいからさ…。」

「あぁ…そんなもんもあったっけなぁ…」

「っ……。それでさ、近所だし…一緒に買い物してくれないかなぁって。」



…!?


「…え!?いいの!?」

「え!?なにが…」

「いやいや、一緒に行ってくれるの!?」

「あ、僕じゃ嫌かな」

「嫌なわけないよぉぉ!!助かるよぉぉ!!」


私は親はいつも夜遅くまで仕事だし、いちいち友達を誘って買い物に行ってたら電車賃が大変なことになるため、こういう自分でお菓子とか買ってください系イベントがあるとボッチで買い物することになって肩身が狭い思いをしていたからとてもとても感激してしまった。



それに私は昔からここに住んでたわけじゃないから、気軽に誘えるような友達もなかなかいなかった。



しかも、彼が誘ってくれたというだけでとても嬉しい。

今まで嫌われてると思ってた人が誘ってくれるのは正直もう嬉しすぎてトランポリン100個ぐらい買えるレベルだ。



…いや、買わないけど。



「そ、そう?なら今からいいかな?」


おう。なかなか突然だな。


「いいよ!まあそこまでお金ないけど」

「そんなに遠くまで行くわけじゃないから。大丈夫」

「…えっこの辺にも美味しいお菓子屋さんとかあるの!?」

「…ここの近くに、駄菓子屋さん多いよ?」



気づかなかったのか。というような意外そうな顔で彼はいった。


ほうほう。私は基本外でないから、気づかなかった。




…とは流石に言えないわ。



「…こないだ来たばっかだから、私w」

「なるほど。じゃあ今日できる限り回ってみようか。」

「うぉぅ…」

「?」


思わず声に出してうおうといってしまった。

これはあかん、不審がられる。


「…もしかして、動くの苦手?」


うわ、痛いところ突かれた。


「…苦手っつか。面倒だというかw」



彼の瞳が前みたようにまた揺れた。

なぜだろう?と見つめていると、彼ははっとしたように目を逸らした。


「…そっか。でも動かないとなんにも買えないよw」


冗談めかしたように笑う彼。うわあ。これ結構きゅんと来ますね。

まあ恋とかではないと思うけど(多分)。


だって恋にしても…健吾君にしたらダメなような。


…?

なんでそう思うのかね、私は。いいんじゃないか。

だって、私は…男でもないのに。






ずきん!!!


「ぅ!」

「ゆかりさん!?」


また頭が痛くなる。

頭を押さえて、痛みがおさまるのを待つ。





あぁ、私は、なんか触れちゃいけないものにでも触れてしまったのか。

なにか、彼の笑顔をみて、なにか、疑問が生まれたんだ。



なにか、なにか、なにか、なにか、……



…あれ、さっきまで私は、なにを考えていたっけ。


さっきまでの痛みが嘘のように消えていく。


「ごめん、まだちょっと本調子じゃないみたいだw」

「…そっか。今日はやめとく?」

「え、それはちょっと勿体無い気がするし今日行こうぜ?」




心配そうに言う彼に、大丈夫だという代わりに、にかっと笑ってみせる。


「…そっか。でもまた痛くなったらすぐ帰ろう。」

「おう!わかった!」


そう約束して、いつもよりずっと明るい彼に道案内してもらうべく、立ち上がった。






















「おぉぉ…!!!!」


がさりと今日買った駄菓子を見つめる。

物珍しさからたくさん買ってしまった。

私のバイト代からだいぶ削ってしまったし、今月はあまり遠くまで遊びには行けなくなりそうだが、それはそれで構わないと思う位にはいいものばかりだ。


「ゆかりさん…買いすぎじゃない?」


そう言う彼の手には、私の半分以下の量の菓子がはいった袋が握られている。


「きみももっと買えばよかったのに〜」

「いや、流石にゆかりさんみたいな量買っても食い切れないよ…。」

「あははwwそれもそうかwww」


彼が呆れたように笑ってみせる。

なんだか懐かしい感じがする。とても楽しい。


今日も綺麗に染まっている夕焼けを眺めながら、茶化すように彼に話しかける。



「にしても今日健吾君明るいねぇ!」

「え?」

「いつも少しうつむいてる印象があるんだよね。席近いからよく見るんだけどさw」

「あぁ…そうかもw」

「君俯いてるよりちゃんと前向いてる方が面白いんだけどなぁw笑った顔綺麗だし」



そう言うと、彼ははっとして私の方を見る。

そうして、何事もなかったかのように彼は前に向き直った。

彼の頬が少し赤くなってるように見えるのは、気のせいだろうか。









「…君、よく恥ずかしげもなくそう言うこと言えるね。そういうところホントいいと思うよ。」









ーーーーーー同時に、彼の目がとてもさみしそうに見えたのも。気のせいだと思っておきたいと思った。























彼とあの買い物に行ってから、私と健吾君は頻繁に出かけるようになっていた。




とはいってもその全ては行事に伴って一緒に材料を揃えるってだけの目的だったけど。




その度に茶化す奴も多かったけれど、(主に健吾君に)そういう気がない事を何と無く察知してか、すぐ飽きて別の話題に食いついていった。



………それでちょっと残念な気がするのは否めない。一応相手は異性ですし、ね?




まあ、とはいってもだ…。





「…ゆかりさん、実はバカ?」





…この頃はもうすぐ再試だから勉強教えてもらってるだけなんだけどね。




「ばっバカって失礼な?こんな問題くらいちょちょいのちょ…」

「そこ。問6間違えてる。あ、あと問4もⅹをそっちじゃなくてこっちに…」

「ごめんなさいもう勘弁してくださぃぃぃいい………」

「…まだ30分しかたってないから。頑張って」






うぅ…これ以上どう頑張ればいいのやら。

完璧にバカを体現した私は目の前の怪物ども(数学)に頭を抱えていた。








「…なんで英語だけはこんなにいいんだろうね。…英語だけは僕超えてるし」





わたしは英語だけはなぜか昔からできたんだよなぁ。天才だのなんだの言われてた時期もあったっけ。懐かしいねぇ。






むかしむかしですよ。えぇ。


…所詮は会話できる程度だし。うん。





「昔から得意だったんだよwまあ今は会話できる程度だけど」

「…え、それ結構すごいと思うけどw」

「おぉ?学年一位から言われるとそんな気してくるねw」

「……茶化しすぎ、勉強」

「うぃっす」









彼が指差す先の問題に集中する…けれどすぐ集中が切れる。





「やっぱ集中系向かないなぁ…やる気がわかんw」

「………まあ君らしいけどw」




呆れたような嬉しいような笑顔で彼が呟く。

たまぁに昔からわたしのこと知ってるような口ぶりになることがあるのが…とても謎だ。





と言うわけで。






「ねぇねぇ、先生ー」

「先生じゃないです。僕は」

「…ね、君ってたまにわたしのこと知ってるような感じがするんだけど…」

「? 実際知ってるし」

「あっそう言う意味じゃなくて、昔から、みたいな。ずっと知ってる感じがするというか。」

「!」

「…懐かしい感じがする、というか、落ち着くと言うか?なんでだろ、と思って」







正直な感想も絡めつつ、彼に問いかけてみた。



一緒に行動するようになってからと言うもの、彼は褒め言葉にとても弱いことをだんだん分かって来た。

可愛い奴め。





案の定顔が少し赤くなって、……黙り込んでしまった。

あれ、突っ込んじゃいけないとこだったかな。



「…そのうち言うから。いまはべんきょ」

「……はいw」



今は聞けないのか…ちょっと残念だな。

まあ。ゆっくり聞けばいいかな。




健吾君が言うっていってるんだし、いってくれるだろう。

待っておけばいいかな。



そう考えていると、彼が話を逸らしたいのか、ゆっくりとしたスピードで話しかけてくる。



「でも、ゆかりさん…気付いてた?」

「え?なにに?」

「…ゆ…由奈さん」

「おう」

「好きな人いるみたいだけど」

「えぇ!?!?由奈がぁ!?」




ガタンっと大きな音がする。

ビックリしたのがはっきりわかるくらい彼の肩が跳ね上がった。




……へぇ。由奈が…好きな人…。

…あんなでも青春してるのか。てっきり勉強しか頭にないと思ってたよ。ごめん由奈。応援するよ(ニヤリ)





「えーっと…ちなみに?誰?」

「……自力で気付かなきゃ、そういうのはw」



あっ、呆れてる目ですね。その目は。





残念だけど、聞けないらしい。誠に残念極まりない。





そんなことを考えていると。





「……ね、…ゆかりさん」




彼から、逸らす目的もないのに話を振って来た。…珍しい。




「?」

「来週、土日さ、休み、…だろ?」

「うん」



再試がないからね。寝たい。とは言えなかった。

せっかく話題それかけてるからね。もったいないし。



「来週…出かけない?」

「お!いいね!」

「…今勉強しなくていい理由できたって喜んだろ」

「うぐ」



図星を見事につかれた。



「……まあいいや。出かけよ。…暇そうだしw」

「暇だよw勉強しないからねぇw」「しなさい」「はい」



…そんないつもの会話をしつつ、私はかなり興奮していた。


え、だって、つまりだ。










これはつまり…

今までみたいな事務的なアレじゃなくて、

友達として遊びに行けるってことですよね!!







「ふあー……」

「眠いなら叩いてあげようかw」

「眠くないですwww」







いつも通りくだらない返しをしつつ、早く来週になって欲しいなぁとワクワクを隠しきれなかった。























No.6 『中里 由奈』

・赤いメガネをかけており、ショートボブ

・由香里ととても馬が合う。由香里の成績をとても心配している

・好きな人がいるらしいが、由香里は気付いていない



No.7 『佐藤 美樹』『佐藤 慶』

・美樹:黒よりの茶髪を二つ結びにした、学年の中で顔が可愛いと評判の少女

・典型的な天然。計算で無いとありありとわかるほどにはバカ。無自覚だが、慶に思いを寄せる。

・慶:バスケの邪魔になるといって、髪の毛をとても短くしている。黒髪。

・チャラいと思われがちだが、幼馴染の美樹にずっと思いを寄せ続けている。

・無自覚両想いコンビ

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