微睡
三題噺もどき―にひゃくろくじゅうご。
「――――!?」
身体がこわばり、ばちりと目が覚める。
一瞬の緊張が全身を支配したが、次の瞬間には体の力は抜けていた。
「……」
数秒前まで見ていた夢の中で、何かにかまれた。
それに驚いて、びくりとして。
それが現実に届いて、目が覚めた。
瞬間的に緊張をしたせいか、疲労感が一気に襲う。
夢の内容はすでに忘れつつあるせいで、記憶の方より全身の倦怠感に意識が剥く。
「……」
おぉ…。
心臓が面白いぐらいに騒いでいる。
普段ここまでなることない。
全力で運動した後のような騒ぎようだ。
おかげで全身の体温が上がりだして、暑くなってきた。
「……ふぅ……」
布団をはぐように足をのぞかせる。
連動するように、ベッドが軋んだ音を立てる。
そういえば、さっき身体が跳ねた瞬間に、パキと音がした気がしたのだが…気のせいだろうか。そうだとありがたいのだが。
「……」
まぁ、このベッドもそれなりの年数使っているからなぁ。
ベッドに寿命というものが存在するのかは知らないが、ちょっと考えなくちゃいけないなぁ…。最近ますます軋むようになっている気がする。少し動いただけで悲鳴を上げるのだこのベッド。んーホントに、替え時かもしれないなぁ。
「……」
しかし、目が覚めたが、今は何時なのだろう。
目覚ましの音は聞いていないから、まだ起床時間ではないだろうけど。
寝ころんだままで、ぐるりと部屋を眺めても、暗闇が広がるだけだ。外はまだ暗いのだろうか。
だがまぁ、この部屋は遮光カーテンをつけているから、常に暗いから、部屋の明るさはあてにならない。それなりに遮光性の高いモノを使い始めてから、更に暗くなった。当たり前だが。
個人的には、このくらいが落ち着くし、集中できるのでありがたい限りだが。
「……」
頭の横あたりに置いていたスマホを手に取る。
充電中のため、少々熱い。
……おかしいな?もしや充電うまくいっていなかったのか?最近買い替えたのだが…。接続が悪かったかな…。まぁ、寝る直前、割と朦朧としながらしたからな。ちゃんと繋がっていなかった説はある。
「……」
だとしたら、全く充電されていないことになるのだが…。
昨夜の寝る直前の記憶が正しければ、半分以上は残っていたから…今からちゃんとさしなおしておけば、出る時間までにはフルになるだろう。
…今が何時かにはよるが。
「……」
スマホ本体の横にある電源ボタンを押す。
パッと、一気に灯りがつく。…まぶ。
視界が一瞬ぼんやりとしてしまい、画面が上手く見えない。
背景を暗めに買えた方がいいかな…。
この灯り自体が強い上に、今はスマホの壁紙も明るいモノにしているから、二倍眩しく見える。気がする。
「……」
ようやく慣れた視界に見えたのは、深夜とも早朝とも言えないような、微妙な時間。
なんでこんな時間に目が覚めたんだ…。
もうちょっと遅い時間だったら、もう朝か…で起きられたし。
もっと早い時間だったら、まだ夜か…で寝直したのに。
こんな時間だと、今の状態で眠りにつけるかが、あやしい。
そのうち、目覚ましが鳴りそうだ。
「ん――……」
しかし、まぁ。
起きる気にはならないのだけは、事実だ。
一旦スマホを置き、ちゃんと充電コードをさしなおす。
仰向けになると、視界には見慣れた天井が広がる。
目が暗闇に慣れてきた。
あぁ、このままだと、起きたまま目覚ましを聞くことになりそうだなぁ。
「……」
目を閉じれば、寝れるのか…コレ…。
未だに緊張に襲われた反動で、心臓が騒ぎまくっている。
寒いと眠れないが、暑すぎても眠れない。
下手に体温が上がっていて、眠れそうにない。
「……」
目をとじるだけ、閉じておくか。
そして、別の事を考えて居れば、案外落ち着いて眠れるかもしれない。
変な夢を見たせいで、よくない思考が回り始めているのも、眠れない原因だろうし。
いつにもまして、最悪が頭の中であふれ始めていて、手におえない。
楽しい事…。
とはいえなくても、他のいいことを考えよう。
そうしよう。
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「…『~♪~♪~』……」
お題:暗闇・朝・ベッド