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バンド  作者: こくぼなり
一章
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放課後

 今週はテスト期間だ。多くの生徒が学校に残って勉強をする。私もその中の一人で今から図書室で結衣と勉強をするところだ。

「…だよね〜。」

 ふと一組の教室から赤華の声が聞こえてくる。思わず耳を傾けてしまう。

「そう言えば赤華ちゃんバンドやってるんでしょ?」

「うん。今テスト期間だから練習してないけど…」

「フェスとか出ないの?」

 赤華の友達は、高い声を上げて話す。そうとう興味津々なのだろう。

「うーん。そうゆうのはまだかなぁ…」

私達はまだ人前で演奏した事がない。もしかしたら、私が下手だからみんな人前で演奏したくないだけかもしれない。

「そういえば一人だけ下手くそな人いるんでしょ?みんなそこらのバンドより上手いのに。」

 声のトーンを落としながら言う。…私だ。確かにみんな素人とは思えないほどの腕を持っている。

「うん。一人だけね…」

 遠慮がちに答える語尾はほとんど消えていた。

「何の人?何の楽器の人!?」

 さっきよりも興味津々に聞く。おそらく身を乗り出しているだろう。まったく、なぜこうにも人の悪口というのは盛り上がるのだろうか。

「ベースの人…」

 だろうな。わかっていた。自覚してた。自分が下手くそなことぐらい知ってる。

 なのになぜ何も見えないのだろう。歩こうとしても視界がぼやけてヨロヨロと前に進めない。

 ドサッ、思わずその場に崩れ落ちてしまう。一瞬で教室の中の空気が変わる。

すりガラスの向こうの目線がこちらを向くのがわかる。急に身体が動き出す。私は走っていた。

 角を曲がった瞬間「誰もいないよぉ〜」という声が聞こえる。それを機に何も感じなくなる。

 ただ、何かがプツンと切れる音ははっきりと聞こえた。

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