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1-9猫の正体

明希は早足で自分の部屋に向かっていた。手紙に書かれていたことが衝撃的過ぎて、動悸が抑えられない。

この学院に入ったのは果たして好かったのだろうか。この手紙を読んだ今、明希は答えを持っていなかった。



―――――


君がこの学院に入ってくれたことを嬉しく思う。私が君をこの学院に推薦し、特別棟に住まわせたことには理由がある。

私は知っていると言うことだ。


私は知っている。


この手紙が君以外に渡る可能性も考えて、ここでは詳しいことは語れない。

だから入学式の前日、信頼の置ける私の部下に説明させることとする。すでに話は通してあるので、朝食を食べたらすぐに王宮図書館に行ってクリスティアン・クリスタライズと言えば通してもらえるはずだ。

その時、ブレスレッドを見せるのを忘れずに。


君の未来に幸の大からん事を

ヘンリー

―――――


何を知っているか、書かなくてもわかる。”どこから来たか”だ。

間違いない。ここではこういった現象がよく起こるか、私が来ることを知っていた―――つまり(彼らにとって)しかるべき手順を踏んで私がここに存在したるものとしたかだ。


おそらく前者のほうが可能性としては高い。後者ならば、この学園にいれずとも”その人物”であるとして伯爵邸まで馬を走らせればよいのだから。


しかし考えれば考えるほど頭が混乱して、どれが事実なのかわからなくなってきた。やはり自分はこういうのにはあまり向いていないようだ。

しかしブレスレッドを見せれば分かるというのは不思議なものだ。今日見た限りでは他の生徒とさして変わらないように見えたが、目に見えない何かでもあるのだろうか。

これもまた、考えても意味を成さないことであった。


明希は考えるのを諦めて小さくため息をつくと、ドアノブに手を掛けた。

それから扉を開けて、目の前の光景にぶっ飛びかけた。そして一瞬の後、しかるべき行動に出た。


「お、おじゃましましたー」


がちゃり、と扉の閉まる音がした。

明希はゆっくり辺りを見回す。間違いなく自分の部屋だ。鍵は?持っている。さっき開けたのだからきちんと閉めたのも間違いない。


…………誰?


いや、見間違いかもしれない。扉を開けたら深い藍色の髪の人が、しかも成人(しているであろう)男性がいたとか幻だ。間違いなく幻だ。間違いなくどう考えても見間違いだ。

今日はいろんなことがあったので疲れているだけだ。


明希は心を落ち着けて再び扉を開けた。

間違いなく、同じ光景が目の前に広がっている。静かに扉を閉めた。


「あー、すみません、どちら様ですか?」


アラブ系の民族衣装を思わせる服を着た青年はうっすらと笑みを浮かべる。そして私をベッドサイドの広いテーブルについている椅子に(いざな)った(私の部屋なのに)。


「すまないな。我の名はキルス・カルペンティエールだ。……そう不審な目で見るな。説明しよう」


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