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REmnant・REvenants・REincarnation ~異世界転生日本人、魔界の最下層で生きていく~  作者: 真上犬太
Remnant case:07「set me free」

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11、トライアル(その一)

 中休みが明けて、ダンジョン攻略再開の日。

 メンバーは誰一人かけることなく、事務所に集合した。会議用のテーブルを囲んだ面々を見回し、ミーティングを始める。


「見たところ、全員体調に問題はなさそうだな。でも、異常を感じたらすぐ言うように」

「あ、あのね。ちょっと、その前に、僕から、いいかな」


 文城が片手をあげ、例の話題を切り出す。


「ニ十階攻略終わったら僕、大川さんのお城で、外に行ってきます。多分、帰ってくるのは一年ぐらい後に、なるんだって」

「んで、オレもそれについてく。文城が気になったのもあるけど、やっぱ、ダンジョン以外も見てみたくってさ」


 これで、二人の進路は確定した。柑奈の方は何も言ってこないし『デート』の一件が、だいぶ功を奏したんだろう。

 穏やかな顔で二人を見るメイドは、自分の今後を語りだした。


「あたしの方も、ちょっとだけアイドル活動に重心移動かな。来月から、ニュータウンFM主導で、コンピレーションアルバムを出す予定なの。あたしも誘われてるから、何曲かやらせてもらうつもり」

「おー、いいじゃん。それ以外にも、なんかやんのか?」

「藍さんがいろいろ考えてるみたいでね。少なくとも、あたしの曲でアルバム作れるぐらいには、とかなんとか」


 ダンジョン入る前にこういう話をするのはどうか、みたいなジンクスもあるけど、俺としては今後の展望は、話せるときに話しとく方がいいと思っている。

 言えないまま抱えると、何かあった時に、重たく心に残るもんだからな。


「しおりちゃんの予定は変わらず、学校の先生。文城たちが帰ってくるまで、シーカーズは事実上、活動停止だね」

「で、リーダーの方はどうするの? しおりの手伝い?」

「佐川さんのギルドに、相談役で入ることになったよ。向こうでもP館に正式登録して、ギルド名も決めるってさ」


 これで、お互いの今後は確認し終えた。

 あとは当初の目的を、果たすだけだ。


「今日からは十五階から十八階まで、ノンストップで行く。十五階の裏トレジャーを入手予定だから、アンカーを使って十四階から開始。攻略時間によっては、塔内でビバークを入れるからそのつもりでな」


 しおりちゃんの攻略情報をテーブルに広げ、予定を確認する。

 最初は、彼女の情報だけだったものが、俺たちの経験が書き加わって『シーカーズ』の攻略情報に変わっていた。


「それと、十七階だけど、紡」

「任せとけって! オレ、めちゃくちゃがんばって裏トレジャーを――」

「――無理そうなら、その時は即降りです」


 しおりちゃんは、やっぱり紡に厳しかった。とはいえ、俺も彼女の意見には賛成だ。

 今回は十五階と十七階、二か所で裏トレジャーを入手する予定がある。

 とはいえ、十七階に関しては危険度が段違いすぎた。


「十七階の裏トレジャーに関しては、ホライゾンの瞳さんや、南条南さんの固有武器を生み出したというエピソードがありますが、それに捕らわれる必要はありません。安全第一の攻略、それを忘れないでください」

「……ごめん。それは、納得できない」


 意外な一言。

 俺も含めて、みんなは紡の顔を見た。


「自分の強さとかって、結局、どれだけ自分以上に強い奴と戦わないと、分からないと思うんだ。もちろん、何も考えずに突っ込む気はない。でも、安全第一だけじゃ、できない事もあるんじゃないかな」

「その腕試しで、パーティを、ご自身を死の危険にさらすことになっても、ですか?」


 こんな風に意見が割れるのは、初めてだった。

 今まで、しおりちゃんの判断は尊重され、パーティの安全がすべてに優先してきた。

 でも、


「あ、あのね。しおりちゃん」


 太いネコ手が、そっと差し上げられた。


「やりたいこと、やれるように、がんばってみて。それで難しかったら、また、みんなで考えて、そういう風にするのが、僕たちだったでしょ?」


 その顔は、本当に痛みを伴っていた。

 それでも文城は、戦うときと同じぐらい勇気を振り絞って、意見を口にしていた。


「だから、紡君のも、紡君だけじゃなくて、みんなで考えて、やれたら、いいんじゃないかな……」

「文城さんは、そうお考えなんですね」

「ほ、他のみんなが、どうかは、わかんない、です。でも」

「ならあたしは、反対に一票ね」


 柑奈の言葉は、紡の一言以上に驚きだった。


「あたしたちは最終的に、ニ十階の塔ボスを倒すって目的がある。裏トレジャーはあくまで努力目標、乗り越えるべき障害じゃないと判断します」

「カンナちゃん……」

「ごめんね、ふみっち。自分の意見をちゃんと言えたのは、すごくいいことだよ。でも、あたしもロマンより安全を選ぶから」


 票は割れた。

 十七階の裏トレジャーを取るか、安全策を取って攻略優先するか。どっちに肩入れするかで、方向性が決まるだろう。

 そして俺は、すべてをひっくり返すことにした。


「覚えてるか、みんな。ブレインストーミングのこと」


 本当に懐かしい、俺たちの冒険の原点だ。

 皆で意見を出し合い、プラチナチケットをどう攻略するか考えたのが、始まりだった。


「安全策を取るなら、そもそも冒険に出る必要はない。仲間を危険にさらす無茶をして、手に入れるものに意味はない。だったら」


 笑って、最高にずるい解決策を出す。


「安全も冒険も、どっちもとれるのが、最善の道じゃないか」

「うわぁ、絶妙に詐欺師の手口、詭弁バリバリパラダイスねー」


 即座に突っ込みを入れて、柑奈も笑う。


「具体案は何かあるの、リーダー」

「事前情報もあるし、対策は立てられる。そもそもこの攻略情報は『否術ディナイアル』が組み込まれてなかった古いバージョン。改善の余地ありありパラダイスだ」

「その攻略情報を、私たちが更新する意義が、あるとお考えですか?」


 しおりちゃんの懸念は最もだった。

 なぜなら彼女は『攻略できるか否か』なんてレベルでは、考えていないから。


「紡、今回の攻略。能力開放は封印。今後の一般パーティができるであろう範囲で、裏トレジャーにチャレンジする。約束できるか?」

「あー。そういうことか。ごめん、しおり。オレ、また自分のこと、考えてなかった。そういうことなら、答えはイエスだぜ!」

「……申し訳ありません」


 そこでチョウゲンボウの模造人モックレイスは、頭を下げた。それから、ほんのりと苦い笑みで、付け足した。


「あなたはきっと、この先も無茶をするでしょう。あの力を使った裏トレジャー攻略は、その気持ちを加速させてしまう。そんなことは、させたくありませんでした」

「……ご、ごめんね。僕、余計な事、言っちゃって」

「いや、文城の意見は、何も間違ってないよ」


 俺は立ち上がり、みんなを見た。


「計画を立て、実行し、結果を踏まえて、改善する。俺たちは今まで、そうやってきた。だから今回も、俺たちらしく行く」


 宣言に、反対意見はなかった。

 そもそも『是か非か』なんて議論に陥る段階で、前提条件が間違ってるか、意見のすり合わせが未調整なんだ。

 リーダーの役割は、みんなの意志を確認し、意見を尊重して、それぞれが行きたい場所へ進めるよう、導くこと。

 

「全員、装備を整えろ。ニ十階トライアル、再開するぞ!」

『了解!』


 俺たちは装備を整えて、塔へと向かう。

 アンカーを使って十四階への道を開き、冒険を再開した。

 んだ、けど。



「……っあ!? ま、またここかよぉっ!?」


 塔ダンジョン十四階に、紡の悲鳴みたいな叫びがこだまする。

 下の階でよく見た石造りの迷宮構造であり、何の変哲もない通路と分岐が続く光景。

 問題は、その単調さに隠された、凶悪なトラップだ。


「ちょっとリーダー、今日これで何回目よ!?」

「た、頼むから、どなんないでくれ! さっき左だから、次は右で……」


 俺たちは一塊になり、通路を右に進むと、


「うぐぅっ、き、きもちわるぅ」


 唐突に視界がぶれて、さっきと似た、全く別の通路に飛ばされていた。


「こ、孝人さん、マップの方は、いかがでしょうか」

「さ……三分の一ぐらいは。ちょっと待ってね、トラップの位置、書き込むから」


 塔ダンジョンの中でも屈指の『二度と行きたくない』と悪名高いフロア。

 無数のテレポーターが配置された、通称『ZAP階』とも呼ばれる十四階に、俺たちは翻弄されていた。


「こ、これで、手に入るトレジャーが、簡易トイレに使える『虚穴』だってんだから、配置させたPもえげつないよなぁ」

「百回以上、テレポートした場合には、裏トレジャーが手に入るそうですが」

「ごめん、僕、吐きそう……」


 唐突な見当識喪失と、視界を揺らされるめまいのような感覚。俺もさすがに、テレポートのし過ぎで、ちょっと気持ち悪い。

 問題は、ここのトラップ、十一階のターンテーブルと同じく、視ることによる発見と回避ができない事。

 つまり、


「うげぇ、ま、またぁ……!?」

「ほんともう、最悪の最悪! 次からは絶対、ここは飛ばして入るからね!」


 すでに十回以上のテレポートを繰り返し、悲鳴を上げるパーティメンバー。敵が出てこないのが不幸中の幸いだけど、精神力はゴリゴリ削られていく。


「せっかく、カッコつけて入ってきたのに……」


 俺は拳を握りしめ、絶叫した。


「どうしてこうなるかなああああああっ!」

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