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アイドルとマネージャー  作者: 伊達 虎浩
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第3章 特訓…その壱

 

 修二とめぐみが喫茶店から出る丁度その頃、遥たちはというと、カラオケ屋に来ていた。


「住民票。早く出来て良かったね」


「そうね。にしても、平日なのに何であんなに人が多いのかしら」


「ふふふ。周りの人もそう思ってるわよ」


 逆もしかりということである。


「ク、ク、ク。我の美声に酔いしれるが良いわ」


「……………上手いの?」


「ふっ。愚問じゃな」


 という感じで喋りながら、遥たちは受け付けを済ませようとする。


 フリータイムにドリンクバー。


 朝から夕方までで1000円は、格安である。


「DAMでいいか?ですって」


 カラオケ屋の受け付けで、必ず聞かれる質問であった。


 無論、部屋がたくさん空いているか、人数が多い少ないによって、質問されるかされないかが変わる。


 というのも、カラオケ屋は部屋ごとに広さがあり、その部屋ごとに機種が違っているからである。


 DAMでいいか?と言われた場合、DAMの部屋が一番人数に適した部屋だという事だ。


 逆に、JOYで。と言うと、2〜3人部屋になりますが良いですか?と、言われてしまう事がある。


 言われるなら良いが、言われなかった時の何とも言えない気持ち…分かるだろうか。


「違い何てあるの?」


 DAMでいいか?という質問に、遥が質問する。


 勿論、機種ごとに違いはある。


 PVは少ないが、曲数が多い機種であったり、曲数は少ないが、PVが多かったりである。


 店員さんに詳しく説明される2人。


 あゆみやひかり、ゆずは芸能人である為、少し離れた所にいる。


 と言っても、ひかりはいつものゴスロリ服にツインテールと目立っており、ゆずはゆずでその身長からか、可愛さからか、大変目立っていた。


 無論、あゆみは声優なので顔バレをする心配はないのだが、芸能人という事に変わりはない為、念のためである。


「PVが多い部屋で」


「かしこまりました。では、107号室になります」


 そんなやりとりをしながら、遥たちは部屋へと向かって行くのであった。


 ーーーーーーーー


 カラオケ部屋。


 中に入ると、大きなテレビがあり、テレビ台の下にはリモコンやら本やらが置いてある。


 テーブルがあり、硬いソファーや丸い椅子があり、壁にはハンガーがあってと、カラオケ屋に行った事がある人なら誰もが想像できる部屋であった。


「………マラカス?」


「タンバリンもあるよ」


 テーブルの上に置いてある楽器を手に取る二人。


「カラオケなんて久しぶりね」


「そうね。結衣と行ったきりだから、1年半ぶりぐらいかしら」


 1年半ぶり。


 神姫雪が亡くなるちょっと前の話しである。


 勿論、ゆずの発言に悪気はない。


 しかし、1年前というワードに、遥と結衣、ひかりは、少しだけ苦い顔をした。


 遥が神姫雪の妹だと知っているのは、結衣だけである。


 内緒にするような話しではないが、結衣の口から喋るような話しでもない為、遥の口から出るまで待とう。と、結衣は思っていた。


 神姫雪の悪口が出たらアレだが、悪口を言うような人間はこの中にはいない。


 また、神姫雪という女性は、女性の憧れであって悪口を言われるような女性でもなかった。


 ひかりは、神姫雪との面識が直接ある。


 というより、共演した事がある。


 その為、ひかり自身も思う事があった。


 遥は遥で、妹だと言えずにいる。


 仲良くなった皆んなから、同情をかいたくない。そんな思いから言えずにいたのであった。


「ん?どうしたのよ?」


 三人の元気が少しなくなった気がしたゆずは、そう尋ねる。


「ほ、ほら、アレよ。ナンパとか来たら面倒くさいなぁって」


「大丈夫じゃない?平日だし、昼間だし」


 平日で、昼間。


 学生なら学校があり、社会人なら仕事である。


 夜に比べれば少しは安心、安全。という意味だ。


「ク、ク、ク。我の魔力に引き寄せられるか愚民どもよ…」


 余談だが、結衣以外の四人はナンパをされた事がない。


「た、確かに、でもほら、アレだよね?」


「アレ?」


「アレだよ!ほら、アレ」


 当然、遥はどうナンパしてくるのかが分からない為、こうなってしまう。


「………アレだね」


 それに便乗するあゆみ。


「ク、ク、ク。いやはや、仕方あるまい」


 良く分からないひかり。


 チラッとゆずを見ると、料理のメニュー表を眺めており、会話に入る素ぶりを見せなかった。


 地雷か何か踏んだのか?と、思う結衣であったが、これ以上は踏み込んではいけない気がした為、ナンパの話しを終わらせようと動く。


「ゆず」


「何?」


「ここに座って」


「は?なんでよ」


 ソファーではなく、丸い椅子の上にゆずを座らせようとする結衣。


 訳が分からない。が、断る理由もない。


 大好きな親友の頼みでもある為、ゆずはそれに従った。


「で、私はゆずの隣っと。ゆず。帽子を被りなさい」


 部屋の扉の窓ガラスからは、ゆずの姿が見えてしまう為、結衣は帽子を着用するよう促した。


 自分は芸能人だ。


 ゆずは疑う事なく、帽子を被る。


「じやぁ私たちは、ソファーに座ろうか」


 と、遥はひかりとあゆみに提案した。


「さて、歌う前にまずはドリンクを注ぎに行きましょうか」


「あ、私手伝うよ」


「そう?助かるわ。なら、他の三人で適当に頼んどいてね」


 芸能人である三人に料理のオーダーを任せ、結衣と遥はドリンクを注ぎに部屋を後にした。


 ーーーーーーーーーー


 ロビーにて。


「ねぇ、結衣ちゃん」


 ドリンクバーの前で、遥は結衣に質問をする。


「何かしら?」


 グラスに氷を入れながら、結衣は続きを促した。


「ゆずちゃんは芸能人だし、外から見えない方がいいんじゃないかな?」


 部屋の中を覗く不届きものでなくても、カラオケ屋の窓ガラスは中の様子が見えるようになっている。


 部屋の番号を確認していたら、中の人と目があってしまい、睨まれるなんて事もあるのだ。


 女性の皆さん。


 部屋の扉を見ているのは、ナンパが目的でない時だってあるんですよ…。


「ふふふ。まぁ、直ぐに分かるわよ」


 グラスにジュースを注ぎ、結衣は部屋へと戻って行く。


 どういう意味だろう?と、遥は思いながら部屋へと戻った。


 ーーーーーーーー


 部屋の前まで戻ると、扉の前で結衣が、クイ、クイ、と、指を向けるので、何かなぁっと、遥は指の先に目を向ける。


 結衣が向けた指の先は扉であった。


「な、なるほど…流石は結衣ちゃん…」


 いや、流石はゆずちゃんの方が正しいだろうか。


 遥の視線の先、扉の窓ガラスからは、頬を赤くしたゆずの姿が見えた。


 ゆずはメニュー表に目を向けており、丸い椅子に座りながら両足をブラブラと揺らしている。


 まるで、小さな子供がレストランではしゃいでいるような姿に見えてしまう。


 これなら、部屋を覗く不届きものも、ちっ、子連れかよ…と、なるに違いない。


 まさか自分が、ナンパ撃退の為に使われている何て思いもせず、ゆずはメニュー表をキラキラした瞳で見つめるのであった。


 ーーーーーーーーーー


 部屋の中。


「さて、ドリンクや料理も揃った事だし、まずは乾杯からしましょうか」


 と、結衣が提案すると、スッとひかりが立ち上がった。


「どうやら我のターンらしいのぉ」


「タ、ターン?」


「………出番って意味じゃない?」


「あっ、なるほど」


「ク、ク、ク。今宵は我の為だけに集結してくれた事に感謝する。って、こ、こら、な、何をするんじゃ!?」


「今宵でもなければ、アンタの為だけに集まったわけじゃないわよ」


 グイっと、ひかりからマイクを奪ったゆずは、ホイっと、そのマイクを結衣に渡す。


「ほら、結衣。リーダーらしくね」


 彼女たちはアイドルグループであり、そのグループのリーダーは結衣である。


 曲もなければ、名前すらないアイドルグループではあるが、今日この日をもって、小さな小さな一歩を踏み出したのは確かであった。


「うん。じゃぁ皆んな、カンパーイ」


『カンパーイ』


 全員でグラスをあげる。


 テーブルに並ぶのはフライドポテトや唐揚げ、ピザなど、全員がつまめるような料理が並ぶ。


「良し!歌うよーー!」


『おーー!!』


 歌うのではなく練習では?と、修二がいたらツッコンだだろう。


 残念ながら五人とも、目的を忘れていた。


 一方、修二はというと。


「た、頼むから…勘弁してくれ…」


 何故か、泣きそうになっていた。

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