表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/144

5、花街にて、肝胆相照らす

 遠くから見るだけだった『城下町』は、本当にそれっぽい光景が広がっていた。

 大通りの道はアスファルトやコンクリではなくて、目の細かい砂が敷き詰められた感じになっている。

 実際の江戸はまともな舗装はないことも多くて、ぬかるみや轍の跡で歩きにくかったらしいけど、ここの道は綺麗に均されたものだ。

 道の両脇には、二階建ての家屋が軒を連ねて、それぞれが商家の暖簾のれんや木彫りの看板が下がって、雰囲気作りに一役買っていた。


「妙だな……」

「どうしたの?」

「なんかこの景色、見覚えが……あ」


 思い出した。太秦の映画村、あの景色にそっくりなんだ。

 軽く蹴ってみると、砂の地面の下には固めた土がみっしりしていて、さらに下に敷かれた固い物体、おそらくはコンクリートに近いものがあることを感じさせた。


「なるほど、ここも『モック』なのか。本物の江戸を真似ようとしてるけど、決して本物にはならない町ってな」 

「その通りです。なかなかの観察眼ですね」


 赤毛のネコの隣にずっと従っていた、シェパードに似たイヌの模造人モックレイスが、平板な声で評価してくる。

 片手に杖を突いて、悪そうな右足の補助に当てていた。


「小倉さん、でしたか。俺は穂高北斗ほだかほくと、『涯を追う者ホライゾン・ブリンガー』のマネジメント担当です」

「よろしく……できるかは、あんたらの態度一つだな」

「それで問題ないかと。慣れ合うためにいるわけでもありませんからね」

「ダメだよ北斗! そういうケンカ腰じゃ、余計にこじれちゃうでしょ!」


 とうとう我慢できなくなったのか、ネコがずいっと近づいてくる。それを、イヌが遮って、初対面にふさわしい距離が保てた。


氷月瞳ひづきひとみです! わたしは文城君だけじゃなくて、あなたも興味アリ! 紡とパーティ組んでるって、新聞で読んだよ!」

「なんで、街で最高峰の戦闘系ギルドが、あいつのことなんて」

「以前、アタックチームに参加させましたが、不適格だったので除名しただけです」


 なるほど、紡がやらかしたチームは、こいつらの所だったのか。街中で総スカン喰らうなんて、どんな事態かと思ったら、そういうことね。

 とはいえ不適格で除名とか、いい態度してるじゃんかよ。


「そういう徹底した製品管理(・・・・)が、獄層攻略にこぎつけたチームの、強さの秘訣ですか」

「俺たちは、塔の秘密を解き明かすために結成された、真剣なギルドです。遊び気分やその日暮らしのヒトとは、訳が違いますので」

「そいつはご立派。締め付けすぎで、兵隊(・・)が音を上げないように、気を付けたほうがいいですよ」


 絡み合う視線が、火花を散らし始める。

 そこで、お互いの『ネコ』が、俺たちを引きはがした。


「だ、ダメだよ孝人。瞳ちゃんのとこは、そういうんじゃないから」

「だから北斗、もう少し優しくしてってば!」


 水入りになったところで、俺たちは視線を外す。リーダーの氷月さんはともかく、この参謀とはそりが合わなさそうだ。


「と、ところで、みんな先に行っちまったんだが……」


 声を掛けそびれていたらしいオーガが、先を指さす。俺たちはそのまま、大通りを先に歩き、角を曲がった先にあった、門の前にたどり着いた。 

 門と言っても、街を囲う壁ほど大きくはない。

 観音開きの赤い扉と、封鎖のための太い木で組まれた格子状の壁。その脇にヒトが詰める小屋が併設されている。

 そして、門の上に掲げられた銘板を見て、俺は絶叫した。


「べ……『別天吉原べってんよしわら』ぁああああっ!?」


 な、なんてもんを建ててんだあのバカ殿はぁ!?

 吉原って言えば、あの吉原だろ!?


「……孝人、吉原って、なに?」

「あっ、ふ、文城っ、ここがどういうところか、ご存じない!?」

「う、うん。城下町は、苦手だったから……」


 なんてこった、初心な文城には、この街は刺激が強すぎる。なんか理由をつけて、ここから脱出させ――。


「ねー、あーし、おなかすいたんだけどー。いつまでボッ立ちしてんのー?」


 出たな、ある意味この場所にぴったりの住民!

 友達の純潔のため、なんとしてでも、俺が守護(まも)らねばならぬ!

 俺は文城を背中にかばい、じりりじとサキュバスから後ずさる。


「安心してくだせえ、小倉さん」


 そこへ、元町さんがすっと現れて、改造和服サキュバスを遮ってくれた。


「お殿様が『両門』閉じなさったんで、妓楼ぎろうはみんな、お休みだそうですよ」

「お……おお……よかったぁ。よかったなぁ、ふみきー、もう安全だぞー」

「え? う、うん? よかった、ね?」


 そのまま俺たちが門をくぐると、背後で武士の皆さんが門を閉じる。しかし、こんなもんまで再現してるとか、どんだけだよ。


「片門閉めるのに千両でしたっけ? まあ、自分の領地だから、あんまり意味のない話でしょうけど」

「いえいえ、ここは天領の外でして。ギルド『ウィタ・セクサリス』が管理、運営してるんですよ」

「え……なんでそこで横文字?」

三根みつねせんせーのギルドっしょ? あーしもお世話されてる、アッチのこととかねー」


 などと言いつつ、片手を妖しく、くねらせる。

 だからその卑猥な指使いはやめろっての、このサキュバスがっ!

 これ以上ツッコんだ話をすると、文城の青少年的何かがアブナイだ。

 さっさと『食事会』の席に行こう、うん。


「ちなみにプラチケを三百枚ほど、ぽーんと放りなさって、すべての店舗を借り切られましたよ」

「なんかこの街の経済、差が激しくない!? 明らかな富の偏りを許すな! 共産主義革命起しちゃおうっかなぁ俺ェ!?」


 そんなこんなで、俺たちはひときわ大きい店の一つに入る。

 店の名前は『桐壺』だ。


「もしかして五十件くらい、同系列の店があったりします?」

「その辺りは、ツッコむのも野暮ってことで。さ、おあがりくださいな」


 店の女中さんに足を洗ってもらい、そのまま木造の階段で上へと通される。

 間仕切りのふすまが開け放たれた二部屋には、ご丁寧に畳が敷かれていた。ただ、見た目が似せているだけで、いぐさを使ったものではなさそうだ。

 上手かみてのふすまには長沢芦雪の『虎図』が、下手しもてには対になるように『竜図』が当然のように描かれていた。


(またかっ、あのヤギ娘がっ)


 おそらくはこの店自体が殿様の御用達、大枚はたいて鈴来に描かせたんだろう。

 すでに、部屋には黒塗りの膳が並んでいて、それぞれに和食のように見える料理が整えられていた。


「質素な膳羞ぜんしゅうだが、佳肴を誇るばかりが能でもあるまい。礼は問わぬ、各々、好きに摂れ」


 なるほど、無礼講ってね。

 ってもこの場合、俺は下座しもざにつくべきか。無礼講ってのは『うっかり羽目を外しても、多めに見てやるよ』って意味だからな。

 俺は文城の袖を引いて、一番末席に近い所に座る。

 クマの殿様は俺の様子を見つつ、黙って酌婦の注ぐ酒を飲んだ。

 当然のように、サキュバス姐さんは殿様の隣。そこから膳を二つ開けて、オーガの男、その向かいに赤ネコとイヌのコンビが座った。

 元町さんは俺たちの隣、上座側だ。


「して、先ほど不穏な話を耳にしたが。佐川よ、真偽のほどは如何に?」

「……知っての通り、俺たちのギルドは二か月ほど前から『蕾』の攻略に入っていた。磨平のことは……その直前ぐらいのことだろう」


 時間的には、文城の一件があった直後ぐらいか。『ローンレンジャー』の連中は、ずっと二十一階で活動してるから、下のことが耳に入らないのも当然かもな。


「磨平の奴は、攻略チームに入っていた。上納したチケットのことも、普通に稼いだとしか、聞いていない」

「……佐川さん、それは明らかに、そちらの監督不行き届きですね。それに、最近の『ローンレンジャー』、お世辞にも評判がいいとは言えません」

「分かってる。ともかく磨平の奴から、話を聞くところからだ!」


 ここぞとばかりに、冷血わんこがチクチク刺しにかかる。文城のことを思って、と言うよりは、他のギルドの勢力を削ぐ目的っぽいな。

 オーガの方は、すっかり恐縮して、体を小さくしてしまった。

 思ったより、悪い奴じゃないかもしれない。


「で、そこなネズミ。貴様の言い分を聞こう」

「言い分も何も。今のあなた方には、文城に対する交渉権がない」


 俺は女中さんが注ごうとした酒を断って、クマに視線を合わせた。


「協定に従い、うちのギルドマスターである尾上乙女が、福山文城の身分を預かっていることに変わりはありません。今後の話し合いで、それが解除されるまでは、ですが」

「なるほど。小癪こしゃくな物言いだが、その通りではある。だが」


 クマはにんまりと笑い、自分の盃に酒を注がせていた。


「貴様は何もわかっておらぬ。我の大望が、結局はこの街の民と、そこな文城の先行きに必要であるということを」

「この小さな街で、僭主せんしゅを気取ることがですか?」

「違う。我の目的は、魔界に新たな国を造ることよ」


 国か、こいつはまた、大きく出たな。


「この小さな箱庭を捨て、荒漠たる魔界に、我らだけの国を建てる。そして、真なる自由と誇りを取り戻すのだ」

「なるほどね。だから新皇、日の昇らない魔界の底で、旗上げがしたいと」

「今の我らは結局、あのPとか言う奴腹に、玩弄されるばかりだ。やれプラチケだ、やれ塔の攻略だと、いいように踊らされてな」


 大川大瓜、か。確かにこいつは、殿様を名乗るのにふさわしい動機と行動力がある。

 あのバカげた巨大要塞も、街の外に打って出るための前線基地、というわけだ。


「今の我らには、圧倒的に不足しているものがある。そして文城よ、貴様の力があれば、それをものともせずに、突き進むことができよう」

「兵站の中で、最も重要な食料、その解決に文城の力がいる。そういうわけですね」

「……小倉、と言ったか。我が領袖となる気はないか」


 将を射ずんと欲すれば、先ずは馬からか。

 誇大妄想の殿様気取りかと思えば、味な真似をしやがる。

 って、俺が馬だと、確実に文城に潰されるんだが?


「謹んで御辞退申し上げます。ちなみに、三顧の礼だろうがお百度参りだろうが、頼みに来ても無駄ですからね」

「その真意は?」

「計画的な遠征をしている現在でも、新しい国どころか橋頭保きょうとうほを築いたって話さえ聞かない。食料があっても、外敵をはねのける武力がないんじゃ、お話にならないでしょう?」


 クマは熱のこもった鼻息を漏らし、それでもそれ以上の癇癪は、起こさなかった。

 その代わり、口元を獰猛に歪めた。


「良い肴であった。此度はこれで、収めることとしよう」


 それ、ぜってー「次はオレの物にしてみせる」宣言じゃねえか。クマは自分の獲物に執着するとか聞くけど、マジで勘弁してくれっての。


「そ、それはともかく、十階攻略できたんでしょ? そこは素直に、おめでとうって言わせて!」


 ここで自分から発言とは、なかなか勇気あるな、赤ネコさん。

 とはいえ、無礼講宣言したからか、俺との会話で満足したのか、大川の殿様は悠然と酒を飲むばかりだった。


「文城君、塔で冒険したいって言ってたもんね。結局、色々あって、顔も合わせなくなってたけど……」

「あ、ありがと。昨日も、みんなで十階、行ってきたんだ」

「ホントに!? そっかぁ、それならいつか一緒に」

「その話はもう、終わったはずだ。福山文城に関して『涯を追う者ホライゾン・ブリンガー』は不干渉だ。ギルドへの受け入れもしない」


 イヌ野郎は儀礼的に全ての料理に箸をつけ、それっきり何もせず座ったままだった。

 反対に、赤ネコのお膳は綺麗に空で、新しい料理を出して貰っている。


「ふ、文城君の能力が、長い遠征に必要だって、北斗も言ってたでしょ?」

「獄層の攻略は、パーティ全体の総合能力が物を言う。彼には決定的に、戦闘能力が欠けている。二十一階のベースで、フードベンダーをしてもらうのが精々だね」

「なるほど。どんだけ有能かと思ったけど、コストカットをマネジメントと勘違いしてる手合いだったか」


 ふたたび、俺たちの視線がかち合う。

 俺が悪いんじゃないぞ。ただこいつの物言いが、何もかも癪に障るのがよくない。


「種も蒔かない畑から、ぽこじゃか野菜でも米でも生えてくると思ってるタイプ。サプライチェーン構築の前に、生産の現場ってのを直視することを、お勧めするぞ」

「十階攻略程度で、この世界を理解した気にならない方がいいですね。そういう勘違いでパーティを滅ぼしたニンゲンは、枚挙にいとまがありません」

「やめてよ北斗! そういうこと言うの!」


 たまりかねた赤ネコが、声を荒げる。その悲しそうな顔に、イヌの顔が少しだけ、きまり悪そうに揺らいだ。


「効率とか、真剣さとか、そういうのだけが、全部じゃないでしょ?」

「君は何のために、頂を目指すんだ? Pの存在、塔の意味、万能無益とは何なのか、それを知るために、無数の試行を続けて来たんじゃないのか」

「わたしは、わたしの冒険は、それだけじゃなくて」

「俺の冒険は、君を頂へと連れていくことだ。その計画に、彼が入る余地はない」


 冷たい論理、鋼のマキャベリズム、徹底したリアリストか。

 

「関わり合いたくないって言うなら、異論はないよ。面倒事が増えなくて助かる」

「感謝します。今後はお互いに、不干渉と言うことで」


 それっきり、氷月さんの方はうつむいたまま、出された料理を親の仇みたいに、もぐもぐすることに専念していた。

 いい食べっぷりと言うか、あの子となら、仲良くしてもいいだろうな。

 あのイヌがいなければ、だけど。

 

「その……小倉、さん。なにより、福山君」


 でかい体を、にじるように俺に近づかせ、オーガの男は頭をこすりつけるように、綺麗な土下座の姿勢になった。

 まさしく『七重ななえの膝を八重やえに折り』ってやつだった。


「済まなかったっ! うちの磨平が、とんでもねえことをっ!」


 俺は文城の顔を見て、その表情から読み取れることを、最大限にして表現した。


「そういう謝罪は、互いに信頼関係があって、はじめて成立するもんですよ、佐川さん」

「……っ」

「とはいえ組織の長のメンツが、安いものでないぐらい、弁えているつもりです。頭を上げていただけますか?」


 それでも姿勢を崩さない相手に、俺は淡々と告げた。


「正直、俺たちはもう、貴方たちとは関わり合いになりたくない。いつか二十一階にたどり着くとしても、『ローンレンジャー』と協力関係を結ぶ気もありません。互いに不干渉を貫く、それが落としどころでしょう」

「それでも……せめて一度は、磨平の奴も謝りに行かせてくれ。でなきゃ、けじめも示しもつかねえ!」


 そういうの、要らないんだけどなあ。

 はっきり言って、磨平ってチンピラも、そのチンピラをコントロールできなかったこの人も、頼むから見えないところで、勝手にやっててくれという気しかない。


「けじめも示しも、まずは自分たちの組織でやっていただけますか。孤高の戦士を気取るなら、カタギのニンゲンに迷惑かけない程度のしつけを、徹底させてくださいよ」

「それなら、とりあえずこれを」


 差し出されたのは、銀色のチケットだ。慰謝料ってんなら、せめて吉原の片門、閉められるぐらいに出してくれないかね。


「受け取れません。こっちは契約を勝手に破棄され、生命の危険に陥った側です。それも内々に処理しましたけどね。もはや謝罪も賠償も、届かない話なんですよ」

「……っ」

「俺は、この世界に来て、まだ日も浅いです。でも、この街がなんとか治安を保ってるのは、それぞれが『好き勝手しないでいる』からじゃないですか?」


 そうだ。

 実のところ、この街には法律も、それを監督する省庁も警察機関もない。

 本来なら、無秩序に堕ちそうなところを、なんとか踏みとどまっているのは、過去の生活で身に着けた、社会性によるものだろう。


「それを、身勝手な暴力でまかり通ろうとする相手と、仲良くする気はありません」

「…………」

「それとも今、ここで、俺をねじ伏せて言うことを聞かせます? それが、ローンレンジャー流って奴なんでしょうから」


 それが、とどめになった。

 言いすぎだとは思ったけど、あの時の文城のことを考えれば、まだ軽い方だろう。

 悄然と立ち上がると、オーガの男は背中越しに告げた。


「せめて、おと……尾上さんに、俺が、済まなかったと言っていたと」

「伝えておきます」

「頼む」


 肉厚な気配が去っていき、部屋の中の視線が俺に集中する。

 好奇、非難、揶揄やゆ、もしかすると、好意も。


「佐川ちゃん、へこんじゃったねー。小倉ちゃん、マジギレてんの、マジこわぁ」

「窮鼠猫を噛むか。良い座興であった」


 くつろぎモードに入った『新皇』の二人は、面白がりながら酒をたしなんでいる。


「とはいえ、一切の謝罪を拒絶というのは、悪手でしたね。この街に法の秩序がないと言うなら、面子を傷つけられたメンバーが、逆恨みする可能性も考慮すべきでは?」


 他人事ひとごとだと思いやがって、冷血イヌ男が。

 だからって、あそこでヘラヘラ謝罪を受け入れたら、磨平みたいなチンピラがつけあがるだけだろうが。

 とはいえ、その指摘はもっともだし、用心棒のぶらぶらおじさん呼んどくか。


「しかし小倉さん、あなたもお人が悪い。佐川さん意中のお相手、どなたかもご存じなんでしょう?」

「知ったことか、ですよ。惚れた腫れたを楽しみたかったら、綺麗な体でお出ましいただきたいですね」


 乙女さんが持ってた例の時計、あれも佐川の贈り物だったのかもな。確かに助けられたけど、ダンジョン攻略の結果でプラマイゼロだっての。


「小倉さん、ちょっといい?」

「なんでしょう? 氷月さん」

「瞳でいいよ。わたし、いつも下に帰って来た時、行くところがあるんだけどね」

「おい、瞳」

「北斗は黙ってて」


 イヌ男を押しのけて、赤毛のネコ娘は笑顔で告げた。


「明日、もしよかったら『天覧武闘場』に来て! つむぐと一緒に!」

「武闘場って、まさか」

「そうだよ」


 朗らかなそれから、獰猛な肉食獣のそれへ。

 鮮やかに笑いを変化させながら、最強の冒険者は拳を突き出した。


「殿堂入りしたわたしの実力、見せてあげるから!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 面白かったです。 [一言] 最初の印象とはまた違った面が見えてきて面白かったです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ