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蒼月のルナ  作者: くろね
5/18

5 普通にピンチです③

「蒼月のルナ……」


俺はその名前を頭の中で反芻する。目の前にいる少女が、ただの人間ではないことをその名が物語っているようだった。だが、今はそんなことを考えている余裕はない。状況は一触即発の緊張感に包まれていた。


「……行くわよ」


ルナが静かに言葉を紡ぎ出すと、その声に応えるかのように、周囲の空気がピンと張り詰めた。彼女の手が微かに動き、何かを呼び起こすような動作を見せる。


一瞬の静寂。次の瞬間、ルナが一気に動き出した。彼女の手から放たれた光が、鋭い刃のように敵の女性に向かって飛んでいく。


だが、敵の女性はその攻撃を無表情のまま受け止めると、冷たい目でルナを見つめ、手を軽く振るだけでそれを弾き返した。その動きには一切の躊躇がなく、まるで機械のような正確さがあった。


「……」


女性は無言のまま手を掲げると、周囲の空気が重く沈んだ。次の瞬間、足元から植物のような蔓が現れ、ルナに向かって伸びてくる。


「甘いわ」


ルナは素早く後ろに飛び退き、蔓を避けると同時に、再び詠唱を始めた。彼女の手から放たれた光が再び女性に向かって放たれるが、敵の女性はそれに対して冷静に反応し、影を操るようにしてその光を遮った。


「やはり、強い……」


俺はその場で震えながら、二人の戦いを見守るしかなかった。どちらも一歩も譲らず、互いの力をぶつけ合う戦いは、次第に激しさを増していく。


「一体……どうなってるんだ……?」


俺は無力さを痛感しながら、ただその光景を見つめることしかできなかった。二人の戦いは次第に激しさを増し、周囲の景色が変わり始める。木々が倒れ、地面が裂け、まるでこの場所全体が戦場と化していく。


二人の戦いは激しさを増し、周囲の景色がどんどん変わっていく。木々が倒れ、地面が裂け、空気そのものが揺れ動いているかのようだ。俺はただその光景を見つめ、息を呑むことしかできなかった。


「すごい……」


戦いの中、ルナは必死に敵の攻撃をかわし、反撃を続けているが、次第に追い詰められているように見えた。相手の女性は無表情のまま、冷徹な動きでルナを追い詰めていく。


「ルナ、危ない……!」


心の中でそう叫んだ瞬間、俺は何も考えずに体を動かしていた。彼女を助けなければ——そんな思いだけが、俺の全身を突き動かしていた。


「なんで俺が……」


理由なんてわからない。ただ、目の前で彼女が倒れるのを見るわけにはいかなかった。


敵の女性が再び蔓を操り、ルナを捕らえようとしたその瞬間、俺は無我夢中で彼女の前に飛び込んだ。


「うおっ……!」


一瞬の痛みが走る。次の瞬間、俺の視界は真っ赤に染まっていた。腹部に激しい衝撃を感じ、力が抜けていく。


「ぐっ……」


視線を下に向けると、俺のお腹には大きな穴が開いていた。血が滲み出し、体中が痺れていく。何かが俺を吹き飛ばし、遠くへと投げ飛ばされた。


「な、なんで……」


地面に激しく叩きつけられ、体が動かない。痛みが体を蝕み、視界がぼやけていく。耳鳴りがして、周囲の音が遠ざかっていくように感じた。


「何をやってるのよ、バカ……!」


ルナの声がかすかに聞こえた。彼女は驚きと怒りが混じった表情で俺を見つめている。だが、その瞬間、彼女もまた動揺し、敵の隙を突かれる。


「ルナ……」


彼女が次の瞬間、強力な攻撃を受け、その場に倒れ込んだ。動揺した彼女の隙を見逃さなかった敵の攻撃が直撃し、ルナは地面に崩れ落ちた。


「こんなところで……」


俺は意識が遠のいていく中で、彼女が倒れる姿を見て、どうしようもない絶望感に襲われた。これで終わりなのか—そう思った瞬間、視界が完全に暗転し、意識が途切れた。

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