第12話 不夜城ルーベリス
いそいそと違う門へ移動する。確かにさっきの門には大きな荷物を積み込んだ馬車が並んでたな……
一般人向けの門に並ぶ、心臓はバクバクだ。皆、門番と何かのやり取りをして街に入っている。お金を支払っているのか? カ、カネ……そういえば追いはぎ……服をいただいた際に硬貨があったな。ああ、もう俺の番だ……
「……嬢ちゃん、この町のもんじゃないだろ? 身分証は??」
シブめの門番に話しかけられる。
「……あ、ありません。無いと入れないのですか?」
「いや、そういうわけじゃないが……目的は? ここに親類でもいるのか?」
「い、いえ……その、で、出稼ぎに……」
ヤバい、怪しい奴と思われるだろうか? 実際怪しいけど……
「————なっ!! い、いや、その……まだ早いんじゃないか? 嬢ちゃんは若いし、それにかなり……かわいいじゃねぇか! もったいねぇ! いいか、どういう話を聞いたか分らんが、”常夜の姫”になれるのはほんの一握りの運のいい女だけなんだぞ! 大体の奴はそれはもう……」
「えっと、何の話でしょうか!?」
「何の話って……出稼ぎにきたんだろう? この西部最大の歓楽街”不夜城ルーベリス”に。その……その、もっとだな、自分の身体は大切に……俺も嬢ちゃんくらいの娘がいるんだよ。だから、何と言うか、その……」
歓楽街って……? 常夜の姫? なんか田舎から出てきた、冬の次のアレを売りにきた娘……的に思われてる?? というか、それ以前に……そういえば、さっきから”嬢ちゃん、嬢ちゃん”って言われてるな。
「えーっと、おれ男なんですけど……」
「——えっ!? うそっ!!」
シブめの中年男性門番さんが驚愕の表情を浮かべている。そして、”おそるおそる”といった感じで尋ねてくる。
「……それなら単に冒険者希望か? それとも、その、そっち専門の……」
「——冒険者ですっ!!」
◇
とにかく街には入ることができた。身分証を持たないとのことで、銀貨1枚の通行税がかかった。これは鉄馬車の人たちから頂いた中にあった、銀貨っぽい硬貨を1枚出して乗り切れた。
そして「そっち専門の」を強く否定するため、思わず「冒険者ですっ!」って叫んだため、冒険者ギルドを案内された。冒険者ギルドに登録し、冒険者証を発行してもらえば、次から通行税は銅貨1枚でいいらしい。タダじゃないんだね。
「……”冒険者”……か。ザ・ファンタジー……」
やっぱりあれか、魔物がいるなら”冒険者”だよな。そして、冒険者ギルドだよな。ただ、『冒険者ギルド』とはただの通称で、正式名称は『総合調整自由組合』だそうだ。ファンタジー感ゼロだな……
中世西欧風の街並み……にしては均一に整えられた精緻な石畳の上を歩く。この大通りを歩いていくと街の中心に出るらしい。しばらく歩くと大きく開けた、円形の広場に出た。
その中心には、白い大理石で創られたような大きな時計塔が立っていた。
『時計……あるんだな、この世界も』
妙なことに感動しながら、空いているベンチに座る。
「さて……今からどうしよう」
街に着くまで気にしていなかったが、異空間に収納された硬貨を数える。わざわざ出さずとも意識するだけで、数とかは把握できる。
『大金貨2枚、金貨24枚、銀貨30枚、銅貨45枚。すげー、コインカウンター機能までついてるとは』
チートすぎるぜ、異空間魔法。貨幣価値、物価などはまだ全くわからないが、今日明日で食うに困るというほどではないはずだ、とんだインフレ経済でもない限り。
「………とにもかくにも、『冒険者ギルド』を目指すか」
この街、西部最大の歓楽街がある”不夜城ルーベリス”には地方からの出稼ぎ労働者が多く来るらしい。一番多いのが、何と言ってもこの街最大の産業、いわゆる”夜の世界”の業界で働くためにやってくる者たち。特に若い女性が多いらしい。なぜか、俺もそれに間違われたし。そして次に多いのが、冒険者志望の若者たち。
ここルーベリスには西部地方2番目に大きな冒険者ギルドがあるらしい。そして、その冒険者ギルドで近年行われるようになった『初心者講習』。これを受けてみろ、とは先ほどのシブめの門番、カルマルさん談。
「なんだかんだで、色々と教えてくれた親切なおじさんだったな。変な勘違いされそうだったけど……」
時計塔を正面に見て、右側に伸びる大通り。その通り沿いにある大きな3階建ての建物。それが冒険者ギルドらしい。『剣と盾』が描かれた看板……ではなく、普通に『総合調整自由組合』と書かれた看板が掛かっていた。建物自体は石造りの武骨な感じだが、どことなく日本の市役所を思わせる。
正面玄関の右側には開けた場所があり、そこに冒険者と思しき人たちが、色々な物資……魔物の死体?? などを運び込んでいる。
「ふぅー、とりあえず入るか……入るとおそらく……」
「おお! ここはガキの来るところじゃねぇぞぉ!」とガラの悪い男たちに絡まれ……ることもなく、『総合案内』と書かれたカウンターがあった。
「総合調整自由組合ルーベリス支部へようこそ。ご用件をお伺いします」
と感じのいい若い女性に対応された。普通に市役所じゃん、と内心思いながらも
「あの、冒険者の登録……」
「えっ?? 依頼の持ち込みじゃないんですか!?」
「えっと、その、違います。初心者講習も受けたくて……」
「――本当ですかっ!! よしっ! ミレイさーんッ!!」
なぜかガッツポーズを決めた受付の女性は、バックヤードを振り返り人を呼んだ。一人の若い、しかもすごい美人がやってくる。
「この子が冒険者登録と、初心者講習を受けたいって!」
「ええ!? ……こんなかわいい子が冒険者??」
「そんなことより、『初心者講習』ですよ! うちの支部の第一号さんがやってきたんですよぉ!!」
おお、なんかすごくテンション上がってるな。しかし、”第一号”なのか、おれ?
「ルーシュ、落ち着いて。失礼しました、それでは初心者講習の説明もありますので、こちらのブースへどうぞ」
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