24.Who represents the winter(冬組の代表は誰)?
梅雨も明け、クラスの話題は期末テストが中心になっていた。
俺は未だに授業についていけず落ちこぼれの称号を恣にしている。
だが『男子、三日会わざれば刮目して見よ』という言葉もある通り、俺も今までの俺ではない。
驚かないで聞いてくれ。
なんと友達が1人増えた。
……もう一度言う。
友達が1人増えた。
さあ、思う存分褒めてくれ。遠慮はいらない。
今の俺は友達6人の男。怖いものは何もなかった。
「おい明、ちょっと聞きたいことがあんだけどよ」
噂をすればやってきた。俺の新しいソウルメイツ。
男のような喋り方をするコイツは鳳堂鏡花。正真正銘女の子だ。
青色の髪をショートボブにしているが、寮母のガルニグラが水色に近い髪色なのに比べて鏡花は瑠璃色に近い。同じ青でも全然印象が違うもんだな。
「どうした、中間テストでは惜しくも3位だった異能力者の鳳堂鏡花よ」
「何? その説明口調」
「気にするな、こっちの都合だ」
「あっそ。そんなことより聞きたいことがあるんだけど」
まだ付き合いは浅いが、鏡花は細かいことを気にしない性格なの伝わってくる。俺みたいな落ちこぼれとも友達になってくれることからもそれは明らかだ。付き合いやすいタイプだ。
「俺に答えられることならなんでも」
友達には協力を惜しまない主義だ。俺は机に突っ伏していた頭を上げた。
「期末テストの代表戦、明は立候補するのか?」
鏡花が言っているのは期末テストのクラス代表を決めるために開催されるクラス内対人戦の事だ。期末テストはクラス対抗戦だが全員が戦うわけではない。クラスごとに5人代表を決めるのだが、それをどうやって決めるかというクラス会議になった時に誰かが「戦って決めればいいじゃん」と言った。反対意見も無かったので冬組は代表を戦って決めることになった。蛮族集団だ。
「する。倒さなきゃいけない奴もいるし」
夏組の佐城野美冬。あいつだけは俺の手で打倒しなければならない。
「ああ、あの喧嘩売ってきたやつだろ。アイツすげえよなー、いきなり他のクラス入ってきて宣戦布告してくんだもん」
「向こうにも何か事情があるんだろ、知らんけど」
あいつが母親とどういう関係なのかは知らないが、何か言われている可能性は高いだろう。隠していたつもりなのかは分からないが佐城野美冬の瞳には明確な敵意が籠っていた。
「こっちからしたら迷惑な話だな」
「本当な。理由も分からないまま恨まれるのは不気味だ」
「だな。まとめると明には期末テストの代表にならなきゃいけない理由があると」
「そういうことだ。何か都合が悪いのか?」
「んや別に。私も出る予定だからさ。とりあえず中間テスト5位以内の人らに聞いて回ってんだ」
「鏡花も出るのか」
期末テストに出たいという奴らは意外と少ない。まず冬組内で勝ち抜く自信が必要だし、その後はクラスの成績を背負って戦うことになるからだ。人は誰しもダメだった時のことを強く考える生き物。期末テストで負けたらクラスから非難されるかも……というのはつい考えてしまうだろう。
「うん。私さ……正直タイマンなら誰にも負ける気しないんだよね」
にひひと笑う鏡花。彼女の異能を俺は知らないが、相当自分の能力に自信があるらしい。
「ま、当たったらよろしく。それじゃ」
そういうと鏡花は鈴々の席に歩いていった。鈴々にも同じことを聞くんだろう。鈴々は出るんだろうか。あまりこういう行事で積極的に表に出るタイプには見えないが。
「それにしても期末テストねえ……」
母親の件もあるし、ブレヴィフォリアに言われた並行世界の件もある。期末テストに参加する理由としてはそれだけで十分だ。
だけどそれとは別に、クラスの為に頑張るかという気持ちも俺の中に少し生まれていたのだった。
◆
突然だが冬組のイカれた奴らを紹介するぜ。これが冬組の未来を背負って立つ勇壮なるグラディエーターたちだ。
まずは1人目。止まった獲物は逃さない。だけど、動く相手は勘弁な。歩く大艦巨砲主義。【ドラゴン殺し】ラヴィニア・ファンレイン・メルティレージュ・ドラクロワ!
2人目。友達100人出来るかな? その言動に勘違いする男子生徒が後を絶たない冬組のエカテリーナ。【冬組の影の女帝】老樹谷暇里!
3人目。小さな身体に大きな心。金属を操るド派手な異能力者は冬組のマスコット。誰が呼んだか通称ミラちゃん。【鋼鉄の乙女】ミミ・ララ!
4人目。魔法? 異能? 違うね、時代は筋肉だ。己の肉体に全てを捧げる強化系魔法遣い。【バカ筋肉バカ】ヴァング・フライハート!
5人目。タイマンなら負ける気がしねえ。誰でもいいからかかってこい。ボーイッシュというか殆ど男。【俺の友達】鳳堂鏡花!
6人目。喋ったことないから分からない。何か凄いいい匂いする。良かったら友達になってください。【ここに入れる言葉を募集しています】スイート・マジョラム!
7人目。冬組のプリンス。ユーモア溢れる絶世の美男子。魔法が使えないお茶目な所もまた愛らしい。【最後のナイスガイ】様宵明!
以上7名が冬組クラス代表決定戦に参加表明した生徒たちである。代表は5人なので2人はここで脱落することになる。
余談だがこの説明を当人たちに聞かせてみた所、ラヴィニアと暇里は物凄く怖い顔をしていたしヴァングと鏡花は大笑いしていた。ミラちゃんはえへへと笑ってとっても可愛かったし、スイートは完全に真顔で友達にはなってくれなかったことを申し添えておく。俺もなかなかクラスに馴染んできたな。
「で、組み合わせはどうやって決めんだ? 総当たりなんてかったるいことはやってらんねえぞ」
ヴァングが首をボリボリ掻きながらデカい声で言う。ヴァングはいつでも声がデカい。
「じゃあ適当に2ペアだけ戦って負けた方が脱落でいいんじゃないかしら」
スイートはウェーブがかった紫の髪をふわっと巻き上げながらそう言った。お菓子だか花だか分からないがいい匂いが鼻腔をくすぐる。友達になってはくれまいか。
「私は何でも良いわよー」
暇里はあんまり興味なさげだ。スマホをいじっている。
「私はやってやってもいいぞ。負けたい奴がいるならだけどな」
鏡花は自信満々な顔つきで全員に喧嘩を売った。
「俺は全然やりたくない。出来れば他のやつらで決めてくれ」
俺は本心からそう言った。今回は負けるわけにはいかないしクラスメイトと余計な戦闘はしたくない。
「まあ待てよ。俺はそもそもお前がここにいることに納得いってねーんだ」
「ん?」
そう言って俺を指差すのはヴァング・フライハート。中間テスト4位。冬組の声出し担当(予定)。
「何が納得いかない。俺は中間テスト2位だぞ」
数字というのは時に何よりも強固。4位のヴァングに文句を言われる筋合いは何ひとつないというわけだ。
「それはラヴィニア嬢がドラゴンを倒したからだろーが。何を勘違いしてるのか知らんがお前はただのラッキーボーイだろ」
「まあ……うん。そうだな」
ヴァングは悪い奴じゃないんだが思ってることがそのまま口から出てしまうきらいがある。出来れば冬組の外に出してはならない。これが代表だとなったらクラスの品位が疑われてしまうだろう。
事情を知っているラヴィニアは何も言わない。目を逸らして他人事を決め込んでいた。心なしかこの状況を楽しんでいるように見えなくもない。
「つーわけでお前は俺と戦え。もう1ペアはテキトーに決めてくれ」
つーわけがどういう訳かは知らないが俺とヴァングで戦う流れになってしまった。
「仕方ないな……負けても文句言うなよ?」
怪我させるわけにもいかないし適当にあしらってやるか。男だし多少手荒にしても大丈夫だろう。
「面白いギャグだ! 俺が落ちこぼれに負けるわけねーだろ!」
ガハハハと大口を開けて笑うヴァング。お前には応援団長という最適なポストが待っているからな。
そんなことよりもだ。
――うちのクラス、キャラが濃すぎないか?
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また、同時連載中の作品もありますので、よければそちらも読んでいただけたら嬉しいです。




