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アイドルとマネージャー  作者: 伊達 虎浩
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第2章 重大発表

 

 遥が倒れた!という声が聞こえた為、修二はあゆみとの雑談を終わらせ、結衣達の元に駆けつけた。


「何があった?」


 状況がわからない事には、対処の仕様がない。

 お酒を飲んでいた事もあり、最悪の場合、救急車を手配する必要も考えられる。修二はとりあえず、情報収集をする事にした。


「分からないわよ!急に倒れたから…」


「ゆずが歌ったら、倒れてしもうたのじゃ」


「わ、私!?」


「待て。お前等…少し落ちつけ」


 目の前で人が倒れたのだ。興奮してしまうのも、無理もない話しである。しかし、ゆずが歌ったら倒れたか…ジャイアンじゃあるまいし…っていうより、歌って何だよ?ん?


 何かに気付く修二。


 何かとは、遥がぶつぶつ呟いている事であり、何を言っているのか?と、そっと耳を近づけてみた。


「…ア、アミちゃんが。アミちゃんが。私に、私にありがとうって言った」


 はぁ…ったく。心配させやがって。


「……どうやら大丈夫みたいだ。とりあえず向こうに遥を運ぶから、悪いんだが、ここは任せた」


 遥がこぼした梅酒やら紙コップやらが、散乱してしまっていた為、結衣達に任せる事にした修二は、ヒョイっと、お姫様抱っこをして、その場を後にした。


 ーーーーーーーー


 遥を床に寝かせ、自分が着ていたジャケットを被せる修二。


 まさかあゆみが、あのアミの声を担当しているとは、夢にも思わ……あれ?というより、知らないのか?


 神ゲーだと豪語しているぐらいなのだから、アミのCVが誰かという事ぐらい、遥が知らないハズがないのではないだろうか?


 そう考えた修二は携帯を取り出し、グーグルさんに聞く事にした。


「妹……関係……よねっと、どれどれ」


 検索すると、アミ……CV 鮎川愛美と、書かれている。


「なるほど、そういう事か」


 芸名と、呼ばれるものがある。


 本名は?と聞かれたら、相川あゆみと名乗り、芸名は?と聞かれたら、鮎川愛美と名乗るみたいな事である。


 何故、芸名を使うのかなどは、遥と二人っきりの時に話すとしよう。


「一字違いにしただけだな」


 あイかわ あユみ。

 あユかわ あイみ。


 後は、漢字に変換し、相川あゆみと鮎川愛美が生まれるって寸法さ!な?小さな探偵くん…っと、そんな場合ではないか。


「しかし、どうするか」


 悩む修二。


 遥は神と崇める程、このゲームが大好きである。

 本当であれば、実は担当声優はあゆみだぞ!と、教えてやりたい所なのだが、あゆみとの約束がある。


 かと言ってあゆみに、実は遥がお前の作品の女の子の大ファンだ!などと、言っていいものなのかが分からない。もしかしたら、遥とあゆみの間に、亀裂が生じてしまうのではないだろうか?


 しばらくは、様子をみるか。


 修二は、そう決意した。


 ーーーーーー


 遥が目を覚ますと、そこには、恵理や千尋の姿があった。


「お?やっと起きたわね」


 上体を起こした遥に、千尋が声をかけてきた。


「は、遥!!心配したじゃない!!」


「ご、ごめんなさい」


 結衣からお叱りを受け、素直に謝罪をする遥。


「まぁまぁ。せっかくの場なんだから…な?」


 祝いの場であるのだから、大目に見てくれと告げる恵理。


「お、おい、コレ!魔王じゃねぇか!?」


「おぉ!アキラ!!我と同じ感想ではないか!流石は我が友じゃ」


「コラ!ゴン太!さっき私がビール飲んでいたのを見て、鼻で笑ったでしょ!」


「……ウィスキー……美味しい」



 遠くでは、修二が何やら驚き、周りにいるひかりやゆず、あゆみの騒いでいる姿が目に映る。


 これが…芸能事務所。


 かつて、大好きな姉が見た光景なのだろうか?


 他人からすれば、騒がしいだけの光景なのかもしれない。


 しかし、当事者になると、こうも違うのだろうか?


 暖かい、温もりが詰まった優しい世界が、そこにはあった。


 思わず泣き出したい気持ちを、グッとこらえる遥。先ほど恵理が言ったように、ここは祝いの場だ。泣いて、空気が悪くなったらどうする。


「私、梅酒ロック飲みたぁぁい!」


 元気よく、あの輪に加わろう。


 そう思った遥は笑顔を浮かべ、元気良く、修二達の元へと向かうのであった。


 ーーーーーー


 その後、少しの雑談を交わし、そろそろお開きとなる所で、恵理が右手を挙げ、スッと皆んなの前に立った。


 それが合図だったのか、千尋と結衣が、恵理の隣に並ぶ。


 何か始まるのかな?と、思った遥。


 そういう事か。と、悟る修二。


 ん?何?大丈夫なの?と、親友の結衣に目を向けるゆず。


 ポーカーフェイスのままのあゆみ。


 余興か?お?踊るのか?と、一人だけ違う感想のひかり。


 それぞれの思いはバラバラであったが、恵理の発言に対し、驚く気持ちは同じであった。


「さて、今日という日を迎えられた事を心から嬉しく思っている。そんな中、良いニュースを皆んなに報告できる事が、私個人としてではなく、社長である千尋共々嬉しく思う」


 流石は恵理さん。と、修二は思った。良いニュースと聞いたら、聞き逃さないぞ!という心理が、働くものである。


 恵理と千尋は、目線を交わしている。


 恐らく、私から言うか?えぇ。お願い。みたいな会話をしているのだろう。


「まずは、人事異動について話そうか」


「人事異動?」


「あぁそうだ。ゆず君にとっても他の者にとっても、大切な話しだから、良く聞きたまえ」


 恵理がそう言うと、結衣が一歩前に出てきた。


「橋本結衣君は今日限りで、秘書を辞める事になった」


「は、はあ??」


 やはりというべきか、声を荒げたのはゆずである。当然、そんなゆずを、優しく注意する恵理さん。


「ゆず君。落ち付きたまえ」


「こ、これが、落ちついていられるもんですか!?」


「ば、馬鹿!?やめろ」


 怒り奮闘といった感じのゆずを、修二が止めに入った。


「ふふふ。ゆず君。良いニュースだと言っただろ?」


「だ・か・ら!これのどこが良いニュースだって…は、離しなさい!!」


「いいから落ちつけ!続きがあんだよ」


 今にも、殴りかかっていきそうな、そんな印象を受けた修二は思わず、口が滑ってしまう。


 今の言い分では、自分は全てを理解している者だ。と、そうとらえられても仕方がない言い分である。


 最も、修二が理解している者だとしても、特に問題がない話しではあるが。


「結衣君には、今日から君たちと同じように、タレントとして活動してもらう事になった。要は、君たちの仲間が増えたという事だよ」


 ゆずの口から、へ?という、間の抜けたような声が出たのを、近くにいた修二だけが聞いた。


「ふふふ。君の為にあれだけ本気で怒ってくれるとは…友人とはいいものだな」


「…はい」


 小声でそう話した後、結衣が恵理の前(丁度、中央の所)にやって来て、短いお辞儀をする。


「今日からタレントとして頑張ります。皆んなの後輩になるから、結衣って気軽に呼んで下さい。宜しくお願いします」


 顔を上げ、そう言った後、再びお辞儀をする結衣に、皆んなから拍手が送られる。


「ふむ。秘書はどうするのじゃ?」


 結衣が抜けた為、秘書はこれからどうするのか?という疑問は、当然である。


「私が兼任する事になった…ふふふ。要はパワーアップしたのさ」


「き、貴様!?ま、まさか…くっ!?左手が疼く」


「馬鹿なの?」


「…おい!?」


 師弟関係のような、親子関係のような、そんなひかりと恵理さんの心温まる会話に、何ちゅう感想を抱くんだよゆず!?


 そんな事を心の中でツッコンでいると、千尋が手を挙げ、スッと一歩前に出る。


 結衣と入れ替わるように、中央にやって来た千尋は、二つほど、重大発表があります!と、言った。


 息を呑む5人。


 5人とは、遥、ひかり、ゆず、結衣、あゆみである。


 そして修二はというと…固まってしまっていた。


 何故なら、重大発表が二つあると、千尋は言った。


 一つ目は、結衣の事。二つ目は、アイドルを目指す事だろうと思っていたが、それならここで、二つあるという発言はおかしい。


「はい。一つ目の発表です。おほん。今日から貴女達5人で、武道館を目指してもらいます」


『………は?』


 武道館?と、全員が思ったのは言うまでもない。


「….つまりはだね、ひかり、結衣君、ゆず君、あゆみ君、遥君の5人で、アイドルをやってもらうコトになってだな、社長の千尋君が言っているのは、夢は武道館!って事だ」


『ア、アイドル???』


『ぶ、武道館???』


「はい。二つ目の発表です。貴女達は4月から、とある場所に住んでもらいます」


『は?はぁぁぁあ???』


「安心したまえ。何も無人島に行けとは言っていない。君達には一緒に生活をしてもらい、チームワークを高めてもらいたい」


「いきなり急に…そんな事…」


「まぁ、落ち付けよ。流石に、ずっと暮らす訳じゃないんだからよ」


 ざわざわ…とするひかり達を、宥める修二。


 まぁ、いきなりアイドルだの、武道館だの、挙句には引っ越せって…そりゃぁ、な?怒るよな?


「人事みたいに言うが、修二君。君も一緒に暮らすんだぞ?」


「……!?ちょ、ちょっと待って下さいよ!!」


 何を言っているのか、全くもって分からない。


「明日、面談を行うから、詳しい話しはその時にね」


 以上。解散!!という恵理の声だけが、レッスンスタジオに響き渡るのであった。

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