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第7話 幽霊

  ◆


 使いたい魔法はあった。試運転も済ませた。あとは、実行するだけだ。

 作戦のため、サラ姫には大臣の部屋に居てもらっている。


 さて、じゃあ魔法を使うか。心の中で、ボイスチェンジとスルートークを使う。


 ボイスチェンジはその名の通り、声を変えることができる魔法だ。自分の声だとバレてしまえば、この作戦は成り立たない。


 そして、スルートーク。これは、壁越しでも特定の相手と会話ができるようになる魔法だ。これこそが、作戦の要の魔法と言える。


「だ~いじ~ん。だ~いじ~ん」


 できるだけ、お化けっぽい雰囲気がでるように、大臣に声をかける。部屋同士で位置は離れているが、スルートークのお陰でしっかりと聞こえているようで、「ヒッ」という怯えたような声が聞こえてきた。


「な、何だ今の声は!? おい、姫! 今の聞こえたか!?」


 さぁ、ここでサラ姫の出番だ。スルートークの対象は2人まで選ぶことができる。だから、サラ姫も対象にしている。作戦をスムーズにするためだ。


 しかし、ここでサラ姫には、俺の声が聞こえないフリをするように、と伝えている。大臣にとって、本当にお化けの声であると錯覚させるために。


「? 何のことですの? 何か聞こえまして?」


 いいぞ、作戦通りだ。このまま、じっくりとたたみかけよう。


「だ~いじ~ん。だ~いじ~ん」


「ひ、ひぃ! やっぱり何か聞こえるではないか!」


「本当に、何の話をしているんですの? ここにはあなたと私以外に、誰もいませんわよ」


「な、何だと……?」


 怯えが入り交じった声がする。ああ、こうして離れて喋っていることが惜しくなるな。近くにいたら、どんな反応をしているのかが見えたのに!


「聞こえるか? 大臣よ」


「お、お前は何者だ?」


「私は、この城に住み着いている幽霊だ」


「ゆ、幽霊だって!?」


 すっかり、度肝を抜かれたような声がした。ここまでハマってくれるとは。

 

 事前にルー爺に聞いて、大臣には全く魔法の知識がないことは聞いていた。とはいえ、全く魔法というワードが頭の中に浮かんで無さそうな辺り、本当にこの世界の住人なのかお前はというツッコミをしたい気持ちも沸いて出てくる。


「その通り。今は、お前にしか聞こえないように話しかけているのだ」


「ば、バカな……」


「ちょっと、本当にどうしたんですの? 誰か呼びましょうか?」


「う、うるさい! ちょっと、いったん出て行ってくれ!」


「はぁ。分かりましたわ」


 どうやら、サラ姫を追い出すことに決めたようだ。サラ姫はそれに従い、部屋を出て行ったようで、大臣はふぅ、とため息をついていた。


「い、一体私に何のようだ!」


 強がろうとしているのが、声を聞いているだけで伝わってくる。本当に苦手なんだな。


「ヒッヒッヒ。私には、お前のことが手に取るように分かる」


「で、デタラメを言うな!」


「デタラメではないぞ? 証拠を言おうか」


「言えるもんなら言ってみろ!」


 それなら、と初対面のときの会話中に見てこっそり覗き込んだ内容を言う。


「お前、公金を使ってこっそりと女遊びをしているだろう?」


「な――」


 一瞬で、言葉を失ったようだ。張り合いがないな。


「更に、異世界人をどうにか利用しようともしている」


「ま、まさか本当に幽霊?」


「言っただろう? 私はこの城に住み着いている幽霊だ。何でも知っているぞ?」


「う、嘘だ……」


 どうやら、どうしようもなくなると言葉を失うタイプらしい。騒ぎ立てるかどうか、ちょっと疑っていたが、これならとてもやりやすくて助かる。


「ヒッヒッヒ。お前のその有様、とても愉快だ。色々な奴にバラしてやろうかな」


「や、やめてくれ! それだけはやめてくれ!」


「ほう? やめてほしいのか」


 ここで、交渉の余地がありそうな部分をちらつかせてから言う。


「それなら、これからは汚いことを止めると誓うか?」


「ち、誓う! 誓えば、言わないでいてくれるのか?」


「ああ、もちろん。公金を遊びに使うのだったり、異世界人を利用するだったり、汚いことをやめるのであれば、私も鬼ではない。バラすのはやめてやろうじゃないか」


「そ、そうか……だ、だが」


 安心したような声が聞こえてきた。だが、懸念がありそうだった。その懸念の正体事態は、分からないわけではないので、踏み込んでみる。


「王様か?」


「う」


 まさにギクリ、という擬音がふさわしい反応を示した。やっぱり、そうなるよな。王様の指示でやりたくないことをやったこともあるだろうし、完全に汚いことをやめることはできないか。


「分かる。分かるぞ、王様が怖いのだろう? しかし、お前は大臣だ。どうにかならないのか?」


「い、いや、無理だ。逆らったら、何をされるか」


 正直なところ、そこに関しては同情の余地がある。だから、妥協案を示す。


「それなら、独断での汚いことをやめるんだな。もしやめなかったら、その時は--」


「わ、分かった! 独断で汚いことはやめる! 分かってくれ! 頼む!」


 必死に懇願するかのような言葉が聞こえてきた。ひとまず、ここまでかな。


「それならいいだろう。ヒッヒ。約束を破ったときは、分かっているな?」


「あ、ああ。それより、幽霊よ」


 ん? 何だ? 何か言いたいことがあるのか?


「お前みたいな奴がいるなら、王をどうにかできないのか? 正直なところ、王にはうんざりしておるのだ。どうにか、失脚させられないか?」


 おっと、これは予想外。流石の大臣も、王を良く思っていなかったのか。その視点で探ってはいなかったから、それは知らなかった。


「無理だ。王には私がなにかしても聞かないだろうからな」


「そうか……そうだな」


 がっかりしているようだが、納得をしているようでもあった。


「しかし、それに関しては少し希望はあるぞ? なんせ、あの異世界人が、王を失脚させるつもりのようだからな」


「な、何!? 本当か?」


「ああ。だから、安心しているがいい。ヒッヒ。さらばだ」


「分かった。分かったよ」


 最後の最後で、安心したかのような声がした。どうやら、立場上、相当王様にやられているようだな。これは、さっさと失脚させないと、俺も危ないな。


 魔法を切って、これからのことを考えなければならないなと、思い直した。

 


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