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第10話 結婚相手


 城に戻り、解決した旨を伝えると、「流石だな」と王様にニヤリと嫌な笑みを浮かべられた。相変わらず、その嫌みったらしい様子を隠すつもりは微塵もなかった。そして、他のことは別の者にやらせるから、今日はもう下がって良いぞと言われた。そのうち、他の者の仕事を大量にこっちに持ってきそうで怖い。


 謁見の間から去るときに、ひとまずメイドさんに城に書庫はあるかと訪ねた。本を読んでも構わないかと。それはメイド長や大臣に話が行き、許可されたので、数冊本を持って自室に戻りしばらくは読書をして過ごすことにした。


 やがて、少し散歩をするかと思い立ち、部屋を出る。すると、何やら階下が騒がしくなっていることに気付いた。


「何だ?」


 気になって下に降りてみる。すると、謁見の間に知らない人がいた。


 見た目で、貴族で剣士なのだろうとは一目で分かった。全体的に豪華な装飾が施された青い服に身を包んでいて、赤いマントを着ている。緑髪は短めで整っており、端正な顔立ちをしていた。


 目で見て、身元を割る。ベルナルド・フリード・ローヌ。ローヌ王国の第一王子で、サラ姫との結婚をクリストル王に許されている。


 なんか、気になる情報だな。サラ姫本人はフリード王子のことをどう思っているのだろうか。


 メイドにサラ姫がどこに居るのかを訪ねると、部屋にいるという話だった。五階に上がり、サラ姫の部屋をノックする。


「どなた?」


 なんだか、声圧が強めだ。とりあえず、臆せず声をかける。


「俺だよ、サラ姫」


「……ああ、入って良いわよ」


 少し間があったな。気になったが、ひとまず部屋に入る。


 サラ姫の部屋はとても綺麗に片付いていた。何かの魔法なのか、部屋中がとても良い香りに包まれている。何か、植物の香りに感じた。


 部屋の家具はどれも綺麗に整頓されていて、サラ姫の性格をしっかりと表している部屋に感じた。意外にも、ぬいぐるみが多く置いてあるところは、目を引いた。


「それで、何の用なの?」


「フリード王子について――」


 その名前を聞いた瞬間、確かにサラ姫の眉間に皺が寄った。一瞬だけだったが。


「流石に、情報が早いわね。じゃあ、話すまでもないと思うけれど、私、あいつのことが嫌いなのよね」


 はぁ、とため息を隠すつもりもなく披露した。まだそこまでは見ていなかったが、想像通りではあった。続きを促す。


「どういうところが?」


「あいつこそまさに、父の体制に賛成している奴なんだもの。私と結婚して、今の体制を引き継いで、延々と独裁を続けるつもりなんだわ」


 それは嫌だな。


「てことは、王様を失脚させるのと同時に、あいつもどうにかしないといけないってこと?」


「そうよ。あなたに話すのはまだ先のことになると思っていたんだけれどね。一体、何でここにやってきたのかしら。舞踏会で出会ってから、そんなに時間経ってないのに」


 そうか、舞踏会で一度会っているのか。だとしたら、一昨日振りってことになるのだろうか。舞踏会が終わって、その晩は向こうで泊まって、翌日に俺が召喚される事件があって、今日を迎えているから。


「正直、あなたのノックが、あいつだと思っていたから、身構えていたわ。違って助かった――」


 そこまで言ったところで、ノックの音が聞こえてきた。露骨に、嫌そうな顔へと変貌する。


「……どなた?」


「俺だよ、マイハニー」


 マイハニーときたか。俺でも嫌な気持ちがする。

 本当は許したくない、という気持ちが存分に感じられるが、絞り出すように、「入って良いわよ」と許可の台詞を言った。


 それを待ってました、と言わんばかりにバン、と扉が開く。


「やあ! マイハニー! ご機嫌麗――」


 そして、今度はフリード王子の方が固まった。そりゃそうだろう。マイハニーの部屋に、見知らぬ男がいるのだから、これで固まらない方がおかしい。


「マ、マイハニー? この男は誰だい?」


「あんたも、召喚魔法の存在だけは聞いたことあるでしょ?  彼はその魔法で召喚された異世界人よ。右も左も分からないだろうから、私が色々と教えてあげているの」


「へぇ? ふぅん? だが、一般人だろう? 君の部屋に相応しいとは思えないね。さっさと出て行ってくれないかな。庶民臭が移っちゃうよ」


 嫌みを隠そうともしないこの態度。どうやら、王様の賛同者というのは本当のようだ。目でわざわざ見なくても、その態度に説得力がありまくる。


「残念だけど、彼の位は公爵よ。私を助けるほどの特殊能力持ちだから、当然の地位を彼はもらっているの」


「なんだと? こんな庶民臭丸出しが公爵だって? 君を助けただって?」


 フンと鼻を鳴らす。


「どうやら、とてつもなくとんでもなく運が良かったようだね。羨ましいよ」


 本心からの言葉のようだった。フリードは気を取り直して、サラ姫の方を見る。


「それより、そう! マドモアゼル、今日はその件と、君のお父上に用事があってやってきたんだ。どこにも怪我はなかったかい? 何もされなかったかい?」


 マドモアゼルかマイハニーか統一しろよ。何なんだよ。


「ええ、彼のお陰でね。何ともなかったわ。それで用件は終わりよね。さっさとお父様のところへ行ったら?」


「おお、素っ気ないね。だが分かっているよ。愛情の裏返しだって。そんなところもステキだ。だが、言われたとおりいったん君のお父上のところに行こうかな。なんせ、お呼ばれされてもいるからね」


 そう言って、フリードは扉を開ける。


「じゃあね、マイハニー! また来るよ!」


 マントを翻しながら、廊下に消えていった。それに対して、小さく、だが重くはっきりと、サラはため息をついた。

 

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