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第12話 作戦

  ◆


 くそ、くそ、くそ! 何だあいつは!

 そもそも、何でバレたんだ? あれが奴の特殊能力なのか!


 くそ、くそ、くそ! なんて王様に言えば良いんだ。


 それで悩んでいても、王の御前に姿を見せる他ない。扉を再びノックする。


「入れ」


 もう誰が来るか分かっている、といったふうな雰囲気だった。だが、扉を開けて私一人だけだと分かると、眉をピクリと動かした。


「何だ、サラはいなかったか?」


「いえ、おりました」


「ならなぜ連れてきていない?」


「それは――」


 本当に、何て言えば良いんだ。悩んで口ごもっていると、王様の方が口を開いた。


「まさか、異世界人に何かされたのか?」


「は、はい! そうなんです!」


 これだ! この勘違いを利用するんだ!


「あいつが、姫と婚約をすると言い出して――」


「? それでおめおめ帰ってきたというのか?」


 だが、すぐにボロが出てしまった。あっという間に口ごもることになってしまい、自分の不甲斐なさに冷や汗が出る。


「さては、何か訳があるな? 正直に言え。言わないと――」


「わ、分かりました! 話します!」


 正直に、昨日の賊のことについて、それを異世界人に看破されたことについて述べた。それを、王様は黙って聞いていたが、目がピクピクと動いていたので、怒っているのは間違いなかった。


「この馬鹿者が! なぜそれをワシに相談しなかった! そうだと知っていれば、ルーマンに異世界人など呼ばせなかったというのに!」


「は、はい! 申し訳ありません!」


 そうだ。先に相談をすれば良かった。今更になって浅はかさに悔いが出る。


「あっさりと弱みを握られおって。仕方ないな。こうなれば、今度こそ八百長を成功させるしかあるまい。異世界人の処理も同時にしつつな。ワシの役に立つ気が無い奴を、長居させるつもりはない」


「どうやって、ですか?」


 王様は、少し考え込むように、握った右手の人差し指を顎に当てた。


「要は、あの異世界人に証拠を掴まれずに事を成せば良いのだ。つまり、ワシの部下を使って事件を起こして、お前が解決すればよい。そして、異世界人には濡れ衣を着せて追放するのだ。そこまでやれば、流石のサラもワシに逆らうということがどういうことか、理解するはずだ。そして事件解決の実績を元に、フリード王含め外堀を埋めて結婚まで話を進めよう」


「そ、それなら心配いりません! いかなる能力をあいつが持っていても、競争となれば話は別! 私の能力の高さをご覧にいれましょう!」


「その言葉、信じるぞ」


「はい!」


 王様の慈悲が身に染みた。これを、しっかり行動で返そうと思った。


  ◆


「そういえば、ちょっと不安なことがあるんだ」


「何?」


「さっきので、もしかしたらあいつ、俺のことを敵だと思ったんじゃないかと思ってさ」


「ああ、なるほど。報復が怖いのね」


 うーん、と握った右手の人差し指を顎に当て、悩む仕草を見せる。


「分かったわ。何人か、騎士を連れてきてあげる。その中から、王様のことをちゃんとよく思ってない騎士を選んで、お抱えにしなさい。あなたには目があるから、可能でしょ? 何かあったら、そいつを頼りなさい」


「ああ。ありがとう」


 そこまで会話したところで、またもやノックの音が聞こえてきた。足音的に、今度はゼニスではないと分かるので、サラ姫は普通に対応をする。


「あら? 誰かしら?」


「お姉さま、私です」


「あら、イリス! いらっしゃい」


 扉が開いて、入ってきたのは、イリスという少女だった。銀髪のロングヘアに、サラ姫とは対照的な柔らかい目つきをしている。全体的にかわいらしさが勝つ外見で、完全に真逆の姉妹だ。


 イリスは俺の方を見て、目をぱちくりとさせながら聞いてくる。


「もしかして、この方が、異世界の方ですか?」


「そうよ。琉也・鏑木って言うの」


「初めまして、鏑木様。私、イリス・クリストル・ルースネッタと申します。先日はお姉さまを助けて下さって、ありがとうございました」


「いえいえ。当然のことをしたまでです」


 思わず謙遜をしてしまったが、対応として間違ってなかっただろうか。正解を教えてくれる者はいない。


「ところで、お姉さま、大丈夫でしたか? ゼニス様が来られていたようですが」


「ええ。それも、彼のお陰でいったん何とかなったわ」


「まあ。頼りになるのですね」


 パアッと花が咲いたような笑顔を向けてくる。かわいらしいが、俺の基準だとサラ姫の笑顔の方がかわいいと思う。


「ところで、今は何のお話をされていたのですか?」


「彼に、騎士が必要じゃないかって話をしていたの。とりあえず、急場を凌ぐために城の騎士をあてがうつもりよ」


「本命の騎士を選ばせないのですか?」


「本命の騎士は、選抜大会のあとでも遅くはないでしょ?」


「確かに、そうですね」


「選抜大会って何ですか?」


 質問を挟むと、サラ姫が顔をこちらに向けてくれた。


「選抜大会っていうのは、騎士として選ばれたかったり、王族や貴族にアピールをしたかったりする人たちが腕を振るう大会なの。商業区にある大きなコロシアムで行われる予定なのよ」


「へえ、そうなんだ。どうして、そんなことを?」


「お父様、実力主義な面があるのよ。平民であろうと、才能があるなら召し抱えて部下にしたいって。別にそれを悪いとは言わないけど、性格があれじゃあねぇ」


 それなら、騎士の制度も知っているものとは大分違いそうだなと思った。


「だけど、召し抱える権利自体は隣国の王様のお陰で、貴族であれば誰にでもあるようになったわ。だから、そっちで良さそうな騎士を見つけたら、そっちを召し抱えたらいいわ。フリードのためとか急場のじゃなくて、本命の騎士としてね。じゃ、さっそく私は騎士を連れてくるわね」


 サラ姫はそう言って。自室を出て行った。わざわざここに呼んでくれなくてもいいのに、本当に良い人だな。

 その様子を見て、イリスがまた笑顔になる。


「フフ、お姉さまったら、貴方のおかげで嬉しそう」


「俺のおかげ?」


「そうですよ。お姉さま、ふさぎ込みがちだったんですけど、あなたが来た昨日から凄く元気になっているんです」


 その頃のサラ姫を、俺は知らないので何とも言えないが、そうなのか。俺が来てから、元気になっているのか。


「是非、これからもお姉さまと仲良くして下さると嬉しいのですけれど、いかがでしょうか」


「ええ、もちろん。こちらからお願いしたいくらいですよ」


「まあ、それなら良かったわ。じゃあ、よろしくお願いいたしますね」


 両手を合わせて、笑顔を浮かべながらそう言った。

 

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