第2章 パーティーにて…遥編
君達の歓迎会も兼ねて、パーティーでもどうだろうかね?とは、恵理からの提案であった。
勿論、私に異論はない。
タダ酒だからとかじゃなくて単純に、君達の歓迎会、つまり、主役だからという理由でだ。
何故か結衣ちゃんだけ、ここに残っていくようにって言ってたけど、何かあるのかしら?
そんな事を考えていると、隣から声をかけられた。
「ク、ク、ク。今宵は、この血を頂くとしよう」
「え!?ひ、ひかりちゃん、赤ワインが飲めるの!?す、凄い」
「……!?わ、我クラスになれば、ぞぞ、造作もない事じゃ」
「…造作?」
飲むのに必要なのかな?と、考えていた時、後ろから別の人に声をかけられた。
「けど、ワイングラスなんてあるのかしら?」
「………何も無い部屋だった」
声をかけてきたのは、ゆずちゃんとあゆみちゃんであり、ゆずちゃんの疑問に、あゆみちゃんが答えている。
今の会話から分かるかもしれないけど、一応説明しておくと、現在私たちは、買い物に来ています。
「遥?レッスンスタジオにはあるの?っていうよりアンタ、一人で何ぶつぶつ言っているのよ」
「ごめんごめん。けど、私も行った事がないよ?」
「……ひかりは?」
「無かった気がするのぉ…いやぁ残念じゃ。飲みたかったんじゃが…いやはや、仕方あるまい」
そっと赤ワインを戻すひかりちゃん。
ホッとしているように見えるのは、気の所為だよね?とりあえず聞いてみよって、う、嘘だ!!
「ゆ、ゆずちゃん!?」
「ん?何よ?ていうか、何をそんなに慌てているのよ?」
「だ、駄目だよ!?ゆずちゃんがそんなの飲んじゃ!駄目!」
「駄目ってあのね…」
「未成年じゃないっていうのは、知っているから!そ、そうじゃなくて」
こんな可愛い天使がだよ?こんな悪魔みたいな名前のお酒を飲むなんて…駄目!そう思わない?
あゆみちゃんは、ゆずちゃんが手にしたものを、マジマジと見つめた。
「お、おぉ!!な、何じゃそれは!?」
騒げば周りにいる人も、当然気付く。
何を騒いでいるのかとやってきたひかりちゃんは、目を輝かせ、興奮しているようだ。
「……魔王?」
「そういうお酒らしいわ…って、私が飲むわけじゃ、な、ないんだから、離れなさい」
ガシッと腕に、しがみついてきた遥とひかりに注意をするゆず。
ちなみに魔王とは、焼酎の銘柄の事である。
「なぁ〜んだ、良かった。ん?ひかりちゃん?」
「わ、我も飲もうではないか!!」
「アンタね…言っとくけどこのお酒って、恵理からのオーダーよ」
どうやらゆずちゃんではなく、恵理ちゃんが飲む為のお酒のようだ。
「恵理ちゃんが飲むなら、絵になるねぇ」
脳裏に浮かぶのは、浴衣姿の恵理ちゃん。
窓際に腰掛け、月を見ながら飲む姿。
「そう?恵理なら、こっちじゃない?」
サッと差し出されたのは、シャンパンであった。
脳裏に浮かぶのは、バスローブ姿の恵理ちゃん。
窓際に腰掛け、月を見ながら飲む姿。
「……美人」
そう、美人は何でも似合うというお話しです。
何で芸能人じゃないのか…ホント不思議です。
梅酒も似合う酎ハイも似合うなどと、恵理ちゃんで盛りがっていた時であった。
「た、大変じゃ!?な、波平がおるぞ!」
興奮しながら、報告してくるひかりちゃん。
急にそんな事を言われた私達が、波平?と思うのは当然である。
ひかりちゃんに案内された私達は、紙パックコーナーに移動してきた。紙パックコーナーには、紙パックに入ったお酒などが販売されている。
梅酒とか、カクテルの原液とかね。
「ほ、ほれ!見るがよい!!」
「これ、波平なの?カトちゃんじゃない?」
「……どっちも違う」
ひかりちゃんが指を向けた紙パックには、一家の大黒柱のお父さんが、あぐらをかいている絵が載っていて、隣には一升瓶が置いてある。
「あっ!?おやっとさぁじゃない!!」
「遥?知ってるの?」
「うん。鹿児島市民なら、皆んな知ってるんじゃないかな?焼酎だよ」
「……おやっとさぁ……どういう意味?」
「お疲れ様。ご苦労様っていう意味だよ」
鹿児島の方言の一つである。
「おぉ!?もしかして、鹿児島出身なのか?」
「うん。そうだよ!」
「……食べ物……美味しい」
そうなんです!黒豚とか地鶏の炭火焼などなど、最高だから是非食べてみてね♡
「そろそろ時間ね。私が買ってきてあげるから、そこで待ってなさい」
「はぁ〜い♡」
レジに向かうゆずちゃんに手を振り、しばらくひかりちゃんと雑談していると、あゆみちゃんがぼそりと呟いた。
「……問題発生」
「え?な、何かあったの!?」
驚く私達。スッとあゆみちゃんは、レジの方に指を向けた。そこには何故か、店長さんらしき人に怒られているゆずちゃんの姿があり、私達は救助に向かうのだった。
ーーーーーーーー
レッスンスタジオ。
パーティーが始まって、ひかりちゃんや結衣ちゃん、ゆずちゃんと雑談をしている時であった。
『あ♡ぷろ〜どチュウ♡だよ♡』
「ブッ!?ゲホ、ゲホ…ハァハァ」
「ちょ、ちょっと、大丈夫?」
「だ、大丈夫、大丈夫。ごめんね。いま拭くから」
梅酒を吹いてしまった。
突然、天使の声が聞こえてきたのだから、吹いてしまったのは仕方がないと言っていい…と、とりあえず携帯を開いて、データフォルダーを開くが、異常はない…気の所為なのだろうか?けど、修二さんもむせてるし…後で聞いてみよう。
床を拭き、再度雑談に復帰する。
女の子の雑談なんて、他愛のないものだ。
しかし"普通の"女の子と言うべきなのかもしれない。
ここにいるのは、芸能界で仕事をしてきた女の子達である。
「ひかりはバラエティーとか、怖くないの?」
「ク、ク、ク。我に恐れる者はない!!」
「ゆずちゃんは、台詞とか覚えるの大変そうだよね」
「まぁそうね。けど、台詞を覚えるのには、コツがあるの」
「コツって?」
当然、気になって質問をするも、なぜか顔を赤くするゆずちゃん…うん。マジ天使♡
「…う…歌よ」
「ほぉ。参考までに聞かせてくれまいか」
キランっという、効果音が聞こえてきそうな、そんな表情のひかりちゃん。
更に顔を赤くするゆずちゃん…うん。可愛い♡
「ゆず。同じ事務所の仲間なんだから、嫌だなんて言わない」
口を開きかけたゆずちゃんだったが、結衣ちゃんが先手を打った。後手に回るゆずちゃん。
「うぐぐ…ちょ、ちょっとだけなんだからね」
た、たまらない…可愛いすぎて。
『お兄ちゃん…だぁい好き〜♡』
「…ゲホッゲホホ!!」
「だ、大丈夫?」
「だだだ大丈夫、大丈夫」
マズイ。
さっきからアミちゃんの、可愛い可愛いアミちゃんの声が聞こえてくる。
昨日の夜、遅くまで神ゲーをしていたからかしら?
「お、お酒って、たまにむせたりするよね?」
「確かにそうね。器官に入ったりしたらっていうより、お酒に限らないでしょ?」
「ふふふ。遥ったら」
「だ、だよね〜あははは」
よ、良かった。
何とか誤魔化せたようだ。
せっかく仲良くなってきたのに、神ゲーの事がバレて、友達になれなかったらヤダもんね。
修二は気にしないと言っていても、やはり、男の人と女の人では、考え方が違うのではないだろうか?と、遥は思っていた。
ごめんね…アミちゃん。
いつかきっと、皆んなに紹介するからね!と、心の中で謝罪し、再び雑談に復帰しようとした、その時である。
『ありがと♡お兄ちゃん』
「……ぐはっ!?」
「は、遥ーー!?」
謝罪した時、天使からお礼を言われてしまった私は、その場で倒れてしまうのであった。




