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六話 足りないもの

 みんな誤解しているかもしれないが……。

 実の所、フロント企業の経営や株取引をシノギとする俺はインテリヤクザの部類に入る。

 趣味もゲームでインドア派だしな。


 ……まぁあまり賢くない自覚はあるが。

 それでもFEやスパロボのハードをクリアできるのだから、インテリと言っていいはずだ。

 多分。


 体格が良いし、喧嘩もそこそこ強いので、今みたいに他の組と揉めた舎弟から頼まれて荒事に駆り出される事もあるが……。

 まぁ、それでも俺はインテリだ。


 しかしながらどういうわけか、俺をステゴロ一筋のイケイケゴリゴリの武闘派だと思っている奴が多い。

 嘆かわしい事にな。

 目の前にいるこいつらも、その嘆かわしい野郎の一例だった。


 舎弟の義人に案内されて向かった工事現場の敷地内。

 そこにそいつらはいた。

 敷地内には、多くのガキがいた。

 この近辺のヤンキー連中……いや、バイクが停まっているから暴走族かな?

 まぁ、どっちでもいいんだが。


 そんな中、異質な雰囲気の男が二人。

 ヤンキー達から見守られる形で、敷地内の中央に立っていた。

 睨み合っていた二人の視線が、こちらに向けられる。


 義人はあるチームのケツ持ちをやっていたらしいのだが、そのチームが他のチームと揉めてその揉めたチームもケツ持ちのヤクザを出してきたのだという。


 その二人の内の一人が、俺を見て近寄ってきた。

 互いの息がかかるような位置まで来る。


 この時勢に近寄ってくるな。

 せめてマスクつけろ。


「俺は神天堂連合じんてんどうれんごう徳田とくだ のぞむいうもんや」


 神天堂連合……。

 関西の組織だったか。


 徳田は、赤いスカジャンを着た二十代ぐらいの若者だった。

 髪をオールバックにセットし、ぎらついた笑みを浮かべている。

 歳も若く、ヤクザというよりヤンキーに毛が生えたような風貌の男だ。


「あんた、振遊組ふりゆぐみの勇城さんやろ? 関東でも指折りの武闘派や、聞いとるで」


 俺は武闘派じゃねぇ。


「何だテメェ? 兄貴に気安く口利いてじゃねぇぞ!」


 言いながら、義人が徳田の襟首を掴む。

 徳田はその腕を掴むと、捻り上げて手を放させた。


「お前には話しとりゃせんやろが。すっこんどれや! またボコボコにすんぞ!」


 そう言って、義人の手を払う。


「上等じゃコラ!」


 それでも殴りかかろうとする義人を手で制して止める。


「……振遊の勇城さんか。俺も聞いた事があるなぁ」


 もう一人の男が言う。


「俺は古瀬河組こせがわぐみ内藤ないとう有夜ゆうやだ」


 内藤は体格の大きな男だった。

 身長は俺よりも高く、黒いシャツだけを着たその体は鍛え上げられてどこもかしこも張り詰めている。

 白いスラックスに巻かれた銀バックルのベルトはブランド物で、こちらはまだそれっぽい風貌だ。


「ずっと興味があったんだ、あんたの事」

「興味をもたれるような人間じゃねぇつもりなんだがな」


 内藤に言われ、俺は返す。


「俺も、うちの組じゃ武闘派だって言われててなぁ……。それでも、そう言われる度にあんたの名前が引き合いに出される。それにうんざりしてたんだ」

「奇遇やな。俺もや」


 内藤の言葉に、徳田が同調する。


「おまえやったら、勇城ともええ勝負するかもなぁ言われてなぁ……。誰も、俺ならあんたに勝てるとは一言も言わんかった。それが気に入らんのや。ええ機会や、俺の方が強いて証明したらぁ」

「俺も同じ気持ちだ」


 言うと、二人揃って俺に構えを取った。


「兄貴、俺も手伝います」


 義人が言う。


 え? 戦う流れなのか?


「いや、いい。俺が売られた喧嘩だ」


 くっそ面倒くせぇ奴らだ……。

 そう思いながら、俺も構えを取った。



 そして、俺はそいつらをボコボコに叩きのめした。


「な、なんや……アホみたいに強いやないか……」

「こ、これほどとは……」


 倒れ伏す二人。

 周囲のガキ共がざわめく。


「義人」

「……は、はい」


 ぼんやりとした様子でこちらを見ていた義人が、呼ばれて返事する。


「これで問題は解決したな?」

「はい! ありがとうございます!」


 義人は頭を下げた。


「まだや! 俺は、まだやれる……」

「俺だって……!」


 明らかに無理した様子で、徳田と内藤が立ち上がる。


「どう見てもボロ負けだろ、お前ら。やるにしてもまた今度だ」


 面倒だから、もうやりたくねぇが。

 とりあえずそう言って、二人に背を向けた。


「くそ……舐めやがって……。なら次だ。次に会った時は絶対に負けねぇからな!」

「おう! せいぜい首洗ってまっとけや! 勇城!」


 はいはい。

 また今度な。


わずらわせちまってすみません」


 帰り道、義人がそう言って頭を下げた。


「何であんな事になったんだ?」


 そんな義人に俺は訊ねた。


「俺はこの一帯で活動してるチームのケツ持ちしてたんですが……。それが他のチームと諍い起こしちまいまして。それで手打ちのために俺が動いた所、相手のチームもケツ持ちを出してきたんです」


 多分、内藤の事だろう。


「まだ、内藤の野郎は話が通じる奴で、その時は何とかなりそうだったんです。でも丁度その時になって、関西から遠征してきたチームが手当たり次第に喧嘩を吹っかけてくるようになりました」

「で、そっちとの仲裁にも顔を出したら、ケツ持ちがいたんだな?」


 徳田だ。


「はい。こっちはまったく話を聞きやがらない。仲裁も何も、ここいらも全部一つのチームになっちまえば、仲裁も必要ないとか暴論ほざきやがって……。結局やりあう事になって、負けちまったんです」

「ふぅん」

「……正直、それで兄貴分を呼ぶなんてかっこ悪い事なんですけどね。ケツ持ちの俺が負けちまった事で内藤もこっちを見下して話を聞かなくなって、俺がケツ持ってたチームも舐められるようになっちまったんです。俺が負けたせいで、あいつら肩身の狭い思いしてて」

「お前なりのケジメだったわけだな」

「そのつもりです」


 はぁ……。

 面倒事だなぁ。


 でも、舎弟の顔を立ててやる事を思えば、もう少しぐらい付き合ってやる気になったよ。


 しかし、三つ巴の勢力戦か……。


 まるで三国志だな。




 俺は棚を探して一本のゲームソフトを取り出すと、携帯ゲーム機へ挿入して起動した。


 これは三国志をモチーフにしたゲームである。


 しばらくすると、オープニングムービーが流れ始める。

 カッコイイ曲に合わせて、登場人物の死亡シーンが次々に流れていく。


 こいつ、死ぬんだ……。

 というネタバレをどんどん見せ付けられる内容であるが、三国志を知っている人間にとってどの人物が死ぬのかという事は周知の事実なので特に気にする必要はない。


 それだけでオープニングが作れるくらいに死亡シーンが多いゲームというのもどうなの? と思われるかもしれないが、三国志は多くの人が死ぬのである。

 モチーフにして作ればこうもなる。

 三国志という物語を比較的忠実に再現した結果なのだ。


 概ね史実や演義の通りにキャラクターが退場していく所が、このゲームの美点だと俺は思っている。


 ちなみに、このオープニングムービーはオープニング曲の歌手が作っているらしい。

 歌も上手く、オープニングまで作れるとはなんて多彩な才能だろう。


 さて、このゲームのジャンルはシミュレーションゲームである。

 三国志のシミュレーションといえば、武将の一人として三国志世界を生きる事を目的とした有名な物もあるが。

 これはそれと趣が違う。


 ここで言うシミュレーションゲームは、マス目の上でユニットを移動させて敵を倒す。

 言わば、軍人将棋のようなタイプである。


 早い話が、FEやスパロボと同じだ。


 シナリオは最初『蜀』の一つだけしかないが章ごとのステージをクリアしていくと『呉』『魏』の順番で増え、最終的に四つのルートを攻略する事になる。


 そういう形でプレイヤーは各勢力の物語を進めていく事になるのである。


 そしてその物語が、このゲーム最大の魅力と言っていい。


 これは三国志をかなり忠実に再現しているゲームである。

 とはいえまるっきり同じではない。

 時間の流れが早く、オリジナルの要素も多分に含まれている。

 そのオリジナルの要素と三国志《原作》の折り合いが絶妙であり、三国志を知る人間がプレイしても新鮮な気持ちでプレイする事ができるだろう。


 大きなオリジナル要素として挙げるなら、それは性別であろうか。

 本来男性である何人かの武将が女性になっている。


 世には武将を全員女性にした三国志もあり、そちらはギャルゲーなので武将の個性を付与した女性との恋愛をコンセプトにした結果だと思われる。

 しかしながらこのゲームはそれとも趣が違う。


 これはキャラクター同士の関係性にドラマを持たせる意図が強い。


 たとえば『呂蒙』。

 彼女の裏設定などが面白い。

 彼女はかつて、袁術への輿入れを嫌って自分の体に傷をつけたという過去がある。

 そして、三国志において実際に袁術と娘を政略結婚させようとした呂姓の武将が居る。

 本来なら、関係のない二人の武将であるが、『呂蒙』を女性にした事でそういったオリジナルの関係性を創出しているのである。


 こういう部分に面白みを覚えられるかは人によるだろうが、俺は……。


 はえー、なるほどなぁ(感嘆)。


 という感想を抱いた。


 そしてもう一つ、特筆すべきオリジナル要素は主人公の存在だろう。


 彼の個性を簡単に説明するならば、タイムスリップしてきたハーレム系主人公である。


 彼が三国志の世界へと放り込まれた経緯はこういうものである。


 主人公の『キョウ』は池へ釣りに行くと、不思議な銅雀台を発見する。

 それによって彼は、三国志の時代へと転移させられてしまうのだ。

 そして諸葛亮の弟子となり、乱世を戦い抜く事になるのだった。


 この『キョウ』という主人公が、このゲームを面白くする一番の存在だと俺は思う。

 特にその正体がわかった時、このゲームの根底が覆るような事実も同時に判明するため、大きな驚きを覚える事になるだろう。


 そして、ハーレム系の主人公としても優秀な部類だ。


 ハーレム系の主人公というのは描くのが難しく、場合によっては「はっ?」という苛立ちの感情を読み手へ抱かせる結果になる事もある。


 しかしながら、この『キョウ』という主人公は人当たりがよく、主人公としての活躍もしっかりと見せるので、モテる事に説得力があるように思える。

 というより、そもそもあらゆる女性陣にモテるのは、彼のモチーフとなった人物の逸話のせいかもしれない。

 俺もよく知らないが、そういう観点から個性を作り出している可能性はある。

 このシナリオを書いた人物は、そういう落とし込みが上手だ。

 続編でも名前が出てくるが、とんでもない紹介のされ方をしていたし、その可能性は高い。


 さて、肝心のシミュレーションパートだが、これに関してはかなりシンプルな物となっている。

 キャラクターにはそれぞれスキルがあって、それを考えての攻略は楽しいものである。

 しかし、基本的にキャラクターを動かして攻撃するという事しかできる事がない。


 続編では必殺技という概念が登場するが、一作目にそれはないためかなり地味である。

 しかしながら、諸葛亮を始めとした軍師達の策によって、本来なら勝てそうにない敵を相手に知恵を絞って勝利を得るという展開があり、自分の操作によってその策通りに事が進んだ時の気持ちよさは、他にない達成感がある。

 まぁ、なんだかんだ言って楽しい。


 しかし何度も言うようだが、それ以上に魅力的なのはシナリオパートだ。

 正直、シナリオのみのアドベンチャーゲームとして出しても十分だと思っている。


 各陣営の視点から描かれる三編は、笑いと息の詰まるような悲壮感が入り混じった物だ。

 いかめしい男武将も、可愛らしい女武将も、容赦なく乱世の荒波によってその命を削られていく。


 三国志の三国志らしい非情さを克明に、生々しく描いている。

 そこに、オリジナルの関係性を加味する事で人間関係はさらに複雑な物となり、それが新たな魅力を三国志という物語に付与している。


『張飛』と『陸遜』の関係などは、妙に心へ残っている。


 初めて顔を合わせた時の会話。

 そして夜空の下の語らい……。


 友人関係が生まれ、そしてすぐさまに別れが訪れる。

 女性同士の友情と乱世の非情さを体現したエピソードだ。


 しかし、そういったシリアスな内容ばかりではなく、躊躇なくアホなエピソードをぶち込んでいるのも本策の特徴である。

 それらを彩るキャラクター達も実に魅力的だ。


 出てくる度に色々な意味で余計な事ばかりする『馬謖』。


 自意識過剰で自信家な『黄忠』。


 とんでもないファッションの『徐晃』。


 ここぞという時に活躍し、声優の演技がクセになってくる『賈詡』。


 いつも鬱陶しいほど明るく軽い性格だが、それでも仲間のために一人となっても戦い続ける『朱桓』。


 控えめな性格ながら、我が身を顧みず常に国の事を考えて行動し続ける『陸遜』。

 特に彼女が俺に与えた衝撃は大きい。

 横山先生の漫画で『蜀』の魅力を知り、『蒼天』で『魏』の魅力を知り、そしてこのゲームで俺は『呉』の魅力を知ったと言ってもいい。

 今まで両手に棍棒を持った変な帽子のキャラクターとしか認識していなかった『陸遜』という人物の印象が、俺の中で完全に変わってしまった。


 あと、多分『于吉』は目が見えていたら『周秦』の見た目がどストライクだったと思われる。


 そんなくせっけのあるキャラクターの中でも一番好きなのは、妙に可愛らしく好感の持てる『魏延』ちゃんだ。

 それは見た目だけの話ではなく、責任感の強さや思い悩み続ける人間性の尊さに対しての感想だ。

 裏切ったり、南蛮人よりも南蛮人していたり、今まで碌な印象を持っていなかったが、このゲームで少しだけ『魏延』が好きになった。

『馬岱』とも特に仲が悪いという事もなかったし(嫌いとは言ってたけど)。


 そして、そんな個性的なキャラクター達が置かれたのは乱世である。

 多くの悲劇が彼らを襲い、プレイヤーもまたそれを体験する事になる。

 陰鬱とした展開が続き、序盤のコミカルさがあった分その落差は大きなものとなる。


 しかし、悲劇だけで終わらないのがこのゲームである。


 三つの国の物語を知ったプレイヤーは、最後に『雷』の物語をプレイする事になるのだ。


 この『雷』編は、今までの鬱積を晴らすかのような話だ。

 これまでにあった悲劇、それを覆していく様はまさに痛快。

 もう、笑いと爽快感しかない。

 この楽しさを味わうために、何度もプレイしてしまうほどだ。


 主人公のキョウは、数多くの悲劇。

 そして『劉備』『曹操』の二人、その違いを正しく知る事で乱世を正しく認識する。


 乱世とはいったいなんなのか?

 時代に選ばれるとはどういう事なのか?


 その答えを導き出した時、彼は自分に『覚悟』が足りなかった事に気付くのである。

 彼は『覚悟』を決め、乱世へ望むようになる。


 そして『覚悟』を決めた彼はスーパーチート軍師へと変貌する。

 それはシナリオ間での活躍も含め、ユニットとしての強さも指しての事である。


 私の覚悟を知るがいい!(相手は死ぬ)


 ぶっちゃけた話、そんな彼の活躍とモテモテぶりを楽しむのが『雷』編なのだ。

 主人公を巡って、『周瑜』と『陸遜』が言い争う場面では、『陸遜』が結構な暴言を言い放つ場面があり。

 立場が上の人間でも物怖じせずに意見を述べるという、『呉』編で見せた気骨の強さがうかがえて、こんな所でもそれが発揮されるのか思うと笑ってしまう。

 そして本来ならば交わる事の無い『馬謖』と『朱桓』が合わさり、状況がこの上なく変な方向に向かうのも面白い。


 さて、話は変わるが、このゲームには続編が存在する。

 こっちは三国志ではないが、一作目をプレイした人間にとっては興味深い作品になっている。

 というのも一作目のキャラクターが出てくるのである。

 謎のベールで覆われた彼の事を知りたければ、プレイするべきだろう。


 シナリオは全編、徹頭徹尾に復讐をテーマにした内容である。

 それも一人の人間が一対象にのみ復讐するというものでなく、さまざまな人間の復讐が多角的に絡み合い、ストーリーを織り成している。

 復讐に始まり、復讐に終わる話である。

 そのシナリオを生み出した手腕には舌を巻く。

 ただ、鬱々とした内容はそのままに、爽快感は一作目ほど強くない。


『鈍色の花束』の意味を知ると切なくなる。


 ちなみに俺はこのゲームである人物の事を知って好きになり、横山先生の『史記』を二巻だけ持っている。


 ついでに言うと、さらに続編が出る予定らしい。

 朱桓……ではなく、朱紅の章。


 楽しみである。


 ……何なら、ゲームじゃなくて小説で出してくれてもいい。




 ケツ持ちを手伝った日から一週間ほど経ち、俺は工事現場の敷地内に呼び出された。

 どういうわけか、義人経由じゃなく俺へ直接連絡が来た。


 組の名前を背負った二人に呼び出されれば面子もあるので断れず、一人で向かうと案の定あの二人がいた。

 周囲には、前と同じで不良少年達が人垣を作っている。


「何の用だよ」

「わかるやろ」


 徳田が答える。


「決着、つけにきたんだよ」


 内藤も同調する。


 しかたねぇなぁ……。




 徳田、内藤の二人との喧嘩。

 その最中、俺は二人の絶え間ない攻撃に追い詰められた。


 気付けば不良少年達のいる端の方まで追いやられ……。


 手近にあったバイクを持ち上げて、徳田を殴りつけた。


「ぐはぁっ!」

「俺のバイクっ!」


 二つの悲鳴が上がる。


 すまん。

 あとで弁償する。


 徳田は直撃を受けて地面に倒れたが、内藤はバイク攻撃を避けていた。


 もう一撃、バイクで内藤を狙うが、内藤はそれを受け止める。

 互いにバイクを掴み、押し合う。


「ふん!」

「ぬんっ!」


 一押し、力を込めると内藤が膝を折る。


「くおおっ! がはぁっ!」


 内藤は声を上げて力を込めたが、あえなく力負けしてバイクの下敷きになった。


 挑んできた二人は倒れ、立っているのは俺一人。

 客観的に見ても間違いなく俺の勝ちだ。


「くっそ……!」

「何で勝たれへんねん……!」


 二人とも、呻くように言う。


「テメェらには足りないもんがあるんだよ」

「なんだと?」

「なんやと?」


 そうさ、足りないんだ。


「『覚悟』だ。お前らには、『覚悟』が足りないんだ!」


 俺は強い口調で告げる。


「……いや、多分筋肉やろ」


 徳田は、バイクの下敷きになった内藤へ目を向けながら呟く。


「覚悟だぁ!」


 俺は自分の意見をごり押した。

 最初は、三勢力によるガチ抗争のシリアスな話になる予定でしたが、もうちょっと軽い話にしたいな、と思ったので今の形になりました。

 その結果、オチが強引になりました。

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