表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アイドルとマネージャー  作者: 伊達 虎浩
39/82

第2章 アイドルプロジェクト

 

 恵理がいなくなった事により、千尋と修二の二人だけになった社長室。


「なぁ、千尋。もう一度考え直さないか?」


「考え直さないかって、結衣の事?それとも、ひかりちゃんやゆずちゃん、あゆみちゃんの事?」


「全部だ」


 キッパリ、ハッキリと告げる。


「いいか、千尋。あゆみがどうかは知らんが、遥は新人で、それに結衣も加われば新人が二人だ。ひかりやゆずにはそれなりに仕事があるから、その二人に時間をかければ、残りの三人がおろそかになる」


 やる前から…とか、やってみなくては…とかの問題ではない。


 例えば、ひかりに地方ロケの仕事が入った場合、当然、マネージャーである俺も、ひかりに同行しなくてはならない。


 日帰りならいいが、違った場合、残りの四人はどうするのか?問題はそこだ。


「シュウ君が何を考えているのか、大体は予想がつくけど、大丈夫。問題ないわ」


 それでも、千尋は譲らなかった。


「ひかりちゃんのバラエティーへの出演のオファー、ゆずちゃんにきたドラマや映画のオファー、あゆみちゃんにきた声優の仕事も受けて頂戴」


「…待て。あゆみは声優なのか?」


 そんな馬鹿な!?と、修二は驚いた。


 なぜなら、ひきこもっている間、アニメざんまい、すしざんまいの日々を送っていたからであり、相川あゆみという名前を、見た事も聞いた事もなかったからである。


「まぁ、あまり売れてなかったみたいだけど…それと、なるべく早く、女の子のマネージャーを雇うから、それまでは頑張ってくれないかな?」


「……なぁ、千尋。お前のプランを聞かせてくれないか?」


 マネージャーを雇うということに、異論はない。


 男である自分では、女の子である彼女達に対し、どうしてもカバーできない部分が確かにある。


 下着…とかな。


 とりあえず、千尋のプランというか目的というか、目標みたいなものを明確にしてから、話し合った方がいいだろうと考えて俺は質問する。


「…そうね。シュウ君には最初に伝えといた方がいいかもしれない」


 マネージャーである修二が、一番最初に動き、一番働く事は決まっている。


 修二が動き、働き、仕事をとってきて、初めて他の人が動き始めるのだからと、千尋は考えた。


 真剣な表情で、千尋は口を開く。


「私が目指しているのは、唯一無二のアイドルグループよ」


「……は?」


 聞き間違いだろうか?少し、マヌケ面になりながらも、修二は質問する。


「ア、アイドルって言ったか?」


「えぇ、そうよ」


「ちょっと待て。意味がわからないんだが…」


 コイツはいきなり何を言っているのか?分かるヤツがいたら説明してくれ。


「ん?だって、考えてみてよ?バラエティーで活躍しているひかりちゃん。ドラマや映画で活躍しているゆずちゃん。少しだけど、声優として活躍しているあゆみちゃん。遥ちゃんや結衣も充分可愛いし、素質はあると思うの」


 バラエティーで活躍するひかり。


 ドラマや映画で活躍するゆず。


 声優として活躍するあゆみ。


 かつて、別の分野で活躍する人達が集まって、結成したアイドルグループなどあっただろうか?


 つまり、唯一無二とはそういう意味なのだろう。


「じゃ、じゃぁ何か?俺はアイドルグループのマネージャーになれって事なのか?」


「そうよ。それなら、マネージャーが一人でも、問題ないでしょ?勿論、だからといって、女の子のマネージャーを雇わない何て事はしないけどね」


 確かに五人組のアイドルグループのマネージャーであれば、一人でも大丈夫なのかもしれない。


 基本的に個別でなくグループのマネージャーは、一人だからである。


「……お前の考えは分かった。けど、それならそれで、きちんとアイツらに説明するべきなんじゃないか?」


 明日から、アイドルを目指せ!などと言われて、納得するはずがないだろ?


「勿論、これからきちんと、説明するつもりよ」


「ゆずは、色々な役を演じたいっていう思いから、事務所を移籍して来たって言ってたぞ」


 色々な役を演じたい。


 そう思って移籍までした結果、アイドルだぞ?


 いや、アイドルを馬鹿にしているとかではなくてだな…話しが違うじゃん!っていう話しだ。


 ゆずだけではない、遥だってそうじゃないか。


 大好きな姉が、命をかけてまで見たかった世界、叶えたかった夢、見てきた景色を自分も見たい。


 そういった思いから、この業界にやって来たのだ。


 なら、遥が目指すべき道はアイドルではなく、女優である。


 あゆみはどうだ?声優なんだろ?


 ひかりは…ま、まぁ、アレだが。


 そして…結衣は?


「…マネージャーとしてではなく、お前の幼馴染として質問する。なぜ結衣を芸能界に入れるという結論になった?」


「……シュウ君から見て、結衣はどう見える?」


「…どうって、外見か?そりゃぁ、可愛いだろ」


「ふ、ふ〜ん…可愛いんだ」


「ん?いや、可愛いだろ?」


 性格はキツイけどな。とは言えない。


「ま、まぁ、可愛いけど…けど、可愛いからってだけじゃないの。結衣には、自分の道を進んで欲しいのよ」


「自分の道?」


「そうよ。私の力になりたいって思ってくれていて、私の秘書になってくれたのはもちろん嬉しいんだけど、果たしてそれは結衣の本当の夢なの?」


 尋ねられた修二は考えるが、残念ながら彼はその答えを知らない。


「私に遠慮していないか?私の顔色ばかりうかがっていないか?やりたい事、やりたくない事があるならハッキリと言って欲しい。我慢せずに生きて欲しい。なりたい夢があるなら、それを叶えて欲しいと思っているの」


 結衣は千尋に逆らわない。


 弱みを握られているとかではなく、千尋が絶対だ!という気持ちが強い。


 つまり、結衣は千尋に、依存してしまっているということである。


 携帯依存症とかと似ているかもしれない。


 依存症は治すべきだ。


「千尋が結衣の事を考えてるってのは、分かった。しかし、何で芸能界なんだよ」


「結衣が芸能界に憧れているからよ」


「……そうなのか?」


「結衣の一番近くにいるのは誰?結衣を一番見ていたのは?結衣の事を一番考えていたのは?」


 社長として、先輩として、友人として。


 結衣についてなら、ゆずにも負けない自信が千尋にはある。


「わかった…けど、条件がある」


 アイドルのマネージャーをする事に、異論はない。


 女の子のマネージャーを雇う事に、もちろん異論はない。


 彼女達が納得するかは置いといて、彼女達のマネージャーになる事に異論はないのだ。


 しかし、しかしだ。


「言ってみて」


「単純な話しだ。千尋の側で、秘書として働く事が結衣の夢なら、これからもアイツを、アイツを側にいさせてやってほしい」


 部下として、先輩として、友人として。


 結衣の事を考えている気持ちは、修二にもある。


 深々と頭を下げる修二に対し、千尋は小さく笑った。


「うふふ、馬鹿ね…当たり前じやない」


 考えるまでもない、と、千尋は即答した。


「じゃぁ、結衣ちゃんを呼びましょうか」


 そう言って携帯を取り出す千尋に、修二は待ったをかけた。


「千尋が結衣に聞くと、本心を言わない可能性がある。だから、俺から聞くよ」


 千尋にお願いされたら結衣はきっと、断らないだろう。しかし、それでは駄目なのだ。


「…本心か。シュウ君には話して、私には話してくれない。ちょっぴり…悔しいわね」


 社長室を後にする修二の背中を見ながら、千尋は独り言のように、呟くのであった。


 その独り言が修二に聞こえていたかどうか、それは、修二にしか分からない事である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ