27.フライドポテト涙味
こうして冬組を背負って立つむくつけき戦士たちが決定したわけだが、今の俺達には圧倒的に不足しているものがあった。それを解消しないことには熾烈な期末テストを勝ち抜くことは到底出来ないだろう。
「なあ、俺達には団結力が足りないと思わないか?」
ある日の放課後、期末テストの代表を教室に集め俺は発言した。
「団結力?」
スイートはネイルを弄りながら俺の発言をオウムのように反芻した。学校にネイルをしてくるな。今どきの女子高生はそれが普通なんだろうか。
「そうだ。過酷な期末テストを勝ち抜くには、俺達はあまりにもお互いのことを知らなすぎる。特にスイートとミラちゃん。俺は2人のことをほとんど何も知らない」
ホントのところ鏡花のことも言うほど知らないが、それでは俺が友達いない奴だと思われてしまうからな。少し見栄を張ってもいいだろう。
「確かにね。私も明くらいしか知らないわ」
ラヴィニアは珍しく俺の意見に同調した。こいつも実は結構友達が少ない勢だよな。親近感が湧くぜ。
「私は誰のことも知らんぞ。明は友達だけど何も知らん」
鏡花は俺がみみっちいプライドで隠していたことをあっけらかんと言ってしまった。なんて器のでかい奴なんだ。
「私も……ここにいる人達のことはあんまり知らないかも…? です!」
ミラちゃんはいつもクラスで誰かしらと仲良く話している印象だが、ここにいる奴らとは親交がないという。もしかして強さと社交性は反比例するんだろうか。そんな説を信じたくはないが。
何より可哀想なのはスイートだ。全員が暴露したことによって何も言ってないのに友達が少ないことがバレてしまっている。まあこいつは性格が悪そうだからな。友達がいなくても不思議はない。
「社交性に溢れる俺たちだが、このように何の因果かたまたま関わりの薄い奴らが集まってしまった。これでは冬組代表のチームワークに支障が出ることは想像に難くない」
「期末テストは個人戦ですけれどね」
スイートが口を挟んでくる。こいつは本当に空気が読めないな。
「個の力だけで勝ち抜ける時代は終わったんだ。今は連携力が何よりものをいう時代──」
「個人戦ですけれどね」
「…………」
なんなんだこいつは。俺に何か恨みでもあるのか。もしかしてヴァングと付き合ってたりするんだろうか。
「スイートよ」
「なにかしら」
「お前の彼氏が負けたのは単純に弱かったからだ。俺を恨むのは筋違いだぞ」
「……は?」
「ヴァングと付き合ってるんじゃないのか? それで俺を恨んでるんだろう」
「……はぁ!? どうして私があんな筋肉バカと付き合わなきゃいけないんですの! 冗談も大概にして頂戴!」
「ち、違うのか。すまん」
ごめんヴァング。よく分からないうちにお前振られちまった。
俺は気を取り直して本題に入る。
「……団結力の足りない状態では、このように必要のないいざこざも生まれてしまう。そこで俺は冬組代表緊急親睦会の開催を提案したい」
「いざこざの原因はあなたですけれどね」
「開催を提案したい!」
俺はスイートの小言を聞こえないふりをし繰り返す。
「親睦会って何をするですか?」
ミラちゃんが興味津々という様子で身を乗り出してくる。
「大それたことをするつもりは無い。早い話が飯の誘いだ。仲良くなるには一緒に飯食うのが1番の近道だろ」
「ご飯ですか! いいですね! 私は賛成、です!」
ミラちゃんは元気いっぱいで賛成してくれた。冬組代表の癒しだな。
「私は構わねえぜ。丁度外食したいと思ってたしな」
「私もいいわよ。断る理由もないし」
鏡花とラヴィニアも賛成してくれた。
「…………」
俺はスイートをガン見した。他の奴らも俺にならっている。
「……分かりましたわよ! 行けばいいんでしょう行けば! そんなに見ないでくださいまし!」
◆
「……へえ。じゃあスイートは私のこと知ってたのね」
「ええ。ドラクロワ家といえば向こうでは知らない人はいない超名門ですから」
俺達はデパートのフードコートに来ていた。いつぞやに暇里やラヴィニア、ルナと出掛けた時に利用したフードコートだ。
スイートはラメ入りのネイルで器用にフライドポテトを摘みながらラヴィニアと話している。
「入学式の日は驚きましたわよ。まさかこんな辺境の島国でドラクロワ家の長女と同じクラスになるなんて思っていませんでしたから」
「ちょっと事情があってね。家族と離れて日本の魔法学園に入学することにしたのよ」
ラヴィニアとスイートは魔法遣い組ということもあってか早々と打ち解けていた。こうして話している分にはスイートも普通の女の子という印象なんだがな。
「鏡花ちゃん! そんなに食べないでください! です!」
「がはは! こういうのは早い者勝ちなんだよ!」
鏡花とミラちゃんも仲良くフライドポテトをシェアしている。こちらも異能力者組で仲良くなったみたいだ。
「…………」
そしてここが一般人組である。同じテーブルを囲んでいるはずなのにどうしてこんなに孤独なんだ?
俺はすることもないので、たまにスイートのフライドポテトを摘みながら日本の年金問題について考えていた。このポテト少し塩分が強すぎないか?
◆
一部を除き大成功に終わった冬組代表親睦会の帰り道、俺はなんとなくラヴィニアと2人で歩いていた。
歩いているだけで肌にしっとりと汗をかく。もうすっかり夏だ。
「夏だな」
「そうね。日本の夏は蒸し暑いわ」
ラヴィニアは制服の胸の部分をパタパタと揺らし風を送り込んでいる。大きな胸にどうしても目がいってしまう。なんとも扇情的だ。俺は色恋沙汰に興味はないが、もしあれば恋に落ちていただろう。
……ラヴィニアの隣を歩くのは、何というか気が楽だ。
それは唯一俺の魔眼の事を知っているというのもあるし、向こうの身の丈話を聞いたというのもあるが、1番は単純にこの学園に来てから最も話しているのがラヴィニアだからだろう。
教室の席は隣だし、チャットを送る夜も多い。
何か波長が合うんだよな。割と苛烈な性格をしているが、何故だか一緒にいて気が休まるように俺は感じていた。これが友達という奴だろうか。
「ねえ、明」
「なんだ?」
「……期末テスト、勝つわよ」
「当然。やるからには優勝を狙うさ」
俺個人の理由もそうだし、俺はまだ中間テストの忘れ物を取りに行っていない。
ラヴィニアに1位を取らせてやれなかったことを俺は割と本気で悔やんでいる。本人はこれで良かったと言っていたが俺は納得いっていなかった。今回はそれを払拭するチャンスだ。
ラヴィニアを1位にして、少しでも立派な魔法遣いになったと思えるようにしてやる。
それが今の俺の大きなモチベーションになっていることは間違いない。
せっかく友達になったんだ、どうせなら笑顔で卒業できた方がいい。
そんなことを考えながら、俺はラヴィニアの隣を歩いていた。
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