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【悲報】俺のスキル『ネット掲示板』だけど大丈夫そ? -0から始める異世界通信 -  作者: 上井
【悲報】美少女助けるテンプレ展開、ただし所持スキルはゴミとする
7/19

7スレ目

「――ま、オレはいいとして、だ」


 オレは頭の中の、緑の髪の初音メグちゃんと、目の前の銀髪のアルパーが天秤に乗っているイメージを首をぶんぶん振って払う。

 そのまま、御者台の方に向かって叫んだ。


「メイドさん! メイドさんー」

「――私も、お嬢様同様、ファルとお呼びいただいて結構です」

「そんなら遠慮なく。ファルさん、妹ちゃんには追いつけそう?」


 馬車全体が、石に乗り上げてかがたんと大きく揺れる。


「……正直、分かりません。お嬢様方を乗せて走っていたのは、ロード商会の抱えていた御者のデルタという女です。腕は確かですから……隣の街までは逃げおおせるでしょうね」

「隣町……!? そこまで行かれてしまえば、もう……!」


 アルパーが焦ったように声を荒げる。


「あの子、ひとりじゃ逃げれないのに……!」

「――お屋敷を出る前に、商会の者には言づけておりますが。私たちより早く着くことはないでしょう。隣街で一晩隠れてから出発されれば、足取りはもう」

「タイムリミットは、明日の夜明け、か」


 窓から日を見ると、大分陰っている。猶予はそう長くはなさそうだ。


「屋敷の従者たちは頼りにできないでしょう。おそらく、私たちが隣町に入るのが()()です。そこから先は、()()()()()

「門? 閉じる? なんで?」

「……本当に記憶を喪っているみたいね……この道、森が近いから魔獣が出るんです。山間にある街っていうのは、夜は門をきっちりと閉めて、街壁に明かりを灯してるの。外出にはステータスを開示しての許可がいるわ」

「はえー(小並感)」


 小学生並みの感想が出てしまった。夜はモンスターが湧くって、お決まりだけども。

 ま、ネットの海でも深夜になるとモンスターくんワラワラだったしな。そんなもんか。

 

 しかし――今のオレたちにとっても、「夜は街から出られない」はありがたい話だ。


「つまり、デルタとかいう馬車の女御者も、一晩は街から出られないんだな?」

「ええ。そうなります」

「じゃ、今晩中に妹ちゃん……ダウナーちゃん? の居場所を特定。これがミッションになるわけだ」

「はい。そのようになります。現状の把握は充分なようですね」

「おう! ……言っといてなんだけど、ファルさん、ミッションって意味分かんの?」

「知識としてはありませんが、文脈からの推測です」

「ファルはこの大陸にある3ヵ国語すべてを話せるの! 本当にすごいわ」


 アルパーがふん、と胸を張る。ファルはやめてくださいお嬢様、とたしなめる。オレはがっくしする。

 メイド(かつ執事、かつ護衛、かつ御者、かつトリリンガル←NEW!)

 オレ、ここに居る意味、検索(けんさくけんさくぅ)


「しかし、あなたは私でも聞いたことのない言葉を使うことがある。記憶はないとのことですが、もしやあなたはこの大陸の出身ではないのでは?」

「……そうかも!」


 メイドさんほぼ正解。推察力もあるとのこと。

 もうこいつだけでいいんじゃないかな。

 オレは誤魔化すように咳払いをしてから、話を続ける。


「隣街に、オレたち以外に頼れそうなツテはある?」

「うちの商会の支店が、あるにはあるのだけれど……」


 アルパーが言葉を濁す。変わって、ファルが話を受け継いだ。


「デルタがこの街に逃げ込んだこと、それを鑑みると得策とは言えませんね」

「裏で繋がってる可能性を捨てきれない以上、下手に頼ると裏をかかれるかも、か」


 そう言いながら、アルパーの顔色を伺う。さっき、ファルのことを自慢げに話していたときとはうって変わって、暗い顔をしている。妹がさらわれている現実を思い出したのもあるだろうけど……


 身内であるはずの、隣町の商会の支社を言いよどむ。どうやら現実(リアル)と一緒で、異世界の企業ってのもどうも一枚岩にはいかないみたいだ。世知辛いねえ。


 やっぱ会社ってまんどくせ。働いたら負けだと思っている節、あります。


「ま。……それなら、やっぱり。「直接」が早いよな」

「! ……それって……!」


 オレが言葉と共に右手を振って掲示板を呼び出すと、アルパーが身を乗り出す。


「ああ。……アルパー、きみの妹ちゃん、『ロード・ダウナー』の名前のスペルを教えてくれ」

「――やはり、ソレ、ですか」


 ファルが御者台から声を放つ。


「『相手の名前が分かれば会話できる』……破格ですね」

「なんかデスノートみたいな言い方が腑に落ちねえが、そうだな」

「でも、本当にダウナーと直接話せるなら――!」

「……懸念点はそこ、なんだよなあ」


 オレはキーボードをカタカタ打ち、教えられた通りの綴り(スペル)で『DOWNER ROAD』と打つ。――該当の名前、発見。

 すぐには追加せず、馬車の中で考えた、脳内プランを改めて検討する。


「ファル、さっきオレの掲示板に『OK』ってレス(返信)つけてたよな」

「ええ」

「あれ、どうやったんだ?」

「――出現した字列ですが、触れると文字が浮かぶことに気付きましたため、その中の二文字で肯定を表せる並びを取り急ぎ打鍵しました」

「理解力スキルLv.99かよ……」


 そう、これだ。

 オレが懸念してるのは、現実的な話、タイプ式キーボードに馴染みのない異世界人と、「連絡」が果たして取れるのか。これだった。


 こっちからの一方通行なら、向こうに表示される文字を読めさえすれば事足りる。

しかし、向こうからの通信――双方向で連絡を行うには、当然相手側もキーボードタイピングを行える必要がある。

 しかもファルとアルパーの画面を確認して分かったことだが、この『異世界通信』、厄介なことにデフォルトになってるのはqwerty配列――キーボードでのローマ字入力だ。

 異世界人にとっては、当然、馴染みどころか見たことのない文字列。


 オレみたいな現代人は、「イメージ」があるから、キーボードをスマホのフリック入力なんかに変換できたけど、そもそも文字入力の概念が無ければ、使えるのはローマ字キーボードのみ。


 流石にファルの判断力は異常だろう。これを求めるのは酷だ。

 しかし、わけのわからないまま会話を迫られ、しどろもどろになってキーボードをじっくり叩くことになってしまえば、おそらく横に控えているであろう誘拐犯(デルタ)に連絡を取ってることがバレるのは必至。それこそ本末転倒だ。


 だとすると――あの戦法しかないな。


「次に囚われのダウナーちゃんが、まずステータスを開く場面ってある?」

「あるとすれば、街に入る瞬間ね。どのような人物でも、ステータスボードの提示を必ず求められて、指名手配されてる犯罪者とかの名前と照合されるのよ」

「なるほど、そりゃいい開示請求(実名開示)だな……デルタとかいう女がダウナーを連れ去ってから、時間的にはどう?」

「おそらく、そろそろ街に着くころかと」

「ふーン……今が、ダウナーちゃんが『掲示板(ブレッティンボード)』に気付くベストタイミング、と」


 オレは今聞いた情報を整理して、イケそうだな、と判断。

 とりま、アルパーとファルに、これからオレがやろうとしていることを簡潔に説明してみる。


「なるほど……悪くないわね」

「それならばあるいは。ダウナー様と意思疎通ができるやもしれませんね」

「よっし、そうと決まればまかセロリ」


 承諾を得たオレは、爆速で掲示板に新規スレを立て、キーボードをひっ叩いた。


「よろしくお願いしまぁぁぁぁす!」


 そうしてオレは、歴史に残る、この世界初の2スレ目を興した。


【速報】妹よ、姉と今追っています


1.あなたは今だれかと一緒にいますか?

 Yesなら→Y

 Noなら→N


「ズバリ、何でも当てる魔人、アキ〇イター方式だろ!!」

そこのお前! ブックマークひとつに含まれる評価ポイントはブックマークひとつ分だぜ!

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