第27話 嘘
「ええい、くそ!」
そして、何に耐えかねたのか、クリストル王は外に向かって走り出した。
その行為は、当然、「逃げた」として人々の印象に残る。
「え、逃げた?」
「逃げたって事は――」
そこからも、ルーデン国王は早かった。
「衛兵! クリストル王を取り押さえろ!」
「鏑木くん! 行きましょう!」
サラ姫も、ルーデン国王に感化される形で追い始める。俺も、結末が気になるのでセリナと一緒に追いかける。
すると、黒衣に身を包んだ何者かが、クリストル王と一緒に囲まれていた。クリストル王は、俺の姿を見つけると言い放つ。
「ただでは済まさないからな! ワシの邪魔ばかりしおった貴様は、必ず殺してやる!」
その後、二人揃ってその場所から消え去った。それを見て、思わず目を見開く。
「て、テレポート!?」
そう、テレポートだ。ルー爺から借りた本に書いてあったけど、自分には適性がなくてできなかったやつ!
「適性のある術士が、片手で数えるほどしかいないという幻の魔法を使っただと!?」
その後、まるで解説役かのような説明を兵士がしてくれた。そうなのか。テレポートができる人って数えるほどしかいないんだ。
「しかし、そこまで遠くには移動できないはずだ! 探せ!」
どうやら、魔法の知識がかなり頭の中に入っている兵士がいるらしい。俺は流し読み程度だったけど、こうなったら読み返そうかな。
「ご主人様」
「何?」
一緒にいたセリナが不思議そうに問いかけてくる。
「あんなことを言われるくらい、邪魔したんですか?」
「そんなに邪魔した記憶はないけどなぁ」
まともに邪魔をしたのって、八百長のときくらいしか覚えがない。コロシアムの件が俺のせいだとバレていたら、2つか。そんなにもしてやられることが我慢ならない、ということなのだろうか。厄介な相手に目を付けられてしまった。
「それより」
思考を切り替えて、セリナを見る。
「さっきのって嘘だったよね?」
「そうですよ」
そう、さっきの「席を離れたときにソンブロン大臣にワインを渡している王様を見た」というセリナの証言は、真っ赤な嘘だったのだ。すぐに目で確認したときの驚きを飲み込むのは、大変だった。
「もし、ルーデン国王が助け船を出していなかったら、どうするつもりだったの?」
「ルーデン国王でしたら、あの状況なら絶対に出て来て下さいます。それくらい、信頼のおける方なんですから」
「そうなんだ」
どうやら、ルーデン国王のことをよく知らないのは俺だけのようだ。セリナにまでここまで言ってもらえる人なんだなぁ。
「でも、それが分かっていたからって、よくあんなことを言ったね」
「ああなるだろうと分かっていたからこそ、ですよ。ご主人様に毒を盛ろうとした王様を捕らえておきたかったから、ああしたのですが。結局、野放しになっちゃいました。申し訳ありません」
「いや、そこはセリナのせいじゃないから。仕方ないよ」
テレポートを使える何者かを部下にしていたなんて、想像できるわけがない。俺のために動いてくれた、というのは純粋に嬉しいので、特に咎める理由はない。
「今後、あの王様は私怨でご主人様を狙う可能性がありますが、騎士として、私がご主人様に降りかかる火の粉を払わせていただきますね」
セリナの決意は固かった。それは見れば分かった。だからこそ、思う。
「なんか、凄いね」
「何がですか?」
「もうそこまで騎士として忠誠を尽くしてくれるなんて、思っていなかったからさ。無理してない?」
騎士の約束をしてから、まだ半日も経っていない。だというのにこれほどの忠誠心を俺に向けてくれるなんて、何と言うか、意外に思えていた。まだお互いのことなんて深く知っていないのに、ここまで忠義を寄せるなんて中々できることではないと思う。
だが、セリナは何でもないことのように言った。
「無理はしておりません。騎士になると決めた昔の頃より、私なりに騎士の在り方は固めてきたつもりですから。それにご主人様、私に「信じさせてやる」って言ってくださったじゃあないですか。なので、それに応えさせて下さい」
それを聞いて、なるほどと思った。これを受け入れない理由はないし、俺も主人としてしっかりしなくてはならないと感じた。
「分かった」
「というわけで、今日から一緒の部屋で寝させていただきますね」
――ん?
「えっと、どういうこと?」
「一緒に寝る、ではありません。一緒の部屋で寝る、と言ったのです」
「そこを誤認した訳じゃなくてさ。どうして一緒の部屋で寝ることになるのかなって」
そうなったら、なんか、一方的に恥を晒しそうで少し嫌なんだが。
そう思っての聞き返しだったが、セリナはきちんと理由を述べた。
「今のままだとご主人様って、いつ寝首をかかれてもおかしくないじゃないですか。そんなときに、自分の部屋で寝てるなんてできませんよ。どうか気になさらず。空気だと思っていただいて構いません」
限度があるだろう。そう思って、少し食い下がる。
「でも、ベッドひとつしかないよ?」
「床で寝ます。私は騎士ですから。ご主人様と同じ待遇なんて望みません」
食い下がり、失敗。もはや決意は固いようだった。諦めるしかなさそうだ。
「……分かったよ。他に何かあったら遠慮なく言ってくれ」
「はい、ありがとうございます。ご主人様」
お初にお目にかかります。たての おさむと申します。
おそらくリアリティがないから見られていないのだなと思ったので、没ネタにしようと思います。後で思ったのですが、普通こういう能力があることをオープンにするなら、普通は怖がられますよね……。そこらの考えが足りてないままの発進となったなと思うので、見て頂いた方には申し訳ないのですが、ここで切ろうと思います。
ありがとうございました。




