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transmigration  作者: さーどん
第一章 【彼女】
3/41

《彼女》2

おぅ。としか言いようがなかった。



私の手に握られている答案は、一つはもちろん0点だ。当たり前だよね。遅刻してるし。うん。




おそるるべきは、もう一つの方だ。


なんというかもう、素晴らしいとしかいいようがない。

これはある意味褒め称えられてもいいと思う。




そう。簡潔に言えば私はーーーー



「あはは…あんだけ勉強して赤点とはね…怖いね由香里」





ーーー32。

私の友達、中里由奈が覗き込んで来た答案の名前の欄の横に大きく赤いペンでそう書かれている。



由奈の答案は…正直今見たくない。どうせ見ても90点代だし。くぬやろ。



「はぁ…そんな目で見ないでよw 気持ちはわからないでもないけどさ…」


そんな目ってどんな目やねん。


と思ったのを見透かしてか、「わたしをそんなに睨まないで欲しいんだけど」と苦笑いしながら顔の前で手をヒラヒラさせた。



「あんたってホント、顔に出るから気をつけとかないと詐欺にあうよ、ゆかちゃんー?」


ニヤニヤしながら私の答案をのぞきこむ二つ結びの可憐(笑)な女の子。

答案の名前欄には『佐藤 美樹』と書いてある。



「もうこないだあいかけましたよぉ…www」

「うっそ!!!????」


こんな嘘でも信じてしまう美樹の方が正直危ないと思うけどなぁ。

この子が扱いやすい女子No1なのもそのせいなんでしょうね。



「でも、ねぇ、ねぇ、ねぇねぇねぇゆかちゃん!!」

「はいはい…なんでしょうか?w」


「「ゆかちゃん(由香里)と田中くん(健吾君)って付き合ってるの?」」




それを聞いた瞬間鼻詰まりも終わりがけに差し掛かってきた私の鼻から鼻水が吹き出た。


なんてハモりにくい文章でハモってくれてるんでしょうかこの二人組は!!


「ゆか!?汚い汚い!!」

「きったねえゆか!!」

「大丈夫かゆかー?wwww」

「ちょ…右ポケットにずびっ…ティッジュありゅがら…とってくだずびっ」

「はいどうぞ」

「ありがど…ずずず」



鼻水を丁寧に拭き取りつつ、涙目になってしまう。



つかなんでそういう発想になったかね?

万年思春期と名高い美樹ならまだしも由奈まで。


「別に付き合ってないよ…つかどうしてそんな発想に?ww」



「だって2人揃って遅刻するとか…」

「しかも同時に登校とか…」

「「なんかあったのかなぁって」」


見つめあいつつニヤニヤしている二人組。

くそう。この二人揃って羽交い締めしてやりたいですね。


「美樹…ゆか困ってんぞ…wwやめてやれよぶっっふぉwwww」


脇からみていた美樹の幼馴染、佐藤慶が制止してきてくれている…けどやめてやれって態度じゃないですよねそれ。




「…いや、むしろ佐藤コンビの方が付き合ってる可能性高いと思わない、由奈?」


話題をそらそうと、由奈に振る。

…ん?由奈が凍りついたような。


「…そうね、確かに怪しいねww苗字一緒だしw」


一瞬の間の後、由奈がうまく乗ってくれた。

変な空気になったのは…気のせいかね?



慶の方をちらっと見ると、目に見えて赤くなっている。

…ん?もしかしてこれは…

「違うって!!俺他に好きなやついるし!!!!」


怪しいかなぁなんて考える暇もなく言い返してきやがったこの野郎。

一方美樹は「違うよねぇwwwありえないわwwww」と何時ものテンションで返してくる。




…その瞬間慶が涙目になったような気がするのは、気のせいだと思う。


「でも、由香里さぁ、実際結構自分から話しかけてるよね。」

「え、誰に?」


嫌な予感がする。


「田中、健吾君」


美樹が横から言葉をつないで来た。

……まあ、やっぱり?って感じだけれども。


「え!?そうかな」

「ゆかちゃんにしては話しかけてると思うよ?ww」

「それどういう意味じゃい」


私は結構男子に話しかけてるぞ。…あっ、ナンパとかそう言うんじゃなくて、純粋な意味で。


「だってゆかちゃんさぁー、無口な男子には一回か二回しか話しかけないよね、いっつも」

「あんま会話続かないからねw」


「だから、健吾君は珍しい、と思うww」


あぁ、言われてみたらー…


「…そうかも」


「おっやっとみとめましたかぁwww」


…ん?


「じゃあ早速ぅ?」


…え、ちょ


「「「告白大作戦んん!!!」」」


「なんでだぁよぉぉぁぁぁ!!!???」


…はっ!

思い切りでかい声でツッコミしてしまった。クラス中の視線が突き刺さる。

その視線はバカにしているというよりは…「またか」みたいな視線だった。

なんか、……保護者みたいな。


…うえぁ。痛い。もう痛い。

涙目になっている私をよそに、先生はホームルームを始める合図を出した。














「ゆかりさん。」

「うぇぇぇぇ…痛いぅぅうういい…」





「……ゆかりさん。」

「……うぇ!?」


聞き覚えのある声で目が覚めた。目の前には健吾君が立っていた。


うわあ。夢オチ?

ならいいけど。



「もうホームルーム終わったよ。でかい声出したと思ったら、黙って席ついてうずくまってるから、先生心配してたけど」

「夢じゃなかったぁぁぁあああ!!!」


一度起き上がった私の頭は見事にもう一度机に頭突きした。


もうやだ…誰も起こしてくれない段階でいろいろ見放されたってことじゃ…やだ…もうやだわこれ…。


「…みんな心配してたよ。一度寝たきり起きないから。何回も揺り動かしたけど起きないし。」


冷静な声が頭の上から聞こえてくる。

あ…心配してくれてたのね。なんか救われたわ。



「……みんなには、僕がみてるから帰っていいよっていっといたから。………ゆかりさん、帰宅部だったよね」


「…ぅん」


頭が今更痛くなって来た。じんじんするわー。


「一緒帰ろ。」

「…ぇ」

「…嫌ならいいけど…一緒帰らない?」


柔らかい物腰で聞いてくるその内容にびっくりして、勢い良く頭を上げてしまった。

びっくりしたのか、さらに柔らかい言い方になっている。



「いやいやー!!嫌なわけないだろ!一緒帰ろう!」


満面の笑みでそう返してしまった。これ不審がられないかなぁ。


そう思ってると、彼はちょっと笑って、「帰ろっか。」といって、くれて…


ん?







笑ってくれた!!!???


「…おぉ…!!!」


これは家帰ったらお母さんにウザがられそうだ。


うわあ…嬉しすぎる。






そのまま終始ごきげんで、私は家までついた。






玄関を開ける途中、振り向くと、夕陽で綺麗な草原の景色に健吾君の背中が見えた。





















あれ?なんか、この感じ。どっかで…見たような…?




………………頭突きのせいか。



…………なんだか、頭が痛い。





そのまま玄関を開けて、私は脇目も振らずベッドに飛び込んで、今日一日は頭の痛みが収まるのを待つことにしたのだった。
















No.5 『田中 健吾』

・少し長めの黒髪癖っ毛、メガネは黒縁

・無口で無表情。元は明るい性格であったことがたまに態度から伺える。

・成績は学年一位キープ中

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