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【悲報】俺のスキル『ネット掲示板』だけど大丈夫そ? -0から始める異世界通信 -  作者: 上井
【急募】「掲示板」とかいうスキル、お前らならどうする?
17/19

17スレ目

 降って湧いたごくつぶし(スーパーニート)に無言の圧をかける笑顔のディング。

 そして冷や汗をかきながらも、齧れるだけすねをかじりつづけるぞという覚悟を見せるオレ。

 そんな拮抗を崩しにダウナーが提案してきたのは……


「……きみら姉妹(アルパーダウナー)のお手伝い、兼ロード商会の仕事ォ?」

「うん。助けてもらったのはほんとだしい~……」

「まあわたくしとしても、アーバットは行動力はあるのですから、それを何かに活かすべきだとは思いますが……」


 食事会事変の翌日。

 すでに雑然とし始めているオレの倉庫兼マイルームに、ロード姉妹は思い思いの場所に座る。

 アルパーは唯一まともな家財である椅子にしゃんとして座っており、ダウナーはオレのベッドに転がって気ままにのびをしている。

 ――そんなベッドにオレもオレも~! と寝っ転がりにいくわけにもいかず(実際ちょっとは迷ったが、後からファルやらディングやらにオレの顔を吹き飛ばされるリスクの方が勝った)、オレは床に座り込んでいた。

 

「ほらあ~……あの日だってえ。アーバット、ぼくがもらしたちょっとの情報だけでぼくに追いついてきたじゃあん……」

「あー、あれはアルパーの功績が大きいと思うけど」

「いえ、それにしてもですわ。アーバット、あなたの少ない情報から点を結ぶ発想には助けられましたし――……」

「なによりぃ……アーバットの、ソレ(スキル)、だよねえ」


ダウナーが、自分の指2本を揃えて振って、フォンっと自分のステータスを開いたから、オレも何ともなしに自分の画面を開いた。


「……さーてぇ……これでアーバットの()()を初めて見てから3日が経ったわけだけどぉ……そろそろ、聞かせてくれるよねぇ……?」

「わたくしも、興味がないと言えば嘘になりますわ」


 ずい、とアルパーがオレに迫る。ダウナーもベッドでごそごそと動き、オレに近寄る。


「分ァかった! わかったよ! 今のオレが把握できてる内容でいいなら言うよ」


 ただし記憶はないから、認識はそこまで君らと変わんないけどな! と前置きして、オレは自分のステータスを拡大して二人に見せた。


「ぶれ……なに?」

「『ブレッティン・ボード』……スキル欄で目立ってるのはこれだけだし、コレのことだろうと思ってる」


 実際は事もあろうか女神のお墨付きだけど。

 オレは掲示板画面に切り替えると、三日前に書き込んでから変化のないその画面を参照する。


「それ以上で分かってることはマジでオレもないよ」

「もう一つのスキルのこれ……『タイピングLv.3』はなんです?」

「……心当たりはないけど(ある)、掲示板画面に付属して出てくるこの鍵盤を打つ速さ……かなと思ってる」

「多分それで合ってるよぉ……」

「……ダウナー? なぜあなたが……?」

「ま、まずは見てみてくれよ。スキルとしてギリカウントできそうだろ?」


 オレが試しに、傍に転がっていた本の1ページ目を、ずだだだと書込画面に猛烈な勢いで打ち込むと、二人はおお~……と感嘆して画面をのぞき込む。

 女の子にキーボードがちゃがちゃで尊敬してもらえるの、オレが小学生のときの学校のパソコン室が最後だったから、爽快感と虚しさを同時に感じる……。


「だからま、オレの特異性はコレだけ。ほんでもって、コレがどういうものなのかはオレ自身もよく分かってない。ただ、いじってみてる感じ、掲示板を「付与」できる人数に制限はないし、やろうと思えば多分国中の人間のステータスボードの中にばら撒ける」

「それは……どうなるか想像もできませんね」

「うん。だからまあ、それはおいおい考えようと思っ()()けど……」


 オレは、押し黙ったベッド上のダウナーに声をかけた。


「ダウナー。どうしたよ?」

「……いやぁ。夢があるなぁ~ってさぁ……」

「ま、だよなあ。オレもそう思い出してたところだ」

「? 何です?」

「あねきはちょっと待っててねぇ……」

「? ?」


 困惑するアルパーを、ダウナーはうりうりと頭で押しやる。

 ええ~……? と言いながらも、アルパーはなし崩しで部屋から出て行った。

 さて、と手を叩くダウナー。


「アーバット。ソレ、使わないわけにはいかないよねぇ……」

「お前もそう思うかぁ~」


ダウナーは「異世界通信」を開くと、既にそこそこ手慣れた様子で、五指を用いてタイピングを行い、思うよお。という4文字を、手元を見ず打ち切った。


「……しっかし慣れたもんだなあ」

「だてに部屋でだらだらしてないからねえ。三日もあれば、ヴィケール言語はひととおり打てるようになったよお」


 ダウナーは誇らしげにステータスを開いて、ぶい。とオレに見せつけてきた。


「…………お、マジ?」


 オレは頬をぴくりと震わせる。

 そこには煌々と、「タイピング Lv.1」の文字列が光っていた。


 えへん、と胸をはるダウナーをよそにオレは悶絶する。

 オレのユニークスキルのひとつがユニークではなくなったことと――

 ――人様の娘を、ネット中毒の一歩目に引きずり込んでしまったことに!


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