26.ラヴィニアの懊悩、暇里の苦悩
「はぁぁぁ〜〜……」
私はベッドに突っ伏すと枕に顔を埋めた。長く伸ばしたツインテールが好き勝手にベッドの上で寛いでいる。
目を閉じると、瞼の裏に浮かぶのはあいつの顔。
……中間テストの時から、そうじゃないかなとは思ってた。
胸の奥のこの気持ちは、もしかしたらそうなんじゃないかって。
だって何でもない相手に膝枕なんてしない。あの時は深く考えずにしてしまったけど、よくよく考えたらあれは絶対おかしい。私はあんなことするような奴じゃない。
それであいつの寝顔を見てたら、色々なことを考えてしまって。
確かにあいつは私を怒らせてばかりだったけど。
でも私を助けてくれた。命懸けで助けてくれた。
それが、はじまり。
それからは早かった。
気が付けばあいつを目で追っている私がいた。
あいつが夜中に変なチャットを送ってくるたび、笑顔になってしまう私がいた。
ハントの誘いを断ってしまったのは、後になってめちゃくちゃ後悔した。
だって、いきなり当日の夜連絡してくるのよ?
行けるわけないじゃない!
あの時はもう寝る準備をしていたからお風呂に入って髪もほどいてしまってたし。女の子が髪をセットするのにどれだけ時間が掛かると思ってるのよ。
私がいないB-2攻略戦で、どうやら鈴々さんは明のことが好きになってしまったようだった。
私からすれば突然の新キャラ登場。鈴々さんが「明様」って呼んでるのを聞いたときは、顔には出なかったけど内心凄くびっくりした。
でも、明は鈴々さんの告白を断ったらしい。暇里に聞いた。
誰とも付き合う気はないからって。
なんとなくそんな気はしてた。
なんていうか……明は私たちとは違うところで生きてるんじゃないかって。
時々凄く遠い目をするんだ、あいつ。
私も、暇里も、ルナも、鈴々さんも、誰も写ってないような、遠い瞳。
授業中に横目であいつを盗み見ては、あいつがそんな瞳をしているのを見て、その度に私は悲しい気持ちになった。あいつが遠いところにいる気がして。私の事なんか何とも思ってないような気がして。
だから私はこの気持ちを表に出せずにいる。
そして、これからも出すつもりはない。今のところは。
私は恋愛さえあれば他に何もいらない、という人間ではない。
ドラクロワ家の長女としての責任と誇りがある。それは恋愛なんかよりも余程大切で重要なものだ。
それでも。
「私は……明が……好き。好きなんだ……」
言葉にすると、不思議なくらいストンと胸の中に落ちた。
私、ラヴィニア・ファンレイン・メルティレージュ・ドラクロワは様宵明に恋をしていた。
◆
「はぁぁぁ〜〜……」
私はベッドに突っ伏すと枕に顔を埋めた。腰まで伸ばした髪がカーテンみたいに私に覆いかぶさってくる。
目を閉じると、瞼の裏に浮かぶのはあの時の感触。
私のレイピアが、青鬼に全く通用しなかった。
私の渾身の突きは青鬼の身体を貫通することなく、皮膚の下数センチの所で無様に止まってしまった。
「情けない……」
中間テストで1位になって私は天狗になっていたのかもしれない。あれはテストの形式が私の異能と相性が良かったのと、鈴々さんがペアだったおかげだ。決して実力でもぎ取った1位ではない。
私はそれが分かってなかった。軽い気持ちでB-2を歩いていた。
まあどうせ勝てるでしょ、って。
それがどれだけ甘かったのかを、私はすぐに思い知ることになる。
これまでの人生、何でも上手くやってきた。
勉強もそう。学校生活もそう。友達だって沢山いた。それは箒鷲宮魔法学園に来てからも変わらなかった。
すぐに友達ができた。中間テストも1位だった。
私はここでも上手くやっていけるんだ。
そう思ってた。でも。
青鬼にレイピアを止められたあの瞬間に、私のそんなちっぽけなプライドはぽっきりと折れてしまった。
後のことは正直あんまり覚えてなかった。ルナちゃんと明が倒したのだけは何とか覚えていた。
あれからずっと、もやもやが消えない。
期末テストの時期になって、ここで結果を出せばこの気持ちも晴れるかなと思ったけど、やっぱり駄目だった。
明が戦っている姿を見るとどうしてもあの瞬間を思い出してしまう。
今の私では冬組の代表になる資格は無い。そう思って今日辞退した。これでよかったと思う。
これでよかったんだ。
「強く……なりたいな……」
鈴々さんでも誘って修行しようかな。
それで期末テストが終わった頃に明をあっと驚かせてやるんだ。
まずは、青鬼。
あいつを倒さないと、私の止まった時計は動き出しそうになかった。
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