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遺跡の人について

 東北拠点からの報告は予想通りだった。


「雪男?」

「もう春も終わりよ?」


「じゃあ、原始人?」

「原始の時代に生きているから原始人でしょ?」


「じゃあ……ドワーフ?」

「んー……それが一番スッキリするわね」


 東北で見つかった遺跡にはやはり人影があった。


 髪を切るという文化がないのか、髪も髭もボーボーの男達が時々洞穴から出入りしているのを確認した虎皮達は、すぐさまその様子をカメラに収めて送ってきた。 


 皆髪型が似ている、というか伸ばしっぱなしで顔もちゃんと映っているものがないので、見分けが難しかったが、体型でなんとか出入りしている男が一人ではないことは確認出来た。


 どこぞのビルの残骸から鉄骨でも盗んできたのか、手には木の枝に鉄塊を括りつけた鎚みたいな鈍器を持っていたし、帆髪の道具らしき何かをいくつか腰にぶら下げたりしていたから、多分知性体であろうと判断もできた。


「じゃあ、ひとまずドワーフと仮称するとして、なんなのコイツら?」

「私に聞かれても……」

「虎皮の先祖みたいに聖教国から脱出した連中とすると、ちと聖教国との距離が離れすぎてるよな」

「自然発生もないわよね」

「んー。猿も放っとけば人に進化するんだから、野人も放っとけば知性を持つのかもしれないが、ウン百年、ウン千年の間に生物ってそこまで進化しないよね」

「そうよねぇ……」

「ネズミ食った野人の変異体……はないか」

「身体が肥大するはずだものね。この人達、むしろ……」


 背の低いずんぐりむっくり。角付き兜被せれば間違いなくドワーフって感じの体型は、魔獣化じゃ説明が付かなかった。


 放置は出来ないが、会えば現地調査は争いになるかもしれない。

 だから第三の最も手っ取り早い手段をとることにした。

 

「閉じ込めよう」

「え?」


 相手が何者かとか、どーでもいい。

 要は会わなきゃ争いにならないのだから、相手を壁で囲ってしまえば事は解決である。


「言いたいことは解るけど、どうやって?」

「街の壁造った要領で」


 出来んこたーないだろう。

 すんごい手間かもしれないが、バルガ達には頑張って貰いたい。


 だが、この計画は意外……でもない人物からストップがかかった。




◇◆◇◆◇


「新しい人類だって?」

「ああ」


 別段勿体ぶる程の人物ではない。山田だ。


 俺はその頃コイツをこう勘ぐるようになっていた。

 コイツを遣わせている奴というのは、あるいはコイツ自身がビリオンなんじゃねえか? と。


 唐突かもしれないが、あの日記に書かれていたことから、今までのコイツの言動を考えると、それが一番妥当だった。

 とはいえ、聞き出すようなことはしていない。


 やるのは証拠が揃ってからでいいと判断していた。


 勿論証拠の収集はシュテンを通し、スパイ達に指示している。


 欲しい証拠はたった一つ。さほど調べるのに時間もかかるまいと思っていたが、現在不思議なほどに苦戦中だった。


 最初は“食道楽”がスパイだとバレバレだからかなと思っていた。

 いきなり旧文明の食事が復活したら、少なくとも聖人達は気がつくだろう。


 実際、別に気付かれたら気付かれたで良いと思っていた部分もあった。


 山田の言うことをどこまで真に受けて良いのか?

 聖教国はウチに危害を加えるつもりなのか?


 その見極めが出来ればそれで良かったから。 

 シキは綺麗に巴投げを食らわされたので微妙だったが、誰がウチのスパイ活動を妨害しに来るか。 


 山田チームはこっちと仲良くやりますアピがしたいはずだから、そいつらはあからさまに妨害はしてこないだろうという読みだった。

 つまり危害を加えに来る奴が魔王国撃つべし派だ。

 人の動きを見る事が一番の目的だったからね。


 結果、現状表立った妨害はなし。

 よってさしたる情報もなし。

 本当に聖教国はもうこちらとやり合う気がないのかと考えそうにもなったが、聖教国はただ傍観していた訳ではなく、対応策は打ってきたから警戒を解かなかった。


 因みに対応策ってのが“冒険者ギルド”である。 考えた奴は絶対異世界ファンタジーが好きだと思う。

 まあ、この辺りは後で話すとしよう。


 とにかく、そんな中で状況が変わった。

 例の日記のせいで。


 折角伸ばしたスパイの手。

 ならば使いたいところだが、現状食道楽は聖教国に美味しい食事を提供しているだけの組織でしかない。


 いくら俺のアンドロイドが優秀だっつったって相手もアンドロイド。加えて聖教国は相手のフィールドだ。

 流石に分が悪いよねー、とか悩んでいたときだった。


 山田がドワーフの件に異様に関心を示したのは。


 これは俺の予想を裏付けとなるかもしれないものだった。

 そして予想通りなら、山田チームはいつか俺を討ちに来る。


 じゃあここで山田撃っちゃえば? と思ったが、推定だけでそれはどうなんだ? と思い直した。


 そもそも山田がビリオンである可能性も推定段階。

 ここでコイツ撃って本当に雇い主がいた場合ソイツは俺の敵に回る。


 どこぞの新人類ならともかく、聖人はアンドロイド。

 勝算なしで動いているはずがない。


 だから今までもこちらが何を知りたいのか勘づかれないよう、調査は客の話を聞くに徹しろと指示したし、山田の前ではその話題に触れないようにさえしていた。

 

 それが功を奏したのかもしれないね。

 山田は油断していたのだと思う。

 

「なんとかして、彼等に会うことはできないかな?」

「会っても会話できるか解りませんよ?閉じ込めるのが得策ですって」

「そう言わずに。もしかしたら……」

「もしかしたら、なんです?」

「新しい人類となれば大発見だ。情報屋としては見逃せないよ。そっちも彼等と上手くコンタクトできればさ、面倒くさい壁なんて要らなくなるんじゃないかな?」

「フン。とはいえ争いになれば最悪殲滅戦になりますよ?」

「なら一人まずはバレないように捕獲してみるとか? で、会話が無理そうと解ってからでも閉じ込めるのは遅くないだろう?」


 一瞬とはいえ、本当に動揺しているコイツを俺は初めて見たかも知れない。

 ドワーフなんぞどうでも良いが、

 

「解りました。捕獲はこっちで進めましょう。次回はいつ頃おいでになります?」

「良いのかい?」

「勿論」

「じゃあ、そうだな、1ヶ月後位でどうだろう?」

「いいでしょう。では、1ヶ月後に」


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