第13話 勲章
それからも少し話していると、サラ姫が騎士を四人連れてきた。
その中から、青髪の青年を選んだ。王様にしっかり反対していて、護衛の任も間違いなくやってくれそうな人だ。
「じゃあ、とりあえずいざというときは彼を頼りなさいね。訓練に戻っていいわよ」
騎士たちは役目を終えると、一礼をして去って行った。自分たちの役割を理解していて、それをしっかりとこなそうとしている姿は、貫禄があった。
騎士たちがいなくなると、「それにしても」とサラ姫が愚痴をこぼす。
「さっき、ちょっと話が聞こえちゃったんだけど。あいつ、しばらくここに泊まるらしいわ」
「あいつ、と言うとフリードのことですか?」
「そうよ。ほんと、嫌になっちゃう」
それは確かに嫌になる。俺はマナーがなっていないからまだ一緒に食事をすることはないが、サラ姫はこれから毎食ごとには顔を合わせることになるのだろう。同情しかない。
「しかも、選抜大会に出るつもりみたい。そこで例え優勝したくらいで、私の心を掴めるとでも思っているのかしらね」
「思っているかもしれませんね。ちなみに、王様の賛同者じゃなかったら、付き合ってあげていたんですか?」
「それでも無理。だって、彼って浅はかなのよ。顔はいいけど、あれで賢ければねぇ」
はぁ、とため息をついた。
「また、何かあったら助けるよ。だから、元気を出して」
「ありがとう。でもとりあえず、今日はもう部屋に戻っていいと思う。休めるときに、休んでおきなさい」
「分かった」
「……フフ」
そこまで会話をすると、イリスが少し笑った。不思議そうに見ていると、口を開く。
「あなたたちの関係が、少し羨ましいなって。私も、鏑木様みたいな味方が欲しいです」
「味方を求めるなら、隣国の王子にしときなさい。まだまだ甘いけど、良識があるわ」
「そうなのですか? じゃあ、そうします。では、鏑木様。お姉さまだけでなく、私もあなたの味方ですから、もし私の力が必要であれば、遠慮なく言ってくださいね。ごきげんよう」
「はい。ありがとうございます。それでは」
それからは、部屋に戻って、読書やマナーの勉強、復習をした。
翌日になると、「少しずつできてきております」とお褒めの言葉をいただけた。この調子で頑張ろう。
意外にも、仕事はなさそうなので、部屋を出てまた本を借りようとメイドさんを探す。
すると、昨日のようにまたもや階下が騒がしいことに気付いた。今度は何だろう。
「選抜大会の優勝者に授ける勲章が盗まれた! 誰か、目撃者はおらんのか!」
何だって? 流石に階下に降りる。
騒がしくなっている場所は、玄関ホールだった。そこに展示されていたであろうものが無くなっているのが、見れば分かった。いくつかある台座のうちのひとつの上に、何も乗っていなかったのだ。
「警備兵は? 警備は厳重だったはず!」
「それが、警備兵の姿が見当たらず――」
「そんな訳あるかバカ者! 探せ!」
誰のやり取りか分からないが、そんな声が聞こえる。キョロキョロと辺りを見渡すと、サラ姫の姿があった。
「姫!」
「鏑木くん!」
「盗まれたんですか?」
「ええ、見ての通りよ。一体誰が――」
そこで、思い出す。こういうときこそ、俺の能力の出番だと。
正直なところ、これだけ大勢の心の内を探るのは大変なのだが、そうも言っていられない。この中に犯人、もしくは目撃者がいないかを探る。
「――ッ!」
犯人が誰なのか分かって、俺は思わず言葉を失った。
「どうしたの?」
「姫、犯人が分かりました」
あくまで小声で、そう言う。意図を察して、サラ姫も小声になる。
「誰なの?」
「フリードです」
「――ッ!」
今度は、サラ姫が言葉を失う番だった。少ししてから、声を絞り出して聞いてくる。
「……あいつ、何を考えてるの?」
「まず、兵士を脅して、勲章を盗ませる。そして自分がその兵士を見つけて、周りからの信頼を得て外堀りを埋めていく。しかも、その兵士を脅したという罪を俺になすりつけて俺を追い出す。そんなところみたいですね」
「バカじゃないの」
本当、何も言い返せません。
しかし、これでは俺は、この事件を無視をするわけにはいかない。くそ、俺の能力で心の内を読まれることまで織り込み済みで、俺をこの事件に引き込んで、競争した上で勝つつもりか。
「でも、あいつが犯人なら、隠し場所は分かるでしょ?」
「隠しているのは別の人間だから、フリードを見ても隠し場所は分からない。つまり、あいつを告発する証拠がない」
「……なんでそういうところは頭が回るのよ。お父様の入れ知恵かしら」
あり得る。なんか二人で相談していたみたいだし、計画的な犯行だろう。
「そのお父様は、今日は?」
「出かけているわ。帰ってくるまでは少しかかるでしょうね。徹底しているわ」
つまり、クリストフ王を目で見て勲章の隠し場所を探ることはできない。これは、本当に自力で競争してあいつに勝つ必要がありそうだ。
「姫、探すのを手伝ってもらえませんか?」
「いいわよ。今日は珍しく、一日休みをとれそうだから」




