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第20話 選抜大会<1>

  ◆


 翌日になり、開会式が始まる。コロシアムには、これでもかというくらいに人が集まっていた。

 

 興味本位で見に来た者、身内が出る者、騎士を採用しようと検討している者、様々な人たちが、選手たちの試合を見ようとしている。


 選手の方も、騎士になりたい者だけが参加している訳ではないだろう。セレナのように腕試しが目的だったり、フリードのように周りからの評価が欲しかったり、思惑はそれぞれのはずだ。


「どうじゃ? 選手を見ていて、感想は」


「セリナとフリード以外は、まあまあですね。あの二人だけ突出しています」


「そんなにか。そりゃあ、楽しみじゃ」


 ルー爺は好好爺のように笑い、場を見下ろす。


 まあ、あんまり能力を使いながら見てもつまらないだろうし、試合を見るときはオフでいいかな。


 開会式を流し見して、試合が始まる頃になった。一番手は、フリードのようだった。相手は、盾と片手剣を模した木剣を携えた普通の剣士だ。


「キャー、フリード様!」


「こっち見て!」


 驚いたことに、ファンがいるらしい。イケメンで強い第一王子という肩書きはやっぱり強いか。


 クリストル王もフリードに期待はしているはずだし、完全にアウェイな相手の剣士がかわいそうだ。


 現に、少し雰囲気に気圧されている感じがある。その対戦相手に、フリードは言う。


「臆さないで欲しいな。やわな勝ちが欲しいわけじゃない」


「は、はい!」


 そう言われて、対戦相手は剣と盾を改めて構えた。

 

 さて、この選抜戦には勝ち負けを決めるルールがある。

 それは、参加者全員が右側に付けている胸当てに、一発攻撃を当てることができれば勝ち、というルールだ。


 だから、どれだけ実力に差があっても、隙を見せてしまい当てられてしまえばそれだけで負けになる。

 それで偶然フリードが負けないかという期待も、正直あった。


 だが、その期待はすぐに打ち破られる。


「始め!」


「はあ!」


 まず、フリードが攻めだした。剣士の方は、それを盾で受け止めてから反撃に出ようとする。

 だが、それは叶わなかった。フリードの木剣が盾に当たると同時に、盾が砕け散ったのだ。


「な――」


 とんでもないパワーだ。いや、魔法か?

 その動きのあとも、隙を一切見せず、逆に盾が壊されて動揺している剣士の右胸に突きを入れた。あっという間だった。


「勝者、ベルナルド・フリード・ローヌ様!」

 

 刹那、黄色い歓声が沸き上がる。伊達で才能有りな訳ではないらしい。

 セリナが勝てるかどうか、若干不安になってきた。


「あの娘なら大丈夫じゃて」


 心の中を見透かすかのように、ルー爺はそう言った。

 身内としての勘というやつだろうか。まあ、どちらにしても勝ち上がってフリードに勝ってくれることを望む以外に、もうやれることはないが。

 

「ほれ、出番がきたぞ」

 

 コロシアムの試合場を見ると、確かにちょうどセリナが上がって来たところだった。相手は、同じく革鎧を着た軽装の男だった。装備も、片手で持てる木剣一本のみ。同じスタイル同士の戦いだろうか。


「始め!」


 審判の号令と共に、セリナが駆け出す。軽い撃ち合いから入るのかと思いきや、いきなりフルスロットルで突っ込んだ!


 相手はその速度に驚き、慌てて防ごうと木剣を持ち上げる。セリナは、それに合わせて木剣を振るい、相手の剣を弾き飛ばした。


 剣を弾かれた相手は、相手がそのために減速したのを見るや否や、すぐ後退し、指をセリナに向けた。

 すると、人差し指の先から、小さなエネルギーの弾が飛んでいくのが見えた。セリナはそれを避ける。


 そのまま男は、まるで機関銃のように小さなエネルギーの弾を飛ばし続けた。それを、セリナは走り回ったり、飛んで切り返したりしながら避け続ける。


 やがて、埒があかないと感じたのか、セリナは大きくジャンプして攻めに出る。空中に飛び出したのを見て、男はチャンスだと感じたのか、笑みを浮かべて狙いを定める。


 しかし、セリナはその動きを見て、宙を蹴って狙いからずれた。観客席から、「おお」とどよめきが聞こえてくる。

 セリナは3回ほど宙を蹴り、弾を避けつつ相手に近付いた。そんな近付かれ方は想定していないだろう相手の男は、弾の狙いがうまく定まらずセリナの動きを追いかける形になっている。


 結果、セリナは懐に潜り込むことに成功し、未だ上を狙って撃ってしまっている相手の脇の甘さを突き、右の胸当てめがけて木剣を叩き込むことにも成功した。


「勝者、セリナ・ルーマン!」


 観客席から「おおお」といった感嘆したような声や、拍手が聞こえてくる。俺も思わず「おお!」と声を上げてしまった。ルー爺もセリナのことを拍手で称えていた。


「ほら見ろ、心配はいらん。きっと、優勝してくれるじゃろうて」


「そうですね」


「その時は、頼むぞい」


 一瞬、何を言っているのか分からなかったが、思い至れるところがひとつだけあった。


「? 騎士の話ですか?」


「そうじゃ。お主の元が一番良いと思っておる」


「なぜですか?」


「言わせるでない。大体分かるじゃろ?」


 そう言われたので、目で見て聞く。すると、あの王様の元で一番マシな奴がお前だからじゃ、という返答をもらった。サラ姫やイリス様など、他にも居そうだが、あえて俺を上げてくれているのは彼なりの気遣いだろうか。


 読み取られたことを前提で、ルー爺は話を進める。


「それに、あ奴は気が変わっていなければワシの騎士になろうとするつもりじゃ」


「腕試しって言っていましたけど」


「ありゃ嘘じゃ。大方、ワシからの答えを聞きたくないんじゃろう。流石に分かるわい」


 フッと笑ってそう言った。


「若いんじゃから、ワシなんぞに構わず人生を送って欲しいんじゃ。できれば、自由に人生を送らせたい。騎士という夢も叶えつつ、できるだけ自由な居場所ははてさて、どこかのう?」


 そういうことか。だから、俺の元へ行かせたいのか。


「迷惑かの?」


「いえ、全然」


「それなら、改めてひ孫を頼むわい。お主の騎士にしてやってくれ」


「分かりました」


 後は、結果を待つのみだ。

 

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