目覚め
起きたのは半宵だった。誰も起きている様子はなく、時さえも止まっているようだ。
開いた窓から入ってくるそよ風が、カーテンを揺らす。
それに合わせたように、さっきの、頭の中の罵倒が蘇ってくる。
「キャーー」声にならない叫び声をあげて耳を両手で塞ぐ。指の合間を縫って罵倒は聞こえてくる。
耐えられなくなり、布団の中に潜り込み、時が過ぎるのをじっと待つ。
何時間も、耐える、たえる、タエル。「カチッカチッ」ようやく時計の音が聞こえるようになり、布団からゆっくりと浮かび上がる。
最初は顔だけ、次に腕を出し一気に全身を引き抜くように布団から出る。
目的は開いた窓だ。ゆっくりと近づきアルミサッシに手をかける。
下を見ると地面との距離がえらく近く見えた。「降りれそう…」なんてことを思いながら窓を閉める。
ベットに戻ったが横になってもねれない。起き上がり、枕を背もたれにしてグダッと座る。
何も考えずにずっと足だけを見る。23.5センチの足は、クラスの女子の中では平均的で横幅もそんなに広くない。多分平均的だ。扁平足というわけでも開張足というわけでもない。
普段陽に当たらない足は、まさに身体のオフィスワーカーだ。
なぜか足にとても深い嫉妬心を抱いていた。焼けないくせに、生活の大半で仕事をしている。
表に出ないくせに絶対に、必要とされている。縁の下の力持ち、それこそがベースなのだ。
足こそベースなのに、足腰が弱かったら自由に動けもしないのか…
「こんな足でごめんね」上半身たちに届かぬように、一人呟いた。




