第21話 選抜大会<2>
◆
試合は、準決勝まで終えた。あとは、フリードが優勝するのみ、であるはずなのだが。
――なんだ、あの小娘は!
よりによって、こんな大事なときにあんなに強そうな小娘が来るとは。顎に蓄えた髭を撫でながら思案する。
あの小娘にフリードの奴が負けたら、政略結婚の話は無しにせざるを得ない。
ただでさえ、フリード王から「子どもの教育を誤った。サラ姫との結婚はこちらから無しにさせてほしい」と言われているのだ。こんな公の場でのポイント稼ぎに失敗するようなら、話を進めようにも進められん。
しかし、結婚させたい。結婚させたいのだ。結婚さえ通れば、フリード越しにローヌ王国にも手が出せる。結婚さえさせてしまえば、後のことはどうにでもなるはず。
サラめ、フリードの何が気に食わんというのだ。親不孝者め。
あんな優良物件、そうそうおらんと言うのに!
……とにかく、フリードを優勝させるのだ。そして結婚まで話を進める。どうやらサラはやけにあの異世界人に入れ込んでおるようだな。まあ、それも今夜までだが。
ククク、これが最後のチャンスだぞフリード。ついでにひとつだけ、手を貸してやる。
「? クリストル王、どちらへ?」
「少し席を外します。どうぞ、ごゆるりと。ルーデン王」
◆
「私、ひいお爺ちゃんのこと、守ってあげるね! えへへー」
幼いときに剣の修業をしてから、自分に剣の才能があることを知った。
それからは、ひたすらに打ち込んだものだった。そう、選抜大会があるから。
選抜大会で騎士になる。それは、子どもの頃からの夢で。
本当は、今もその気持ちは変わっていない。
剣を活かせる仕事――騎士になって、いっぱい働いて。
お金をたくさんもらって、お母さんやお父さんに贅沢させてあげるんだ。
――ただ。
本当は、ひいお爺ちゃんの騎士になるつもりだったんだけど、もういらないって言われそうなんだよね。
それを、何となく察している。だから、答えを聞くのが怖くて昨日は腕試しだなんて答えちゃった。
そして、だから悩んでいる。あの異世界人の騎士になるかどうか。
昨日、剣筋を見て悪い奴ではないと分かったから不安ではない。不安ではないのだが、身内に勝るかと言われればそうでもないし、異世界人の騎士になるくらいなら他の人でもいいのではないかという気持ちもある。
特別、あいつがいいという理由がないのだ。ひいお爺ちゃんとは仲が良いみたいだけど。
「こんなことなら、もっと早く来て、お爺ちゃん以外の候補を探しておくんだったなぁ」
そう思いながら木剣で人形を叩いていると、後ろから人がやってきた。
「誰?」
「セリナ様、次の勝負の前に、クリストル王から伝言を預かっています」
「王様から?」
「はい。少し付いてきて下さい」
そのまま付いて行くと、会場の外の、空き家まで来ることになった。
「ここに入って、しばらくお待ち下さい。クリストル王をお呼びいたしますので」
「ここで待ってろって、王様が言っていたの?」
「そうです。ちなみに、余計な行動が見られた場合、即あなたの選抜大会への参加はなかったことにさせていただきますので、ご了承を」
「……分かった」
何か大事な用件なんだろう。そう思って、しばらく待つことにした。
◆
「ねぇ、ちょっと」
振り返ると、そこにはサラ姫がいた。
「どうしたんですか?」
「お父様がいないわ」
言われて、国王様方が座られている席の方を見てみる。すると、確かにクリストル王だけがいない。
「トイレとかじゃ?」
「バカね。絶対に何か企んでいるわ」
そう言われても、この状況で何を企んでくるのか、まるで想像がつかない。
いよいよ、フリードとセリナの試合が始まろうというときなので、もうその試合の結果を見る以外にないのではないのか。
だが、フリードが試合場に上がってしばらく経つが、セリナが現れない。
まさか、本当に何かしたのかと思い、また国王様方が座られている席の方を見てみる。だが、未だに戻ってこない。
ざわざわ、と観客たちから動揺の声が上がってくる。
「えー、このまま10分が経つようであれば、遺憾ではありますが、フリード様の不戦勝ということになります」
そのアナウンスが来て、流石に不安になってきた。席を立つ。
「俺、ちょっと様子を見てきます」
「分かった、頼むぞ」
「お願いね」
サラ姫とルー爺の後押しを背に、セリナがいるであろう場所へと向かう。
出場する選手は、観客席の下の階で体を動かすことができる。なので、そのまま下の階をうろうろするが、セリナの姿が見当たらない。
「一体どこに……」
目の能力を使って、隠し扉がないかどうかも見てみたが、今回はその線ではなさそうだった。
だが、目の力を使ったままにしておいて良かった。たまたま通りかかった兵士を読み取ると、こんなことが読み取れた。
セリナを外の空き家に閉じ込めておけっていう命令を受けて、それを遂行し終えたということが。
何と言うことだ。そう思いながら、外へと駆け出す。
「あ、君!」
それを止めようと、さっきの兵士が追ってくる。俺が異世界人だと知って、考えていることがバレたかもと思い、追ってきている。




