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第23話 選抜大会<4>

 ◆


 ――なんであいつがここにいる! まさか!

 鏑木がいたであろう席の方を見ると、鏑木がいなくなっているのが分かった。思わず歯ぎしりする。あの小僧め、何度もワシの邪魔をしおって!


「どうかされましたかな? クリストル王」


「え? あ、いえ。何でもありません」


 ルーデン王の問いかけに、冷静になって席に戻る。仕方ない。こうなったら、仕方ない。

 勝つしかないぞ、フリード! 分かっているな!?

 そう思いながら、結果を待つのだった。


  ◆


 観客の声援を背に、フリードがまず動いた。上から振り下ろされる木剣を受け止める。

 重い。今まで受けたどんな剣よりも、重い。


 この重さならおそらく、1回戦で見せた盾割りは、単純に身体強化も含めた膂力によるものだろう。

 だが、それを見越して最初から、木剣のことも魔法で強化してある。簡単に割れはしない!

 

 そのまま右に受け流し、木刀同士が離れる。だが、また打ち合いになる。

 できるだけ力負けしないように、フィジカルアップを使いながら相手の剣を流す。


 おそらく、相手も身体強化の魔法を使っているのだろう。私の速度に引けをとらない速度で、木剣が襲いかかってくる。

 カン、カン、カァン! と、乾いた音がコロシアム中に響き渡る。このままでは、お互いに隙を見せるのはいつになることか分からない。


「ッチ」


 フリードが舌打ちしながら、間合いを離れる。そして、足場が崩れる感触がした。地面が崩れている!


「そこだ!」


 おそらく、フリードの魔法だ。素早く宙を蹴って、続く木剣を避けた。


「チィ!」


 2度宙を蹴り、間合いをとる。だが、今度は地面がせり上がってきて、フリードが突っ込んで来た。


 私は宙を足場にできるから、地面が崩れたくらいではどうということはない。だが、地面ごと向かってくるとなると、逃げるのが最善な気はする。


 せり上がった地面から、岩の破片が飛んでくる。それをたたき伏せつつ逃げているが、やがて追いつかれ、また木剣の打ち合いになる。

 

 気を抜けば、木剣ではなく岩の破片が右の胸当てを捉えてきそうな状況。少しでも有利に状況を進めるなら、こちらも更に魔法を使うしかない。


 自分の足元を起点に、上方向に突風を起こす。風圧に耐えかねて、フリードは離れた。

 同時に、突きを出す。その突きから風を生み出しフリードを襲わせる。


 再びの突風に、フリードはバランスを崩す。今だ。一番速く走り出し、木剣を右の胸当てに叩き込む!

 だが、フリードの足元から岩壁がせり上がってきた。これでは叩きに行けない。


 仕方ないので、魔法で風を集めて、その岩壁を風の刃で斬った。斬った先に、フリードはいない。

 どこにいったのかと辺りを見渡そうとすると、不意に足元から岩のトゲが伸びてきた。慌てて木剣で防御する。


 再び宙を蹴って、試合場全体を眼下に収める。フリードは、もう元の足場に戻っていた。せり上がっていた地面も、元の位置まで下がっていく。


 フリードは、魔法を使って大地を自在に操れるのか。魔法を覚えていなかったら、危なかった。

 一旦大地を元に戻したのは、仕切り直すためだろう。だが、これではうかつに降りられない。

 

 しばらくは空中を足場にしたまま、戦うことになりそうだった。

 降りてこないのを見てか、フリードは大地で大砲を作った。そのまま、岩石の弾を発射してくる。


「お前!」


 これが観客に当たったらどうする。そう思いながら、木剣で岩石を叩き落とすべく、力を入れる。少し、宙に靴裏をこすらせながら後退することになったが、無事、叩き落とすことには成功した。


 これは、あまり空中にいる訳にもいかない。そう思い、地面スレスレのところまでは降りていった。これで、岩石砲が空中に向けて放たれることはない。


 地上に私が降りてきたのを見て、フリードは大砲をこちらに向けた。さらには、足を引っ張る感触があった。どこから引っ張ってきたのか、植物の根が私の足を捉えていた。


「何!?」


 そんな私に向けて、岩石砲が放たれる。だが、今度は背後が闘技場の壁だ。木剣に風の刃をまとわせ、岩石を切り裂く。すると、岩石は真っ二つに割れながら、私に当たることなく私の背後に飛んでいった。

 

 同時に、植物の根っこも斬る。だが、植物の根はそれだけでは止まりきらなかった。どんどん伸びてくる。


 低空で宙を駆け、根っこから距離をとろうと試みる。それでもどんどん根っこは伸びてきて、後を追ってきた。さらに、大砲もこちらに狙いを定めてくる。


 仕方ない。そう思い、風を木剣に纏わせる。

 そして、今出せる最高速度で、大砲に向かい、大砲を斬った。


「隙有りだ!」


 フリードは、私がそうして大砲を斬るために、剣を振り切った瞬間を狙ってきた。横目で見るに、後頭部を狙ってきている。先に気絶させて、勝ちを取ろうという魂胆だろう。


 だが、それは分かっている。あえて隙を見せたのだ。

 

 振り切った状態からでは、まともに防御はできない。だから、剣を手放し、白刃取りにて木剣を防ぐ。


「何!?」


 同時に、一瞬だけ空気を相手の握り手に割り込ませ、木剣の握りを緩めさせる。結果、白刃取りから、木剣を奪うことに成功した。そのまま右手を滑らせ、木剣の持ち手を握る。


「く――」


 また岩石で壁を作ろうとしたが、もう遅い。


 カアアァァァァァン!


 剣を抜くときの要領で放った木剣が、金属でできた胸当てに当たった。独特の乾いた音が、コロシアム中に響き渡る。


「そんな……」


 純粋に実力で勝ちをとった。フリードからすれば、実力で勝ちを取られた。

 そのショックは、計り知れないだろう。慰めの言葉など、耳に入れたくないだろう。


 だから、何も言うことなく、この場を去った。


 

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