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パズル

化け物に襲われた女子高生。それを救った虹色の戦士。女子高生にとってもそれは永遠のヒーローになった。

  

  

 昼休み終了のチャイムが鳴り、屋上のフェンスから眺める眼下の賑わいは潮が引くように校舎内へ消えて行った。そして誰もいなくなった校庭を眺めている宇田川洋子は、左手首に巻かれた包帯を取り始めた。

 つい昨日まで洋子はクラス中でのいじめの対象だった。洋子自身何をしたわけでもない。クラスで浮いていた意識もない。成績も良くもない代わりに悪い方でもない。運動神経も人並みだし、不潔にしているどころか潔癖症かと思われるくらいに綺麗好きだ。しかし気がついたときには、そんな自分がいじめの対象に選ばれていた。ある日突然、洋子の机と教科書に元の姿がわからないくらいの悪戯書きがあり、それがすべての始まりだった。

 当初は具体的な犯人はわからなかった。それでも心のどこかで少なくとも数人の仲の良い友達を信じたくて事を荒立てることはしなかった。しかし、本当の主犯は親友の絹江だった。原因はまったく思いつかない。おそらく、ちょっとした気持ちのすれ違いが洋子も気づかないうちにあったのだろう。洋子はそれ以降、事を荒立てたくないという感情すら萎えて、逆らう気力も起こらなくなり、されるままになっていた。

 しかし、それも今日までだ。わたしにはヒーローがいる。呼んでも助けには来てくれないのはわかっている。しかし、あの姿を見た瞬間から勇気を確かに受け取った。その勇気を糧に、今朝は本気でいじめに逆らい親友を殴り倒した。元々子供の頃から男の子を相手にケンカをしていたくらいのお転婆だ。今までは気持ちが萎えて逆らう気力がなかっただけなのだ。

 アイツのいじめの気力が萎えるほどに殴ってやった。案の定、誰も洋子を留めることすら出来ずにいた。そして、この屋上に来たのだ。手首に巻かれている包帯を見た。いじめが原因とか、自分で切ったとか、そんな下らないものではない。

 昨日の夜、いじめに脅えて一人で細い道を通り帰る途中にそれは起こった。

 小さな公園に差し掛かった。何組かの親子が遊んでいるのが見えた。母親と少年が向かい合って砂場で小さな山を作り、両側から一生懸命に穴を開けている。そうして無事貫通したトンネルの中で母子は手をつなぐのだ。洋子も同じ遊びをしたことを思い出していた。トンネルはもうすぐ貫通間近だった。

 しかし、突然その姿が消え、公園には洋子一人になった。

 背後から大地が揺れるような大きな音が聞こえ、地響きが起こった。

 まだ日が高いはずの太陽が無くなったかのように周囲は薄暗くなり、暗闇の中から得体の知れない者が洋子に向かって歩いて来た。

 全身の皮膚がただれているように真っ黒な影のようだった。身長は洋子よりも遥かに高い。人の形をした化け物だった。それにしても異様な形相だ。

 化け物は突然、洋子に突進をしてきた。慌てて逃げようと思っても足がすくんで動けない。化け物の顔が間近に見えた。真っ黒な皮膚の中で目だけが異様に光っている。鼻をつくような生臭い異臭が洋子を襲い、思わず顔を背けた。

 漸く洋子の足が無意識に動いて走ることが出来た。化け物も走って追いかけてくる。ブランコの前で洋子の背中を鋭い爪が襲い掛かって来た。間一髪で避けることが出来た洋子の目に、ブランコの鉄の鎖がいとも簡単に切れたのが見えた。人生経験の中でこれほどの恐怖を覚えたことはなかった。どれだけクラスでいじめられても、こんなに怖いと思ったことはない。いじめを受けているときは神経がマヒしていたのだろうか。死ぬことにも恐怖を感じなかった。しかし、今のこの恐怖は逆に自分を生き返らせたようだ。

 自分は生きている。それを自覚した今、こんなところで死にたくはない。

しかし、運命はそれを許さないのだろうか。

 洋子は右手首に痛さを覚えた。キリキリと締め上げる化け物の握力は手首を潰してしまいそうだった。そのまま化け物は腕をまっすぐ上に上げ、洋子が吊り上げられる形になった。目の前に上がった洋子の胸を食べようとするかのように化け物の口が大きく開けられた。

 その時だった。俊足で化け物の背後から迫った何者かの足が激しく化け物の足をすくい上げた。化け物は洋子を手放し、横転をして強烈に地面に叩きつけられた。

 化け物の前には、光る化け物が対峙して身構えていた。光る化け物は全身がレインボー色に輝いている。というよりも、光る包帯を頭から足の先まで巻いているような感じだった。目だけが人間味を感じる。

 洋子は思わず呟いた。

「レインボーマンかよ」

 黒い化け物は光る化け物に向かって鋭い爪を大きく振りかぶった。レインボーマンは飛び下がり。爪をかわすと同時に大きくジャンプをして回転しながら後ろ回し蹴りを黒い化け物に見舞った。レインボーマンの蹴り足は確かに化け物にヒットしたがまだまだ浅かった。化け物もなかなかやるものだ。回転をして一瞬見せたレインボーマンの背中を大きく突き飛ばした。

 レインボーマンは十メートルほど飛んだだろうか。激しく地面に転がり回転をしながらやっと起き上がった。

「強い・・・。」洋子は化け物の強さを見た。本当にレインボーマンは勝てるのだろうか。

「頑張れ!」気がつくと大声でレインボーマンに叫んでいた。まるで小さな男の子がテレビの中のヒーローの危機に大声で声援を送るのと似ている。そうだった。洋子は幼い頃は男の子と一緒にヒーローを大声で応援をしていた。

 女の子の遊びをすることは皆無に等しかった。ヒーローを大声で応援をして、外ではヒーローごっこに興じていた。男の子がヒーロー役になると、渋々悪役になった洋子はお決まりのルールには従わず、ヒーローを殴り倒してヒーローの役を奪い取ることが日常だった。

 今目の前にいるレインボーマンは洋子のヒーローになっていた。

 レインボーマンは再び化け物に突進をしてジャンピングキックを放った。

「おー、ライダーキックだ!」

 洋子は思わずこぶしを握った。

 ライダーキックは見事に化け物の胸にヒットをして、化け物の体が地面に叩きつけられた。仮面ライダーならばこれで化け物は爆発をして終わるだろう。しかし、化け物はまた立ち上がった。本当に強い化け物だ。

 化け物はまた爪を振り上げてライダーを襲った。こいつはこれしか能がないな、と冷静に分析をしている洋子はそれだけ興奮をしている。

 ライダーは振り上げられた怪物の腕をガシッと片腕でつかみ、もうひとつの片腕で化け物の腹部に強烈なパンチを打ち込んだ。しかし、距離が近すぎたのかパンチは思うようなダメージを与えることは出来なかった。

 化け物はライダーのもう片方の腕をつかんだ。

 ライダーは膝を上げて化け物の腹部を激しく蹴った。すると、化け物は後ろに飛ばされて二人の距離がまた開いた。

「あの至近距離で蹴りなんて、すごい!」

 洋子は目を丸くして小さくガッツポーズをした。

 二人の間ににらみ合いが続いた。そして、ライダーは奇妙な動きを見せた。

 化け物に対して横向きになり大きく足を開き腰を落とした。両腕はまるで力士が身構えるように太股の上でこぶしがしっかり握られている。

 そして、その腕が水平から横に半円を描くように化け物に向けられた。まるでイチローがバットを構えるときの姿に似ているようにも見える。

 右手は剣のように長い指を揃えている。そして思い切りジャンプをしたと同時に高く上がった足が高速回転で化け物の頭を打ち抜いた。次の回転では、剣のように伸ばされた指が化け物の喉をかき切っていた。

 化け物はフラフラと歩いたが、すでに攻撃を返す力が残っていないのは明らかだった。そして、化け物の首筋から光が燃えるように漏れ、やがて地面に倒れて小さな爆発をして消えた。

 暗闇の中に静寂が戻った。レインボー色をしたイチローは静かなその目で洋子をしばらく見つめて、何も言わずに歩き去って行った。

 洋子はイチロー、いや、レインボーマンの美しい瞳をはっきり見て取れた。

 絶対イイ男だ!洋子の中にイイ男のレインボーなヒーローが出来上がった。

 すると突然、周囲が明るくなった。先ほど、化け物に襲われる前に見た景色の続きがそこにはあった。

 子供が叫んだ。

「あながあいたー!」

 喜ぶ母子はトンネルの中で手をつないでいる。いったい、あれから何分経っているのか、洋子は腕時計に目をやった。

 1分も経ってはいなかった。化け物に襲われてレインボーマンが現れて洋子を助けてその姿が消えるまで、少なくとも十分以上はあったはずだ。あれは夢だったのだろうか。洋子は右手首の皮膚が青く変色をしていることに気がついた。化け物の凄い力で握られたその痕がはっきりと残っていた。

「ママ、ブランコ壊れてる」

 子供の声にふと振り返ると、女の子が母親の側で指差している先に、ブランコの鎖の片方が切られてブランコがフラフラと漂っているのが見えた。

 それまでの興奮は消え、化け物に襲われた恐怖が甦り、そこに崩れ落ちた。薄れいく意識の中で少年の母親が駆け寄って来るのが見えた。


 気がついた時、洋子は病院のベッドの上に寝かされていた。医師が手首の青痣に気づき訊ねてきたので正直に化け物に襲われたことを語った。化け物という言葉は信じなかったものの、何者かに襲われたと信じた医師が警察に連絡をしたのだろう。すぐに制服の警官が来て事情を聞いて行った。その後パトカーで家まで送ってもらい、両親の心配も他所に自室ですぐに倒れこむように寝て朝は何事もなかったようにすぐに家を出て登校をしたのだ。

 登校をするなり、親友だった絹江が声をかけてきてお金を要求してきた。洋子は何も言わずにおもいきり絹江の顔にパンチを入れ、うずくまりそうになったその腹部に膝蹴りを入れた。倒れた絹江にも容赦はしなかった。髪をつかみ絹江の頭を床に何度も叩きつける。ざわめきだした周囲を睨むように見回した。誰もが息を呑んで洋子をみている。洋子は殴られて泣きだしている絹江の惨めな姿や、洋子の凶暴な行動に恐れをなしたように佇むしか出来ないクラスメートを見ていると馬鹿ばかしくなり、教室を出てこの屋上に来た。それから昼休みが終わる今まで青空を眺めていた。そろそろ帰ろうと思い、教室の前まで戻った時だった。学年主任の赤江真由美が声をかけてきた。

「宇田川さん、もう授業が始まっているのにどこに行っていたの?」

 決して咎めるような口調ではなかった。だが、洋子は逆にそれが嫌いだった。いかにも自分は生徒の話を良く聞く先生だと可愛いフリをしているだけのようにも思えた。しかしよく見れば、赤江真由美一人ではない。その隣には背広を着込んだ四十歳くらいの体格の良い男が洋子を見ていた。赤江がその男を紹介した。

「こちらは新宿西署の平岡さん。あなたに何か聞きたいことがあるとかで」

 刑事?洋子は朝の自分の暴走を思い出した。こんなに大事になっていたのだろうか。あれだけ暴れても所詮は女の力だ。絹江もそんなに大怪我をしたとは思っていない。

「ちょっとカバン取ってきます」

 そう言って教室のドアを開けた。絹江がどんな様子かを知る意味もあったのだが、絹江は何事も無かったように席について授業を受けている。

 洋子は自分の席に行きながら「警察に行ってくるので帰ります」とわざと大きな声で、担当教師に声をかけてカバンを手にした。

 警察という言葉に絹江が逆に脅えた。この様子では絹江が警察を呼んだわけではないらしい。絹江にしてみれば、今まで自分がして来た事を洋子に訴えられそうな恐怖があるのかもしれない。何しろ今朝は恐喝紛いのようなことをしたのだから尚更脅えても不思議ではなかった。

 洋子はそんな絹江を軽蔑のまなざしで見ながら教室を出た。

 廊下で洋子の声を聞いていたらしい平岡刑事がそっと言った。

「少し伺いたいだけなので、わざわざ帰り支度をすることはないですよ」

「いえ、昨日襲われてまだ気分が優れないのでやっぱり帰ろうかと思っていたんです」

「その襲われたときのことなんですがね・・・。」

 平岡は回りくどそうに言って屋上へ行く階段を指差した。

「屋上へ行ってお話ししましょうか」


 新宿西署は副都心という場所もあってか、そんなに暇な部署ではなかった。交番勤務の警官ですら街中のトラブル処理だけでも多忙を極めていた。先日新宿駅で女の惨殺体が突如として現れた。現れたという表現が適当なのかもしれないほどに奇妙な事件だった。惨殺体となったその女はほんの1秒前には、元気な姿でそこに立っているのを多くの通行人が目撃をしている。そして文字通りの一瞬で、誰もが気づいた時には惨殺体になっていたのだ。

 当初、警察はあまりの猟奇的な殺し方から警視庁が出張ることになった。しかし科学的に分析をすればするほど、あり得ない訳のわからない状況に陥った。この事件は面倒な長期戦になると踏んだ警視庁は、所轄の新宿西署に本部を設けさせて事実上撤退をしたのだ。

 刑事となって十年になる平岡智久は被害者の女性の交友関係を調べ歩いていた。女性は死ぬ直前に、恋人と同じ新宿駅の南口にいた。彼女が先に改札を通り抜け、その後ろから来る彼氏を待っている矢先の出来事だった。彼氏にしても、多くの目撃者と同じ証言しか出来ない状況だ。一瞬にして彼女が死んだのだ。

 疲れた足を引きずって長い一日を終える為に署に戻った平岡は、玄関口で知り合いの制服警官の填島と偶然に出会った。彼は平岡の後輩で、平岡を尊敬する警官だった。

 填島は交番でたまった書類を本署に提出をしに来ていただけなのだが、平岡は填島と会話をしているうちに、先ほど起こった女子高生襲撃の話を聞いた。なるべく詳細を聞き出していた填島は女子高生の証言通りに、化け物に襲われたこと、誰かが化け物を退治したこと、気がつけば時間が1分も経っていなかったこと。そして、ブランコの鎖が片方が鋭い刃のようなもので切られていたことを語った。

「何しろ化け物ですからねー」と笑って話していた填島は、女子高生の話を完全に信じてはいなさそうだった。

「確かに常識では考えづらいことだな。それで、お前はどこまで裏を取ったんだ?」

 訊かれた填島は途端に神妙な顔になった。

「いや、とりあえず話しを聞いただけなんですがね」

「笑うのは結構だが、証言の通りに歩いてから笑うんだな」

 そう言いながら、1分間の出来事とブランコのことが気になった平岡は、女子高生の名前と学校名を聞いて来たのだった。

 

「先ほど、あなたが教われた公園のブランコを見てきましたよ。なるほど、あの太い鎖が1本、綺麗に切られていましたね」

 洋子はフェンスに背中を預けるように寄りかかりながら平岡の話しを聞いていた。平岡は洋子の手首に目を落とした。

「この痣ですか。犯人に・・・・いや、化け物につかまれた手首とは」

 洋子はどう話せば信じてもらえるのかを考えながら頷いた。

「この痣がなければ、きっと夢だったと思っていたかもしれません。何しろ、気がついた時はほとんど時間が流れていなかったんですから」

「他人の目から見ると、あなたに変化があったのはほんの数秒後。ブランコの鎖が切れたのもそうだと思います」  

「でも、実際わたしは10分くらいは暗闇の中にいました」

「暗闇ですか?」

「周りが突然暗くなってそこであの化け物に襲われたんです」

「しかし、よく無事でいられましたね」

 少女は、ふと遠くを見るような目で空を見上げて言った。

「助けてくれたんです。体が光っている人に」

 洋子はそう言いながら後悔をしたように、下を向いて頭を振った。

 誰がこんな夢のような話を信じるのだろう。誇大妄想で精神科へ行くだけかもしれない。いや、本当にただの妄想だったのだろうか。

 だが、平岡の目は真剣そのものだった。そして、その口から洋子の心配を払拭するようなことが語られた。

「最近おかしな事件が多いんですよ。それも、そのほとんどがあなたが言うような一瞬の出来事なんです」

「こういう体験って、わたしだけではないんですか?」

「実際に何者かに襲われたと訴えたのはあなただけなんですが、一瞬で殺されてしまえば訴えることすら出来ないじゃないですか」

 そう言って平岡は自分の軽率な言葉を恨んだ。あの事件はまだ一瞬で殺されたと証明されたわけではない。ただ、周囲の視線で見るならば、そう思わざるを得ないというだけなのだ。しかし、目の前にいる女子高生の話しを信じるならば辻褄は合う。襲われている本人は、それ相当の時間なのだ。しかし、周囲から見るとそれがほんの一瞬で終わっている。しかし、これをどうやって捜査をしろと言うのだ。科学捜査研究所でもお手上げの状態なのだ。

「殺された・・・・そんなことがあったんですか?」

 宇田川洋子は驚きと恐怖の眼差しで平岡に訊ね返した。まだ若い女子高生に無闇に恐怖心を与えてしまったことを後悔した。

「いや、時と場合によってはあなたも殺されていたかもしれない、という意味です。助かって良かったですね」

 取り繕いの言葉がどれだけ自分の失態の埋め合わせをしたのかはわからなかったが、洋子は安堵したように吐息をついた。

「それで、あなたを助けてくれた人に心当たりはありますか?」

「ありません。とにかく虹色のように光を発していました」

「服装とかは・・・・」

「全身ミイラ男のように白い包帯が光っていたような感じでした」

「その人は、あなたに言葉を発しましたか?声は?」

 矢継ぎ早に質問をしないように平岡は気をつけているが、女子高生のあまりにもおかしな返答についいろいろと聞き出そうとしてしまう。

 洋子は黙って首を横に振った。

「ただ・・・・」

「ただ?」

 洋子が何かを言いよどんでいるのをそっと待った。

「ただ・・・・とても綺麗な目をしてました」

「はぁ・・・。」

 この年頃は何でもロマンチックに捉える習慣がある。おそらく自分を恐怖に陥れた化け物から救ってくれたヒーローがとてつもなく恰好良く見えたのだろう。

「このまま帰宅するなら車で家まで送りましょうか。また、化け物に襲われないとも限らないし」

 洋子はふと考える仕草をした。

「・・・・でも、結構です。また襲われたら、きっとまた光の戦士が助けに来てくれるし、また会えるじゃないですか」

 平岡は、最近の女子高生の考えが理解できなかった。恐怖以上に自分の好きな人に会いたいのだろう。頭ではわかるつもりだが、平岡の理性がそれを許容しなかった。しかし、本人がそう言う以上は無理やり送ることもない。連行ではないのだ。しかし、正義の味方がまた来るとは限らない。実際に殺された女がいるのだ。まあ、あの事件の犯人が化け物と決定したわけではないのだが。それをまたこの女子高生に言うことは出来なかった。


 女子高生を屋上に残したまま、平岡は学校内に止めてあった車まで行く間にふと思いついた。そういえば、襲われた人はどれくらいの数がいるのだろうか。そして、その共通点は何なのか。まだまだ捜査は初めの一歩に過ぎない段階だ。歩いているうちに何かのヒントに突き当たることを願うだけだった。ひとつひとつが関係のない小さなピースをパズルのように当てはめていけば必ず確信に近づくと平岡は信じていた。








  


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