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第22話 選抜大会<3>

 バーニング。足を速める。

 流石に追いつけないだろう、そう踏んで魔法を使った。


 だが、外に出たところで足が何かに絡め取られる。見ると、ロープが足に絡みついてきていた。速度を落として、どうにかこけないようにしつつ、ファイアで指先から炎を出現させ、ロープを燃やした。


 その隙に、兵士は追いついてくる。

 見ると、この人も王様に脅されているので、俺をセリナのところに行かせたくないという気持ちがあるのは分かった。


 ごめん。アンタのことについては、イリス様とサラ姫に頼んでどうにかしてもらうから。今は、行かせて欲しい。

 とにかく、バーニングを維持して、距離を離す。


 また、ロープが飛んできた。今度は、魔法のロープだ。炎で焼けない。

 足を絡め取ろうとしてきたので、ジャンプで避ける。それでも追ってきて、今度は体に巻き付こうとしてくる。


「――しつこい!」


 スライディングでそれを避けるが、これはキリがないと踏み、対峙を選ぶ。


 ファイアーボール。炎の球で攻撃を始めた。だが、それは相手に届くことはなく、次に出て来た魔法のロープではたかれ、その場で爆発を起こして消えてしまった。


 再び、魔法のロープが俺の体を捕らえようとやってくる。

 今度は避けきれず捕まってしまった。体が引っ張られる。


 このまま足止めしてやる、という気持ちが目で読み取れた。

 だが、このまま止まってやる訳にはいかないので、この引っ張られる力を利用しようと考えた。


 すなわち、相手の方へとジャンプする。相手は思わず俺を引っ張るのを止めたが、俺のジャンプの方が早い。相手が怯んでいるところにすかさず蹴りを入れた。


「あっつ!!」


 蹴りは、皮膚が出ている頬を選んだ。火傷になってしまうだろうが、仕方ない。


「テメェ!」


 相手は意地で両手を使い、魔法のロープを2本放ってきた。それぞれが足を捕らえ、俺をこけさせてくる。まだ粘る。


 もう粘らないで欲しい。そう思って、今度は威力を弱めたファイアーボールを放つ。

 相手は両手がロープでふさがっているので、ロープでそれを叩き落とすことができず、間一髪で避ける以外なかった。しかし、それをしてしまったからこそ、服に火がついてしまう。


「あっつ、熱い!」


 流石にロープの魔法を止めて、火をはたく。地面に転がり、火を消しにかかる。

 自由に動けるようになったので、今度は寝転がっているところを本気で蹴った。

 蹴った部位が服の上だから火傷するほどの熱は伝わっていないかもしれないが、身体能力を上げる魔法でもあるバーニングを使った上での蹴り。それをまともに食らい、相手は少し吹っ飛ぶ。


「おおおお!?」


 相手は地面に激突すると同時に転がっていき、闘技場の壁にぶつかった。死んではいないが、痛みと熱さで、起き上がろうとする気力が失せている。今なら、いける。


 最近扉が開いた空き家を探そう……あった!


「セリナ!」


「鏑木くん! どうしたの?」


「いや、早く行かないと、不戦敗になっちゃうよ!」


「でも、ここから出たら選抜大会の参加がなかったことにされるって」


「え? ああ、騙されてるよ、君」


 どうやって言って連れてこられたのか、目で見て分かった。思った通り、クリストル王が今回の件を仕組んだんだ。


「本当?」


「うん。信じてくれ。こんなことで嘘は付かない」


 セリナは疑いの目というよりは、どっちを信じていいのか分からない、といった雰囲気でこちらを見ていた。だが、こればかりは本人に割り切りをつけてもらう他、ない。


 もちろん、疑われたら疑われたで言葉は尽くすが。


 けれど、そこまでの心配はいらなかった。セリナからすれば俺は依頼主だ。その俺が、こんなことで嘘をつくわけがないと、彼女はそう思ってくれた。


「分かった!」


「急いでくれ」


 俺の言葉を聞くよりも早く、フィジカルアップで速度を上げて空き家から出ていった。後は、俺も戻るだけだ。


 ◆


 とにかく、素早く駆けることにした。

 途中で倒れている人を見つけたから、兵士さんにそれだけ伝えて、試合場を目指す。


 すると、そこには既にフリードが立っていた。向かい合うように、試合場に立つ。


「おおっと、間に合いました! 間に合いましたルーマン選手! これなら、試合を開始できます!」


 審判が、間に合ったという言葉を使って私を迎えた。どうやら、本当に騙されていたみたいだ。私を騙してまで、勝ちが欲しいのか。


「……良かったよ」


「?」


 だが、フリードから聞こえてきた声は、安堵が含まれていた。


「逃げたんじゃなくて、良かったよ。最後が不戦勝では締まらないと思っていたんだ。頼むから、手を抜いてくれるなよ?」


「――」


 どうやら、事情がありそうだった。でも、それが何かを聞いている暇も、それを推し測って対応する余裕も、どちらもない。


 だから、手は抜かない。そして勝つ。そう決めた。木剣を構える。


「それでは、セリナ・ルーマン選手と、ベルナルド・フリード・ローヌ選手との、決勝戦を開始します。始め!」

 

 

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