4 普通にピンチです②
「このままじゃ……やられる……!」
必死に体を動かそうとするが、まるで鉛のように重く、指一本すら動かせない。目の前の女性が、不気味な笑みを浮かべながら、ゆっくりと近づいてくる。
「安心して、すぐに終わるわ……」
彼女がそう囁いた瞬間、俺の視界が暗くなり始めた。まるで意識が遠のいていくような感覚に陥る。冷たい恐怖が背筋を駆け抜け、全身が硬直する。
「これで、終わりか……」
もう逃げられない。自分の無力さを噛み締めながら、絶望が心を支配しようとしたその時だった——
「そこまでよ……!」
突然、耳に響く声。目の前の女性が驚いたように動きを止めた。そして、俺の視界に、またあの少女が飛び込んできた。まるで月の光を背負って現れたかのように、彼女は俺と女性の間に立ちはだかった。
「これ以上、好きにはさせないわ」
少女の声には怒りが滲んでいる。昼間見たあの不思議な雰囲気とは違い、彼女は完全に戦闘態勢に入っているようだった。
「……また私の邪魔をするのね、蒼月のルナ」
女性は冷たい目をこちらに向けたまま、感情をほとんど感じさせない声で呟いた。その声には無機質な冷たさがあり、どこか無関心さえ感じさせる。
「蒼月の……ルナ?」
俺はその名前を聞いた瞬間、彼女の異名が頭に刻まれた。彼女がただの少女ではないことを示すその名前が、今、ここで明らかになったのだ。
「そいつに手を出すなら、覚悟しなさい」
ルナと呼ばれた少女の言葉には確固たる決意が感じられた。俺はその背中を見ながら、再び希望が芽生えるのを感じた。
「こいつが……助けてくれるのか?」
そう思った瞬間、少女の周りに奇妙な空気が漂い始めた。何かが変わる。再び、俺は彼女がただの少女ではないことを確信した。
二人の間に、緊迫した空気が漂い、戦いの幕が今、開けようとしていた。