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1-22 鬼教師繁殖注意報


それから始まった学院生活は、アキにとっては拍子抜けするほどスムーズに進んでいった。といってもまだ一ヶ月も過ごしたわけでもないのだが、異世界だと意気込んでいたアキにはどこか平凡に感じられたのだ。

少し、期待もあったのかもしれない。

かといって、全てが平凡であるというわけでもなかった。



「これで三度目だ」


がっしりとした体格に、口髭を蓄えた男がそう言った。教授用に作られた椅子は彼には小さすぎるようで、身動きをするたびにギシギシと音を立てている。


「講義棟の鍵を掛けて廻るだけだ。なぜこう立て続けに同じ窓ばかり見落とすんだ?しかも3度も!!」


「すみません」


涼やかな声が神妙に空気を震わせた。アランである。

その隣でアキが発した謝罪らしい言葉は彼の声に重なって聞こえにくい。


「はぁ……」


男は深いため息をついた。しかしため息をつきたいのはアキたちの方だ。

二回目以降は特に念入りにチェックしたため余計に腑に落ちない。


「今日から2週間日直をしなさい。ランドルの肖像画の辺りに監視する者を待たせているから一緒にきちんと仕事をこなすんだ」


「はい」


教授は不機嫌そうに眉をひそめ、じろりとアキを睨め付けた。武芸科教授なだけあって迫力がある。アキには平然としているアランが信じられなかった。

聞いたところによると剣術部の教授らしいが、詳しいことは知らない。

研究室から出るとアキは今度こそはっきりとした口調で、しかし普段よりも少し小さい声を発した。


「失礼しました」

「失礼します」


少し後にアランの声が追随する。やはり彼はしっかりした口調だった。


研究室からある程度離れるとアキは大きくため息をついた。思いのほか……というか物凄く緊張していたようだ。

今にも膝をつきそうなアキを見てアランはふふ、と笑みを浮かべた。


「あの先生迫力あるよね」


そういう自分は結構余裕そうだ。彼相手に自然体なアランは実はすごいやつかもしれないとアキは思った。


「あー、寿命が縮むかと思いました」


さらに笑みを深めるアランをアキは恨めしそうに見る。そして再び思い出してはがっくりと肩を下げるのだった。

しばらく歩いているとランドル卿の肖像画が見えてきた。彼は生涯を生物の研究に費やした人で、晩年は研究を続けつつこの学院の学院長も勤めた人物だ。

彼の出版した生物辞典は今でも改変を重ねて出版され、学院の授業にも使われている。つまりすごい学者さんだったのだ。そして彼がその生物辞典を完成させたこの講義棟の一階の廊下に大きな肖像画が他の著名人と共に飾られることになったのである。


その肖像画の前にたたずむ人物を見てアキはへにゃりと気の抜けた笑みを浮かべ、つられて目を向けたアランはひくりと笑みを引きつらせたのだった。


はう。遅くなってすみません。

テスト終わりしだいまた更新がんばります。

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