序章. 足から根っこが生えた大学二年生の僕
今までいろんなサイトで小説書いてきたけど完結したことがないので、あとがき書けるようにがんばります。
講義がまったく耳に入らないほどに僕は彼女に恋をしていた。少人数の講義で、前から二番目の列に座っていながらもノートを取りもせず、かといって多くの生徒がそうしているように携帯ゲームに没頭することもなく、ただ怒濤の勢いで溜息をつきまくっている僕を教授はかなり引いた目で見てくる。僕の右隣の生徒に至っては、正の字で溜め息の回数をカウントし始めた。ちなみに今正の字は6個目に入った。それでも溜め息をついてしまうのはそれほどまでに僕が彼女、早乙女音芽[さおとめおとめ]に叶わぬ恋をしているからだ。ミディアムロングの黒髪を耳にかける姿を見たものは誰しも恋に落ちてしまうと言われている(僕は耳にかける姿を想像しただけで悶絶する)。いつも笑顔を振りまき(僕は微笑まれただけで気絶)、とてもきれいな声でしゃべる(僕は口が開いただけで以下略)。そんな彼女はもちろん僕にとって高嶺の花だ。
僕、相模橙[さがみだいだい]はいわゆるサクランボ少年である。彼女いない歴19年。大学生になれば自動的に彼女ができるという幻想を信じて止まなかった僕は、そういえば高校に入ったときも同様の幻想を抱いていたが、彼女自動作成機能を信じたまま生産量0で卒業を迎えたことを思い出し、悟りを開いた大学二年生で、長所は特になし、短所は顔という、わりとどこにでも居そうな男子ランキングがあれば19年連続一位をとれること間違い無しの平凡な青年Aだ。小学校、中学校、高校と好きな人は居たものの、名前すら聞くことができなかった今時流行の草食系男子である。これから話すのは、草食すぎて、体の構成成分がほぼ植物になってしまい足からは根っこが生えているようなそんな僕の初恋と失恋と、いや、あれは恋じゃなかった、今度のがホントの恋だ!っていう恋と失恋と、なにを言ってるんだ君たちは恋というのはこういうのことを言うのさ!っていう恋と失恋と、そして今とこれからの僕の恋の物語だ。聞き苦しくて見苦しくてちょっぴり胸が苦しい僕の物語。