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【悲報】俺のスキル『ネット掲示板』だけど大丈夫そ? -0から始める異世界通信 -  作者: 上井
【急募】「掲示板」とかいうスキル、お前らならどうする?
14/19

14スレ目

『きみのチートスキルは、誰でも使える仮想掲示板。きみが許可した全ての人が利用できるけど、誰かが書き込んだ内容の削除・改竄は一切できないよ―――』


 背景には虹。地には雲。

 天国みたいな光景の中、冗談みたいに厭味ったらしいニコニコ笑顔の神々たち(クズども)

 愛すべき自室から放り出され、混沌極めるインターネットよりもさらに理解不能な異世界で、オレが徘徊するのを楽しむ盤上遊戯(ボードゲーム)

 異世界に吹っ飛ばされる瞬間、オレは喚き声を上げながら――――


「これでどうやって戦えばいいんだあああああああ!」


 ベッドから飛び起きた。

 と同時に、天井にごちんと頭をぶつける。痛ッてぇ〜……。


 オレが今住む、倉庫をぶち抜いて作られている小部屋は、壁の元々棚だった部分がそのまま内側にも張り出したままになっている。

 オレはその部屋の端にベッドを据えているから、部屋の奥側で頭を上げると、狭くなった棚裏に頭をぶつけるのだ。

 ただでさえそこまで優秀じゃない頭がこれ以上悪くなったらどうする、と。

 欠伸をしながら窓に近づき、カーテンの端をつまみ、外を眺める。


 ──雑多に広がる街並みと、人々。

 この倉庫は窓側が高台にあるから、一階にもかかわらず意外と見晴らしがいい。

 窓に肘をついてぼけーっと街道を眺めると、その中には兎耳やらネコミミやら、一部のマニアには垂涎ものであろう種族もたまーに目に入る。ちゃんとケモ度は高めで、全身ふわふわしているからどこかの機会でモフろう。絶対。と心に決めている。

 行きかっているのは馬車やら荷車やらで、街の経済が賑わっているのが、知識のないオレにもよく分かる。

 カーテンから手を離すと、再び部屋は暗くなり、オレは大きくふわーとあくびと伸びをする。と、寝間着のままだと少し肌寒さを感じたオレは、暖かいベッドに引き寄せられるようにもどると、その中にダイブ。就寝の運びとなる。


 ――これが、アーバット・ユーの異世界転生、記念すべき一週間目のすがすがしき起床からの二度寝だった。



 オレははじまりの街、ウェイゲートに居を構えていた。

 真面目に理由をあげるとすると、単純にスポーン地点から近く、移動が楽だったこと。また、ここウェイゲートは、ヴィケール王国の西端の物流を担うだけあり、情報の出入りが激しい。オレのスキルの都合上、情報量ってのはイコールでその強さに比例する。


 というのが後から考えた建前だ。

 一番の理由は――


「アーバット~? まだ寝ているんですの~!? 不摂生が過ぎますわよ~?」

「やーアーバットぉ~……おっはぁ~……」


「…………」


 オレはオフトゥンにくるまったまま、寝返りをうってノックの音とともに扉を押し開けた二人の少女を見やった。

 一人は外巻きの銀髪を腰まで伸ばし、実にお嬢様然とした身なりで、背筋を伸ばし、腰に手をあてて頬をふくらませている。オレが昼前までぐーすか寝ていることが気に入らない彼女は、朝オレを起こしにきたようだ。

 もう一人は内巻きの銀髪を肩でざっくりと切り、いわゆるダル着で眠そうな様子を隠そうともせず、可動する椅子に座り、姉に押されながら、頭をぐでえと姉にもたれかからせている。

 ――ロード商会が二人姉妹(ふたご)、アルパー・ロードとダウナー・ロードであった。


 ――オレがウェイゲートで一週間ぐーたら食っちゃ寝しているのは、彼女たちの存在であった。

 オレが彼女たちに惚れたからここに残っているとか、そんな理由だったらまだ恰好もついたんだけれど。(まあ可愛い女の子たちと暮らしたくない男などいないと思うが)

 ちょっと理由は情けなく、実のところ、今のオレ。住所不定・記憶不詳(設定)・近親者無しの無一文男性たるこのオレは、その都合上彼女たちの所有する倉庫の空き部屋に居候させてもらっている身なのだ。

 つまりニートからランクアップして。

 おとうさんおかあさんごめんなさい! オレいま、異世界でヒモをやっています!


  △


「マジにまずいなこの状況……」

「なにか言いましたか? アーバット」

「や~、流石に色々世話焼いてもらいすぎだな~っと」


 アルパーはオレが閉め切ったカーテンを全部開くと、一週間ですでに雑多になりつつあるオレの部屋兼倉庫、いや倉庫兼部屋に溜息をついた。


「この倉庫、たまに首都に重要な物品を輸送するときに派遣されてくる騎士さまのためのものなのだけれど。アーバットは彼らと違い、片付けというものをしませんわね」

「いやぁ~、それほどでも」

「気持ちはわかるよぉ、アーバットぉ……ぼくも気付いたら部屋がめちゃくちゃになるタイプだからぁ……」

「わかってくれるか、ダウナー!」


 車椅子の彼女とがっしりと握手をする。アルパーは冷ややかな目でオレたち(ぽんこつ)ふたりを見ていたが、はあ、と諦めてため息をつくと、オレが読みさしのままベッドに放り出している書籍やらなんやらをまとめ始めた。


「おお、アルパー。悪いよ、自分でやるって」

「昨日も同じ台詞を聞きましたわ……」


 散らばっていた本を机の上に重ねると、アルパーはしげしげと、オレが読んでいた本の題を眺める。


『ヴィケール王国歴  百年大全』

『王国兵法における「情報」の意義』

『ウェイゲート周辺の魔物の生態について』


「これ、街の図書館に通い詰めているようですが。一体何なんです?」

「おー。これはな」


 オレはダウナーにめくばせをする。ダウナーはふふん、と息をつく。


「まだひみつだよお……」

「あら、姉であるわたしにもですか?」

「そう……でも、今回は、ちゃんと後から話すからあ」


 ダウナーはそう言って、ふにゃあ、とアルパーに微笑みかけた。妹系キャラのこういう笑みって何かしらの特攻もってるよな。

 アルパーもその笑みの毒牙にかかったようで、う、と言葉を詰まらせたが、はあ、とため息をつく。


「分かりましたわ、無理にとは言いません。最近、アーバットと話していることについてなんですね?」

「うん……そうだよぉ……」

「では。アーバット、くれぐれも頼みますわよ」

「分かってるってえ! どんと任せろい」


 胸を張る。というか、ダウナーとのある「計画」に付き合うくらいはしないとヤバいんだから当然だ。

 ――何がヤバいって。

 このまま、異世界ヒモ生活でもよくね? (笑) って思い出してる自分の精神性がヤバい!

 このままだとオレの異世界生活、ヒモ生活譚になっちまう!


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