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Fly me to the Moon

作者: 愛野ニナ




 月は私が見ている時だけ存在している、というようなことを説いたのは量子論か。

 我想うゆえに我あり、と説く哲学があるなら、

 月想うゆえに月あり…と言ってしまえば量子論も哲学もたいして違わない気がするのは単に私が無学無知だからでしょうか。




 さて、ひと昔前に流行った歌で、僕らが生まれてくるずっとずっと前にアポロは月に行ってた、というような歌詞があったと思う。

 確かにそう、ものごころついた時に見ていた理科の図鑑だってリアルな月面のカラー写真と詳しい解説があたりまえのように載っていたのだから。




 それでも地上から眺める夜空の月はミステリアスで、じっと見つめているとどこか心がざわめくような、なんともいえない感覚になる。

 私はまるでその月の魔力にとらわれるように、虚空へと思わず手をのばしてしまうのだ。




 もちろん頭ではちゃんとわかってる。手などのばしても月に触れることなどできるわけがない。いくらなんでもそこまで頭はイカれていない。

 ただ美しい月光の魔力に魅せられるままに、うたかたの夢を見る。

 夢幻の彼方に、あるはずのない月の王国が見える。

 それは私の永遠の探し物「どこにもない楽園」。




 本気で月に行きたいと思えば行ける。

 宇宙飛行士なんてなれなくても、お金をたくさん出せば現実に月世界旅行ができる時代になっている。 

 地上から見える月と、本当にロケットで到着した月はぜんぜん違うんだろう。

 月は大気も音も光も何もない、生命が生きるには過酷すぎる環境の…死の星である。(これにも諸説あるけど、今回の話の趣旨とは違うので、ちょっと脇に置いとく)



 

 遠くから眺める月は、綺麗な憧れの月。

 だけど実際にたどり着けば、クレーターだらけ。人の住めない冷く暗い死の大地がただ広がるだけだ。

 つまり、

 夢も憧れも、それがリアルになってしまえば全く別物に成り果ててしまうということ。

 だからね、私の夢は永遠に叶わなくていい。

 夢は叶わないからこそキラキラ綺麗に輝いてるの。

 地上から眺める月光のように、

 叶わないから、届かないから美しいのね。

 それが虚像であってもいい。

 憧れが壊れた後の、無様な真実なんて見たくないから。

 私はもう少し、夢を見ていたい。

 夢を見るために生きる。

 それが私の願い。




 今夜も月を眺めよう。

 Fly me to the Moonを歌いながら。

 私を月に連れていって…。 

 でも本当は、

 行きたいと思っていないの。




 役に立たない教訓を。

 夢を忘れたらつまらない大人になる。

 夢を叶えたら大人になっちゃう。 

 だからね、

 夢は忘れず無くさず、

 でも叶えないでいること。

 それなら永遠に、少年少女のままでいられるよ。

 きっとね。




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