11スレ目
街灯の光が目を刺し、暗かった倉庫に慣れていた視界が一気に白く染まる。
そして逆光になった視界に――倉庫の入り口に立つ、一人の少年の姿が映った。
「――――西区にある平屋、屋根が緑で鉄を保管してた、東向きの窓だけがある管理の杜撰な現空き倉庫はここだけみたいだぜェ! ネットに個人情報を書き込んじゃダメな理由がよーーく分かるなァ!?」
彼は、見慣れない服装の……黒い、身体に沿った布? を上下身に纏っていて。
身長はぼくより少し上くらい。年も同様に、ぼくたちより1歳か2歳上だろう。
わりと精悍な顔つきをしてはいるけれど、どこか気の抜けたところを感じる表情に。
首には、奇妙な形の耳当てのようなものを掛けていた。
そして少年は、手に収まるサイズに縮小したステータスボードを片手で握り、そこにただ佇んでいた。
「……だ、だれ……」
「ダウナーっっ!」
妙な恰好の少年に目を奪われていた隙に、その影から飛び出してきた銀色が自分に飛びついてくる。
「心配しましたよ!! 本当に……! よく無事で……!」
「あ、あ……あねき……」
アルパーが。自分と瓜二つな少女が、自分の胸に飛び込んできていた。
迷った挙句。けっきょく、ぼくは、姉の肩に手を回した。
その肩が小さく震えているのに気づいて、目の奥が熱くなる。
アルパーはひとしきりぼくの身体をかき抱いて震えていた。
「ぐえ……あねき……くるしいよお」
「あ、ああ! ごめんなさい!」
ぼくがそういうまで、アルパーは離れなかった。
解放された身体を起こしてから周囲を見渡す。
「そうだ……デルタは?」
「……あれ。デルタは……さっきここで顔からすっ転んでたけどぉ……」
話題の人物はすぐに見つかった。
倉庫の奥、そばかすのある顔に盛大に鼻血を流しながら、ある一点を見つめている。
視線の先には、冷え切った――もはや冷気を感じるほどの―――ファルが立っていた。
◇
オレはしばらく抱き合っていた姉妹から目を逸らし、倉庫の奥で始まろうとしている尋問に目をやった。
奥で縮こまってるのが、デルタとかいう女御者か。年はオレより少し上だろう。ファルよりかは下か?
薄くそばかすのある顔。わりと可愛らしめの顔つきに、緑の髪をざっくりと切っているが、今は髪はぼさぼさで鼻血を垂らしている。街娘にいそうな風貌なだけに、なかなかショッキングな絵面だ。
「……めっめッメイド長!? 大変お早いお越しでぇ……」
「――――何故、ダウナー様を連れ去った、デルタ」
「そッ……それにはふか~い訳が!」
「いや。やはり言い訳は、ある程度刻んでから聞こう」
ファルが、いつの間にか取り出していた短剣の音をちゃきっと立てる。
「おおーーッとファルさんストーップ! オレ、そんなことされたら少年誌に出れなくなっちゃう――」
「アーバット様はしばらくお黙りください」
「あ、はい」
オレはR-18Gに指定されてしまいそうな流れを止めるため、勇んでファルの肩に手を置いたが、ファルのぜったいれいどを喰らい2秒で戦闘不能に。弱い! 弱いぞ主人公!
「言い残すことはあるか? デルタよ」
ファルのその言葉に、鼻血と涙で顔面崩壊しているデルタはなんとか声を絞り出した。
「め……メイド長殿……
メイド長殿も、今日も良いおみ足ですなぁ……!」
そう言って、女御者は、溶鉱炉に沈む殺人兵器のごときサムズアップを決める。ちなみに表情はニッコニコ。
初対面だけどこいつスゲえな。
「ふむ。やはり死になさい」
「うおおおお! どうせここで討ち死ぬなら、皆の憧れメイド長の脚prprしてやるぅぅ」
真正面から飛び掛かり合う二人。おいおいマジでまずいって!
「ま、まってぇファル!」
そこに待ったをかけたのは、アルパーに瓜二つの妹、ダウナーだった。
改めて見てみると、眉が下がり気味で髪が短いこと以外、アルパーと見分けるのは至難の業だ。
「ダウナー様。いま、あなたを連れ去った相手を処断する所ですが」
「そ……そこの認識がちょっとぉ……色々あるというかぁ……」
さっき、デルタが本性現してたからぁ……ちょっとややこしくなっちゃったんだけどぉ……。
そうダウナーは続ける。
それからダウナーはしばしの間、毛布とアルパーの間でもぞもぞと動いていたが、すぐに諦めた様に息を吐いた。
「実はぁ。ぼくが、デルタにお願いしたのぉ……」
「……エ~?」
オレは口をあんぐりと開ける。茫然としているのはアルパーもだった。
「だ、ダウナー? お願いしたって、何を……」
「……お屋敷から出たいって。だから、あの森でデルタがぼくのこと乗せたまま走り出したのはぁ……ぼくが言ったからというかぁ……」
「そ……そそそそうじゃん! そういやそうなんすよォ! メイド長、わたし、ダウナー様のご指示の元動いてましたァ!」
デルタが虎の威を借りたかのように弁明をし始める。ファルは眉根をひそめていたけれど、じきに短剣をどこかにぱっ、としまって(オレでは目で追えない速度だった)、デルタに座り直して釈明を求めるように促した。
そこのお前! レビューありがとうございます やる気がむんむん湧いてきます




