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アイドルとマネージャー  作者: 伊達 虎浩
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第3章 雪物語 その壱…⑤

 

 恵理との電話が終わる頃、雪が丁度やってきた。


「……アイツ。相変わらずだな」


 車内の前方、信号待ちしている雪の姿を見て、修二はボソリとそんな事をボヤいてしまう。


 こちらに気づいていたのか、手を振っている雪。


 さて、どうしたものか…。


 売れている売れていないにしろ、雪が芸能人である事には間違いないのだから、もう少し自覚を持って欲しいものである。


 はぁ…と、ため息を吐きながら、修二はプイっと、顔を逸らすのであった。


 ーーーーーーーーーーーーーー


 ガチャ。バン!!と、助手席に乗りこむ雪。


 助手席のドアから鳴った音。


 ドス!と、聞こえてくる助手席のシート。


 んだよと思いながらチラッと雪を見ると、唇を尖らせているではないか。


 やれやれ…と、修二は思った。


「…おい。怒ってる事をもう少し隠せよ」


「ふ、ふーんだ。修二さんが無視したからじゃないですか」


「いやいや、アレはだな…まあ、待て」


 言いたい事をグッとのみこんで、パーキング代を支払う為にと、車から降りる修二。


 会社の経費なので、領収書ボタンを忘れないよう注意しながらお金を投入する。


 さて、どう言うべきだろうか。


 そんな事を修二は考えていた。


 ーーーーーーーーーーーー


 再び車に乗り込む修二。


「…で?何で無視したんですか?」


 と、エンジンキーを回す前に、雪から話しかけられた。


 キュルキュルと、エンジンキーを回しながら修二は口を開く。


「あのなぁ…雪。芸能人としての自覚をもう少し持って行動しろよ」


「どういう意味ですか?」


 ハンドルを右にきりながら、修二は答える。


「どうって、そりゃあ、あまり目立たないとか、色々あるだろ?」


 信号待ちをしている人が急に手を振れば、それだけで何事かと、通行人の目がいく事になるだろう。


 目を向けたら何と神姫雪がいた。


 な?騒ぎになるかもしれないだろ?


「目立たないようにって、この格好の事ですか?」


「……それもあるな」


「で、でも、でも、でも!()()私服で来たら、修二さん笑うじゃないですか!!」


「バッ、そりゃあ…お前、私服が変だからだろ」


 変じゃなければ笑う事はない。


 そうだろ?


「芸能人である私がですよ?変な格好で外を出歩いてもいいんですか?」


 ふん。と、両腕を組みながら雪はそっぽを向く。


「いや、芸能人としてまず、変な格好をしない事を心掛けろよ」


 芸能人の服とは、基本的には私服である。


 基本的にはと言ったのは、スタイリストを雇った場合は違うからである。


 スタイリストとは、芸能人が着る服をコーディネートしてくれる人の事である。


 季節や時期により、私服は常に変わっていく。


 春なら桜を連想させるピンク色。


 夏なら海を連想させる青色。


 秋なら紅葉を連想させる赤っぽい色。


 冬なら雪を連想させる白色。


 ちなみに雨の日のロケ時は、白い服はNGとされている。


 雨に濡れたら下着が透けちゃうからな。


 とまぁ、こんな感じのコーディネートが理想とされていて、それぞれにあった服を何着か選んで現場まで持って来てくれるのがスタイリストの仕事である。


 例えば、上が赤いポロシャツで、下は黒のスカート。靴を赤いパンプスにして、中央のつま先部分に黒い花をつければ、赤と黒を基調としたコーディネートの出来上がりというわけだ。


 これの逆で、上が黒のポロシャツに、下は赤のスカート。靴を黒のパンプスにして、中央のつま先部分に赤い花をつければ、先ほどとは違うコーディネートの出来上がりである。


 これで2着のコーディネートが完成し、この2着のどちらを着るかを雇った芸能人が選ぶ。


 勿論、気に入らなければ、やり直しをお願いする事も出来るし、気に入ればその服一式を、購入する事も可能となっている。


 ちなみに雪の今日の格好は、以前雇ったスタイリストさんが選んだ服だ。


 それを雪が気に入り、一式購入したというわけであり、私の私服と雪が言ったのは、雪自身のコーディネートだったなら…という意味である。


「いいか?雪。今後は雑誌の表紙とかテレビとかでの活動も増えてくる事になるかもしれない。いや、俺が()()()()()()()さ」


「………え?」


 修二の言葉に、雪は驚きの声をあげた。


「え?じゃない。お前を見て憧れるJCやJK、もしかしたらJSだっているだろうよ。そうすれば、おのずと仕事だって安定してくる事になる」


 JCは女子中学生、JKは女子高生、JSは女子小学生の略である。女子大生はJDなのかどうか、短大生ならTDなのかどうか、俺は知らない。


 まぁ、それは置いといてだ。


 ファッションでもいい、メイクでもいい。


 カリスマと呼ばれる人間になれば、雑誌やイベントに引っ張りダコになること間違いなしなのだ。


 企業がスポンサーにつく事だってあるし、その企業のCM出演のオファーがくる事になるかもしれない。


 化粧は女性の武器だ!と、聞いた事はないだろうか?


 芸能界では、その通りだとされている。


 実際、モノマネメイクでブレイクした芸能人だっているし、美のカリスマと呼ばれる人が出版したメイク本は、10万部を売り上げるほどの人気があったり、化粧品をプロデュースすれば、たちまち売り切れるほど人気商品へとなるのだ。


 女性向けのファッション誌やメイク本などの雑誌は、男性向けファッション誌に比べると、圧倒的に多いし、売り上げも全く違う。


 この事から、いかに世の中の女性が美に対する意識が高いかが分かる事だろう。


 つまり、憧れの存在、好感度が高い女性ほど、この芸能界で長く生きていけるというわけだ。


 その辺の意識をどうにかして、雪にも持っていてほしいものなのだが…ん?


「……しゅ、修二さん!!」


 赤信号になった所で、修二はブレーキを踏みながら、な、何だ?と、口を開いた。


 左腕を急にギュッと掴んできた雪は、ビクビクしながらこんな事を言ってきた。


「わ、私!!み、水着とか裸とか、む、無理ですよ!!謝りますから、どうか、どうか、売らないで下さい!!!」


「………はぁ」


 頭痛を覚える修二であった。


 ーーーーーーーーーーーーーー


 車を走らせること数時間後。


「あ!修二さん。そこ右です」


 雪のナビに従い、修二はハンドルを右にきる。


「修二さん!見て下さいよ!ほら!あそこあそこ」


「運転中に見れるか!!で?何があるんだよ?」


「幸せのパンケーキですって」


「へぇ〜。ここにも出来たんだな」


「食べたいなぁー」


「イベントが成功したらな」


「やった♡」


 雪が駆け出しの頃、修二がマネージャーとして奮起していた頃、二人はこんな話しをしながら、常に芸能界を戦っていたのであった。

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