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第17話 選抜大会前日<2>

「へ? 俺たち?」


「そうですよ。声をかけようかと、のところから丸聞こえでしたけど。ストーカーじゃないのでしたら、何の用なのですか?」


 ジトッとした目つきでこちらを怪しんでいる。これはよくない。


「ああ、いや。君って才能がありそうだなって思ってさ。ハハ」


「それが口説き文句? あなた、もうちょっとしっかりしないと、部下がかわいそうよ?」


 ほっとけ。おかんかアンタは。


「よくわかんないけど、向こうに行って下さいね。つぎ変な真似したら、衛兵さん呼びますよ?」


「……はい」


 ルー爺の知り合いだというカードを使おうかと思ったが、初対面でそれをするのは流石に無茶だろうな。流石に、この世界に写真はないだろうし、見たことがある、聞いたことがあるというのも無理がある。退き際が肝心だ。


 流石に帰ろうとする。だが、そのときにセリナに寄る二人の男が目に入った。

 

「へへ、嬢ちゃん。だったら、どんな口説き文句なら付いてきてくれるんだ?」


「かわいいじゃん。俺たちと訓練しようぜ。別にいいだろ?」


 見るからにガラの悪そうな男たちだった。下卑た笑みにふさわしい内面が見える。

 これはこちらから衛兵を呼ぶか? そう思ったが、セリナが先に口を開いた。


「何? アンタたち、衛兵を呼ばれたいわけ?」


「おいおい、俺たちはただ訓練に誘っているだけだろうがよぉ」


「そうだぜ? 君、訓練相手がいなさそうじゃん。だから、優しく声かけてやってんじゃん」


 どこが優しくだ、と思う。ヘラヘラしているだけじゃないか。見ていて不快にしかならない。

 セリナも不快そうだ。さっさとどっかに行ってくれないかなこいつら、と思っている。


「そういうの、いらないから。じゃ」


 とにかく、二人をスルーしてどこかへ行こうとする。けれど、それを許す二人ではなかった。


「おい、待てよ」


 男の一人が、セリナの手を思いきり掴む。乱暴な動きだ。セリナは怒りを表情に出しながら言う。


「いらないって言っているの。聞こえなかった?」


「おいおい、生意気言っちゃって。余計かわいいね」


「ヒッヒッヒ。手取り足取り、剣ってやつを教えてやるよぉ」


「……はぁ」


 すっかり呆れ果てたようだが、相手にしない訳にはいかないと判断したようだ。

 まず、セリナはその手を振り払う。そして、木剣の方を取り出して言う。


「かかってきなさい。一撃を体に当てた方が勝ち。負けたら付いていってあげるわ」


「おほお! マジかよ!」


「俺がやるぜ。お前より強いからな」


「おうよ! 頼むぜ!」


 茶髪と黒髪がいるが、黒髪の方がやるようだ。木剣を構えて舌なめずりをしている。

 獲物を前にして興奮しているようだ。


「鏑木様。止めた方が――」

 

「いや、いいよ。それより、頼みたいことがあるんだ」


「何なりと」


 俺は、ドルドーに頼み事をしてから、対決の方に視線を移した。


 すると、まず黒髪の男が木剣で殴りかかった。それを、セリナはひょいと避ける。


「くそっ、避けるな!」


「避けるに決まっているでしょ?」


 セリナは、避けたり、木剣で木剣を受け止めたり、男の攻撃を軽くいなしていた。


 そして、男が大振りな一撃を打とうとしたところで、セリナの速度が上がる。


 男が上から木剣を振り下ろすよりも前に、バシッと胴を叩きつつ通り過ぎたのだ。


「な、速――」


「はい、私の勝ち。あなたの負け」


 やっぱり、強い。この娘なら、フリードを倒せる可能性がありそうだ。


 勧誘の仕方を考えないといけない。後で、ルー爺に相談しようか。


「じゃあね」


 セリナはポニーテールを揺らしながら、さっさとその場を離れようとする。

 だが、男たちにそれを許すつもりはなさそうだった。


「待て! もう1回だ!」


「勝ち負けのことは、お互いに納得して勝負したでしょ。記憶力ないの?」


「この、調子に乗りやがって!」


 男がセリナに手を上げようとする。そこで、その腕を掴む者が現れた。衛兵だ。


「お前、何をしている?」


「え。いや、ちょっと、あはは……」


 自分の腕を掴んだのが衛兵だと分かるや否や、男の態度が一変した。プライドが一片もないのだろう。


「これでよろしかったですか? 鏑木様」


「うん。ありがとう」


 ドルドーも、同じタイミングで戻ってきた。


 セリナと男が対決し始めたときから分かっていたことだったが、目で見た感じだと、勝とうが負けようが男たちにセリナを逃がすつもりはなかった。


 だから、ドルドーにはあらかじめ衛兵を呼んでおいてくれるように頼んでおいたのだ。


 少女が勝つのは目に見えていたように、男が力尽くに出るのが目に見えていたから。


 そして、セリナはそれに気付いたようだ。無理もない。一部始終を俺がずっと見ていたのは、向こうも分かっていただろうから。


「何のつもりですか?」


「恩を売るつもりでも、何のつもりでもない。普通のことを普通にやっただけですよ」


「ふぅん」


 まるで値踏みするかのようにジロジロと見られたが、「まぁいいわ」と言って去って行った。ひとまず、次に会うまでにルー爺のところに行かないといけない。


「ドルドー、いったん城に帰ろうと思う。ルー爺に会いたいんだ」


「分かりました。お城に着いたら、私は離れますが、構いませんか?」


「うん、大丈夫だよ。行こう」



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