鑑定スキルで『ゴミ収集・加工』と診断された聖女の私、実は世界中の魔力をリサイクルできる唯一の存在でした~今更「結界が消えた」と泣きつかれても、王子たちが「負のエネルギー」にしか見えません~
第一章:追放の儀式と「ゴミ」の真実
「リリアーヌ。君の【聖女鑑定】の結果が出た。残念だが……君の能力は『ゴミ』だ」
豪華絢爛な王宮の謁見の間。大理石の床に跪く私の前に、婚約者であった第一王子、カイルが冷酷な声を響かせた。
彼の隣には、新しく聖女として選ばれたという、華美なドレスに身を包んだ伯爵令嬢のミレーヌが、勝ち誇ったような笑みを浮かべて寄り添っている。
「ゴミ……ですか?」
私は聞き返した。
この国、エルドラドにおいて聖女の力は絶対だ。魔物を退け、作物を豊かにし、人々の傷を癒やす。その力の源となる「ギフト」を鑑定する儀式は、人生を決定づける。
「そうだ。鑑定水晶に表示された文字は『ゴミ収集・加工』。……ふん、笑わせる。国を救うべき聖女が、掃き溜めの掃除番か? 聖女の座はミレーヌに譲ってもらう。お前のような無能は、今すぐこの国から失せろ」
「ですが、私はこれまで十年間、休まず結界を維持し続けて……」
「黙れ! それも先代聖女の遺産があったからだろう。お前の力ではないことは証明されたのだ」
カイル王子の合図で、近衛騎士たちが私の腕を掴んだ。
身の回りの品をまとめる時間すら与えられず、私は着の身着のまま、王都の裏門から放り出された。
「……ふう」
重い鉄の門が閉まる音を聞きながら、私は深く溜息をついた。
絶望して泣き崩れると思った?
いいえ。私は、ドレスの裾についた土を払い落とすと、誰にも見えないように口角を上げた。
「――やっと、捨てさせてくれるのね」
実は、私のギフト『ゴミ収集・加工』の真の価値を、あの高慢な王子たちは何も理解していなかったのだ。
第二章:辺境の「ゴミ」が宝の山に変わる時
王都から数日。私が辿り着いたのは、地図の端に位置する「忘れ去られた死の森」の境界でした。
ここには、かつての戦争で放置された鉄クズや、魔獣の死骸、さらには不法投棄された魔法の失敗作が山のように積み上げられています。
普通の人なら絶望する光景ですが、私にはここが「宝石箱」に見えました。
「さあ、始めましょうか」
私は右手をかざし、ギフトを発動します。
【ゴミ収集・加工:起動】
瞬間、周囲に散らばっていた錆びた剣や折れた魔杖が、意志を持ったかのように空中に浮かび上がりました。
このスキルの真髄は、単なる掃除ではありません。
「不要と判断された物質から、その『本質的なエネルギー』を抽出し、再構築する」
……つまり、誰かが「ゴミ」だと捨てた瞬間に、それは私の魔法の材料になるのです。
数分のうちに、錆びた鉄は純度100%の「ミスリル銀」へと精錬され、魔力の切れた石コロは「魔力結晶」へと形を変えていきました。
私はその素材を使い、森の中に快適なログハウスを作り上げました。さらに、抽出した余剰エネルギーで自分を包むと、かつて王宮で抑えつけられていた魔力が、全盛期の数十倍にまで膨れ上がっていくのを感じました。
「ふふ、王宮の結界も、実は私が毎日こっそり『空気中の塵』をエネルギーに変えて維持していたなんて、あの方たちは気づきもしなかったでしょうね」
第三章:崩壊する王国と、遅すぎた訪問者
一方、リリアーヌを追放したエルドラド王国は、未曾有の危機に瀕していました。
「……おい、どういうことだ! なぜ結界が消えた!?」
カイル王子が怒号を上げます。
王都を囲んでいた聖なる光の壁が、彼女が去った翌日から目に見えて薄くなり、ついには霧散してしまったのです。
「そ、それが……新聖女のミレーヌ様が祈りを捧げても、結界は一切反応せず……それどころか、王宮内に溜まった『邪気』のせいで、騎士たちが次々と倒れております!」
「邪気だと!? そんなもの、今まではなかったはずだ!」
「いいえ、カイル様。以前は……リリアーヌ様が、王宮内の負の感情や汚れを、すべて『ゴミ』として吸収し、結界の燃料に変換していたのです……!」
魔導師長の震える言葉に、カイルは顔を青くしました。
新聖女ミレーヌは、綺麗な花を咲かせることはできても、汚いものを処理する力は持っていませんでした。
王宮は瞬く間に、人々の悪意と物理的な汚れ、そして魔物の呼び水となる邪念に溢れた「本当のゴミ溜め」へと変貌してしまったのです。
「くそっ、あの女を探せ! 連れ戻して、また掃除をさせれば済む話だ!」
第四章:真の「ゴミ」は誰だったのか
静かだった私の森に、けたたましい馬の嘶きと鎧の擦れる音が響きました。
現れたのは、泥にまみれ、かつての威厳を失ったカイル王子と、ボロボロのドレスを着たミレーヌ。そして疲弊しきった騎士たちです。
「リリアーヌ! こんなところにいたか。……なっ、なんだ、その屋敷は!?」
彼らの目の前にあるのは、私が『加工』した魔力結晶で光り輝く白亜の別荘。庭には、王宮では見たこともないような大輪の魔力花が咲き誇っています。
「あら、カイル様。わざわざ『ゴミ』の様子を見に来てくださったのですか?」
私はテラスで、最高級の茶葉(これも、本来なら捨てられるはずの古い茎から香りを抽出したもの)を楽しみながら、にこやかに微笑みました。
「ふざけるな! 貴様が消えてから王都は魔力汚染で滅茶苦茶だ。……おい、今すぐ戻ってこい。特別に、また私の側近にしてやる。ミレーヌの掃除係としてな!」
カイル王子の言葉に、私は思わず吹き出しました。
隣でミレーヌが「そうよ! あなたのような卑しい能力には、ゴミ掃除がお似合いなのよ!」と叫んでいますが、彼女の足元からはどす黒い邪気が溢れ出しています。
「お断りします。私は今、ここで『価値あるもの』に囲まれて幸せなのです。……それに、カイル様。あなた、何か勘違いしていませんか?」
私はティーカップを置き、ゆっくりと立ち上がりました。
「私のギフトは『ゴミ』を収集し、加工する力。……そして、今、私の目に見えている最大の『ゴミ』は――」
私は、彼らとその背後にある腐敗した権力構造を指差しました。
「あなたたち自身よ。」
「なっ……貴様、王子である私に向かって何を――!」
カイルが剣を抜こうとした瞬間、私はギフトを最大出力で発動させました。
【ゴミ収集・加工:究極処理】
「消えなさい。この森に、不法投棄は許されません」
眩い光が彼らを包みました。
叫び声を上げる間もなく、カイルやミレーヌ、そして彼らが抱えていた傲慢なプライドやドロドロの嫉妬心が「負のエネルギー」として吸い取られていきます。
数秒後、光が収まったとき。
そこに立っていたのは、記憶を失い、ただの村人以下の身なりになった「空っぽ」の男女数名でした。彼らの身に纏っていた豪華な装備や魔力は、すべて私の家の石畳へと再構築されてしまったのです。
第五章:エピローグ
それから数年。
エルドラド王国は、溜まりに溜まった「邪気」という名のゴミを処理できず、内側から崩壊しました。
一方で、私が住むこの森は「聖域」と呼ばれるようになり、心正しき人々が集まる美しい村へと発展しました。
私のギフトは、今や国を支えるエネルギー源として重宝されています。
「リリアーヌ様、また新しい『ゴミ』が届きましたよ!」
村人が持ってきたのは、壊れた農具や古い衣類。
私はそれを優しく受け取り、輝く宝物へと変えていきます。
「ありがとう。……ねえ、知ってる? この世に本当のゴミなんて、一つもないのよ。……ただ一つ、『心』が腐ってしまった人を除いてはね」
私は空を見上げました。
かつて自分を縛っていた、重くて薄暗い王宮の記憶。
それさえも今は、私の美しい庭を彩る、一輪の青い花へと加工されているのでした。
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!
「ゴミ」扱いされていたスキルが、実は世界を再構築する唯一の力だった……という逆転劇を楽しんでいただけていれば幸いです。
最後、カイル王子たちが文字通り「リサイクル」されていくシーンは、書いていて私自身も少しスッキリしてしまいました(笑)。
もし少しでも「リリアーヌ、よくやった!」「スカッとした!」と思っていただけましたら、画面下の**【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】**にしていただけると、執筆の大きな励みになります!
ブックマークもぜひ、よろしくお願いいたします。
また別の短編や作品でお会いできるのを楽しみにしています!




