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其の六
オーリンは、館の闇の奥底で悟った。すべての犠牲者は、魂の断片であったことを。彼らの“首”は、未来の自分自身の可能性の一部だったのだ。
公爵は、ただ単に命を繋いでいるのではない。己の完全性を取り戻すため、時を越えて己の“分身”を集め続けていた。
やがて、最後の欠片が揃うときが訪れた。深い静寂の中、公爵の身体はその椅子に座り続けていた。まるで何十年も動かなかったかのように。
だが、その時、空気が変わった。
オーリンの“首”がゆっくりと、その身体の上に滑り落ちる。触れるべき肉、骨、筋肉がぴたりと合わさり、不自然なまでに完璧に噛み合った。
まるで機械のような、ぎこちない動きで“新たな公爵”が目を開ける。
彼の視線は、もはや招待客たちを捉えない。見渡す晩餐の間には、誰一人として残っていなかった。
代わりに、机の上に封蝋された招待状が十通、規則正しく並んでいる。
それは、まるで新たな連鎖の始まりを告げる呪いのようだった。
暗闇の中、オーリンの新たな首は微かに震え、冷たい微笑を浮かべた。
晩餐は、終わらない。
首が尽きぬ限り。