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REmnant・REvenants・REincarnation ~異世界転生日本人、魔界の最下層で生きていく~  作者: 真上犬太
Remnant case:07「set me free」

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12、トライアル(その二)

 悲惨な十四階をなんとかパスして、俺たちは上への階段にたどり着いた。

 もしかすると、このダンジョンに立ち向かってから初めて、『冒険者辞めたい』と思ったかもしれない。


「あ、あー、そんじゃ、あたしがパパっとやってくるから、みんなは休憩ね」

「すまん。何かあったらすぐに呼べよ」


 柑奈は自分の武装を確かめ、十五階へ一人で登っていく。

 その姿を見送りながら、文城は俺たちに振りかえった。


「十五階から、直接入るのはダメなのかな?」

「今後はよっぽどのことがない限り、そうするよ。実際、今回は裏トレジャーを取るためにはいったわけだし」

「おい、始まるぞ!」


 柑奈の様子を見ていた紡の声に、みんなが集まってくる。

 十五階。

 ここが『連続ボスフロア』の始まりであり、その難しさを実感できる、最初の関門でもあった。


「それじゃ、神崎柑奈、オンステージ!」


 叫ぶと同時に擬態が解かれ、両手に久しぶりの二丁拳銃を構える。

 十五階はこれまでの石造りではなく、床も壁も天井も、異様な光沢の金属で出来上がっている。

 そして、床の一部に穴が開き、何かがせり上がってくる。

 

「カンナちゃん、がんばって!」


 床下から現れたのは、クロスボウを乗せた三機の『タレット』だ。

 一斉に発射されたそれを、鋼鉄のメイドは難なく交わす。もちろん一発で終わるわけはなく、自動装填されて柑奈を狙撃する。


「へいへい、どしたどした! こんなんじゃあたしの玉のお肌を傷つけられないよ!」


 そんな挑発に反応したのか、今度は別の床が開いて、円筒形の砲身を乗せた新たなタレットが現れる。

 その筒からは炎が吐き出されて、逃げ道をふさいでいく。

 そのすべてをきっちり避けて、ひたすら交わすことに徹していく。


「しっかし、ここだけ妙にメカっぽいよな。どういうコンセプトなんだろ?」

「こうした塔のフロアは、肉獄を除いた各獄層の特徴を模した『練習ステージ』として設定されている、という考察があります」


 しおりちゃんが解説する間にも、床から現れる『タレット』の数は増えていく。

 当たると爆発する榴弾を出すタイプ、魔法の光弾を発生させる結晶を備えたタイプ、それぞれの攻撃速度も範囲も様々で、すべてを見切るのは不可能だろう。

 通常攻略の場合『攻撃される前に破壊』が鉄則だ。

 そして、裏トレジャーを獲得する場合、このフロアは地獄の難易度を誇るようになる。


「おっ、そろそろお出ましかな!」


 飛び交う攻撃を避けながら、楽しげな声を上げる柑奈の目の前。フロアの中央に巨大な構造物がせり上がってくる。

 巨大な筒形の構造物。その中央には切れ込みがあり、透明なカバーの下に、無数のレンズがはまっているのが見える。

 このフロアのボス『制御コア』、アレを破壊するのがこのフロアのクリア条件だ。

 でも、


「リーダー、念のためカウント、そっちでもよろしく!」

「わかった! 三分だな!」


 裏トレジャーを獲得するための条件は『ボスであるコアを破壊せず、すべての攻撃を三分間耐える』だ。

 実際これ見つけたの、南条さんたちらしいんだけど、いったい何をどうやったらこんなの見つけられたんだよ!?

 俺は手元の時計に目を落とし、秒針の位置を見て、


「それじゃ、スタート!」


 柑奈の宣言に合わせるように、コアの部分から光がほとばしって地面を焼く。ボスの攻撃が、耐久開始の合図。

 その途端、すべてのタレットの攻撃が、一瞬だけ止んだ。

 もちろんそれで、終わるわけはない。

 クロスボウが断続的に、敵を狙って射撃を開始。榴弾砲が攻撃をばらまき、逃げ道をふさいでいく。

 そのすべてを、柑奈がきれいなステップで交わし、


「おっと!」


 避けきったところに、ボスのレーザーが叩きつけられる。もちろんそれも、柑奈はぎりぎりでさばいた。

 この段階で、時間はまだ三十秒。

 それまで主役を張っていたタレットが一斉に引っ込み、入れ違いに現れるのは、結晶を乗せた塔のような形。

 そのすべてが、色とりどりの光弾をばらまいた。


「で、これは迎撃してもOkっと!」


 魔機人パペッティア由来の正確な射撃で、敵の攻撃だけを討ち落としていく。

 親方が言うには、一連の攻撃を耐えてもいいらしいんだけど、防御用の素材を持ち込んでやっとだったらしい。

 光弾ばらまきでようやく一分。

 そういえばこれって、


「弾幕シューティング、って感じだな」


 魔法弾のタレットが引っ込み、次に現れたのは巨大な丸ノコギリを乗せた、かなり嫌な感じの代物。

 当然、そのすべてが、柑奈めがけて解き放たれる。


「うわったっ! これ追尾してくるじゃない!」


 火花を散らして、柑奈をかすめて飛ぶ丸ノコ。生身で喰らったらすごいダメージだぞ。 しかも、今度は床じゃなく天井が開いて、そこから高圧水流が降り注いでくる。

 その間にも、中央のコアがレーザーを差し込んでくるから、一瞬も気を抜けない。


「オレだったら、どこまで耐えられっかな……」


 ぼそりとつぶやく紡と、微妙な顔を向けるしおりちゃん。

 一応、この敵の攻撃は、一定のパターンが存在するってことで、完全な対策は組めることにはなってる。

 とはいえ、柑奈みたいなある程度の攻撃を無効にする手段がないと、チャレンジすることさえ、やめておいた方がいいだろう。


「柑奈! 残り一分!」


 展開していたタレットが一斉に収納され、目の前のコアが、変形を開始する。

 円柱型の床面部分が割れて八本の足になり、上の部分の柱が、四方向に割れて方針を形成する。

 このフロアボスの裏攻略、最後のボスがこいつだ。

 それぞれの砲身には、さっきまでタレットが使ってきた榴弾、魔法弾、火炎弾、そしてレーザーを撃ってくるようになる。


『そんなもん、どうやってさばいたんですか!?』

『そりゃおめえ、ケガを承知でそれぞれの弾を、受けたりよけたりしたんだよ』

 

 親方の話を聞いたとき、正直、俺は言葉が出なかった。

 現実問題として、その困難さを目の当たりにして、顔をしかめるしかない。

 それでも、柑奈の方は極めて冷静だった。


「ここまで来たら、あとはサビまで歌いきるだけってね!」


 榴弾の範囲を見切って大きくよけながら、魔法弾を迎撃し、火炎弾をあえて食らいながら、レーザーの照準を絞らせない。

 火花を散らし、炎をドレスのようにまといながら、鋼の肌をきらめかせて、柑奈が舞い踊る。

 そして、そのすべてが唐突に、動きを止めた。


「……イエス」


 あれほど荒れ狂っていた弾幕は収まり、巨大なボスは床に収納されていく。

 その代わりにせり上がってきたのは、金色に輝くトレジャーボックスだった。


「終わったよ、みんな」


 俺たちは静寂の支配するフロアに上がり、柑奈が開いた箱の中を覗き込む。

 中身はぐるぐる巻きになった、布のようなものが置かれていた。

 取り出して広げてみると、縦二メートル、幅一メートルぐらいの、家の扉のようなものが描かれた『タペストリー』だった。


「『セーフハウス』。これを壁や床に置いて、そのドアを開けると、その向こう側に異次元の部屋を確保できるアイテム。獄層の攻略には、一つ以上持ち込むことが、推奨されています」

「うん」


 俺はそれを文城に渡し、ザックに収納してもらう。

 そして、柑奈に頷いて見せた。


「無茶させちゃったな、ありがとう」

「みんなも自分のクエスト設定してたし、あたしも何かやろうと思ってたから。それに」


 柑奈は擬態を取り、いつものメイド服姿に戻ると、笑った。


「塔をクリアしたら、次は獄層攻略でしょ。事前準備は、やれるときにしておかないと」


 それは、彼女らしい気遣いと、ちょっとの切なさを含んだ言葉だった。

 確かにこれは、獄層攻略には必須の装備かもしれない。でも、塔が終われば俺たちは、いったん解散することになる。

 このアイテムをいつ使えるか、あるいは使う機会が来るのかさえ、わからない。


「さって、あたしは予定通りに攻略終えたよ。十六階はさっさとクリアして、あんたの裏トレジャー、取りにいかないと」

「おう!」


 柑奈の上げた拳に、紡が自分の拳を合わせに行く。

 俺たちは身支度を整え、上のフロアに向かった。


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