第15話 処罰
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「十中八九、処罰されないでしょうね」
サラ姫は、そう言い切った。
今、俺たちは、王様の部屋がサラ姫の部屋と同じ階にあるので、俺の部屋に集まっている。話を聞かれないようにするためだ。
「でも、選抜大会に出禁になるくらいはあるんじゃないか?」
「甘いわ、鏑木くん。せいぜい罰金で終わるくらいよ」
「そうなのですか」
イリス様はサラ姫ほど王様のやり方に精通していないようで、サラ姫の言葉に肩を落とした。
「フリード王子が王になれば、お父様は退いたあともやりやすいでしょうから、あの王子にはもっとダメージを与えてやらないと、二人とも諦めない。必ず」
「あれ以上のダメージか」
正直なところ、何をどうすればいいのかは検討がつかなかった。今回みたいに、相手の方から動いてくれれば隙もできるだろうが、そう都合よくはいかないだろう。
少し考えていたが、そこでサラ姫がポツリと呟いた。
「実は、可能性がないことはないのよね」
「どんなのですか?」
「まさに、選抜大会よ。選抜大会で負けるようなことがあれば、あいつにとっては大きなダメージになるはず」
「そんなに?」
サラ姫は、力強く頷いた。
「元々、あいつは幼い頃から剣を握っていたのよ。実力は折り紙付きだけど、だからこそ、大観衆の前で敗北すれば、そのときの屈辱は計り知れないでしょうね。ついでに、勲章奪還の失敗も合わせてお父様からの信頼もなくなるに違いないわ」
「てことは、勝てる人間が出ないといけないのか。探してこようか?」
その提案は、意外に感じたらしい。サラ姫は、目を大きく見開いた。
「いいの?」
「俺の目なら、きっと誰が実力者なのか分かるから。大会はいつ?」
「一週間後よ」
「なら、かなり時間があるね。サラ姫が連れてきてくれた騎士を護衛にして、空き時間は商業区に出て行ってみるよ」
「ありがとう。ついでに、あなたの騎士候補も探してきなさい」
「そうする」
よし、やることは決まった。今後のためにも、サラ姫のためにも、必ずフリードに勝てる相手を見つけ出す!
◆
「全く、なんたる失態だ!」
「お詫びのしようもありません」
まさか、あんな手段で対抗してくるとは、思いもしなかった。
相手を舐めていた。それ以外に、言いようがなかった。
「こうなっては、お前に処罰を下さねばならん。が、一週間後は選抜大会だ」
王様は、改めて私の目を見る。
「必ず優勝して、周りからの評価を勝ち取れ。結婚と異世界人については、考えがある」
「はい、必ずや」
「それはそれとして、処罰として罰金を課す。必ず、支払いに来い」
「……はい」
そこは、王様と書類でやり取りをし、選抜大会の後で支払うことを約束した。
王様の部屋を出て、廊下を早足で歩く。
――負けられない。
私は、子どもの頃から、剣を磨き上げてきたのだ。
誰が来ようと、必ず勝つ。
城を出て、騎士が訓練している場所に行く。
「おい」
「こ、これはゼニス王子様! どのようなご用件で?」
「少し、相手をしろ」
「は、はっ! 分かりました」
お互いに、訓練用の木剣を用いて、模擬戦を始める。
まず、騎士が剣を振った。だが、単調な攻撃だ。簡単に受けて、流す。
再び騎士が剣を振る。同じく、簡単に受けて、流す。
次はこちらの番だ。剣を薙ぐように振るい剣を弾きつつ前に出て、そのままの流れで前に出つつ上段の構えへ。そして振り下ろす。
相手は何とか受け止めるが、鍔競り合いの状態になったのでそのまま押し出し、突きを繰り出す。
辛うじて避けた相手は、下から剣を振るってきたが、剣で上から押さえつけるように下へ叩き弾く。そのまま木剣を横に振った。私の勝ちだ。
「動きが単調だな。一手一手が独立している。一撃を撃ったとき、既に次の準備ができていなければ、無意味だ」
「は、はい!」
負けた騎士は、しっかりとした返事をした。おそらく、感謝の念を込めたのだろう。
「次!」
「じゃあ、俺だ!」
そう言って出てきた騎士は、いきなり突きをしてきた。それを木剣で受け、押さえつける。
続けて、その状態で踏み込んで頭突きを食らわせた。相手は怯み、木剣に込めていた力が緩まる。
そこを見逃さず、斜め右下から斜め左上へと斬り上げた。勝負有りだ。
「バカ者。誰が剣だけで戦うものか。頭突き程度で怯むんじゃない!」
そうだ、戦いとはそういうものだ。予想外でした、なんて甘言は許されない。
――調子は良い。行ける。
それからしばらく打ち続けたが、負けることはなく、この場を去ることができた。




