第2章 お家がない
飛行機が飛ぶ。
いや、飛行機に乗ったのだから当たり前だ…と、思うだろ?
「ととと、飛び、飛びますよ!修二さん!飛びます!飛びます!」
「…そんな昔のギャグみたいに言わんでいい。ていうか窓側がいいなら、シートベルトをする前に言え!」
「昔のギャグ?」
窓の外を見ようとする遥は、俺の方に身を乗り出してきた。シートベルトをしている為、そこまでの被害はないのだが、正直うっとうしい。
電車やバスの中で少し仮眠しようかなぁっと考えている時に、隣で騒がれた時のアレだ。
「なぁ遥。俺眠いからさ、窓の外が見たいなら席を交代するか?」
シートベルトを取っていいというアナウンスの後、修二は遥に提案した。
「い、いいんですか!?ありがとうございます」
嬉しそうにする遥。
これで眠れると修二も心の中で喜んだ。
「ところで修二さん」
「…ん?何だ」
「ビーフorチキン…どっち派ですか?」
「ビーフだが…一応言っとくけど、出ないからな」
「そそ、そうなんですか!?じゃ、じゃぁ!東京までどうすればいいんですか!!」
「どうもこうも我慢しろ!」
「無理ですよぉ…シクシクシク」
「…効果音を自分で言うな。とにかく俺は寝るから、お腹が空いたならコレでも食べてろ」
「しいたけ山かぁ…どっちかっていうと、とうもろこし山派なんですよねぇ」
文句があるなら食うな!と、言いたいところだが、言った所で喧嘩になるだけだ。
とりあえず我慢して寝よう。
修二は文句を言う事なく、重たいまぶたを閉じた。
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ユサユサユサ。
「……修二。修二さん。修二さん!」
しばらくして、両肩を揺らされながら名前を呼ばれた修二は、目を瞑りながら用件を聞く。
「そ、その…お手洗いに…ですね」
どうやらお手洗いに行きたいので、道を開けてほしいという事であった。
「…ほら、通れよ」
これは仕方がない為、修二は道を開ける。
「ありがとうございます。すいません…よっと」
遥が通り抜けた後、再び目を閉じる修二だったのだが、しばらくしてからまた声をかけられた。
声をかけて来たのは言うまでもなく、遥である。
「……今度は何だ?」
「何だじゃないですよぉ〜。帰って来たんで、通してほしいんです」
「…ほら、通れよ」
本当。いちいち起こさないといけないこのシステム…何とかできないんですかね?
そんな事を考えながら遥を通した修二は、再び目を閉じ…かけた所で、再び声をかけられた。
「……俺を寝かせる気0だろお前」
「えっと…ですね。ちょっと…忘れ物をしちゃって」
「……ほらよ!通れよ」
イラッとしながらも、仕方がないので修二は道を開ける。
「そんなに怒らないで下さい…よっと…あ!」
「…今度は何だ?」
両手を合わせながら、ニッコリ微笑む遥。
「起こすの面倒なんで、起きてて下さいね♡」
遥はそう言い残して、行ってしまった。
なぁ…俺、怒っていいよね?
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鹿児島~東京まで約2時間ぐらいで着く為、結局眠れなかった。うん?遥の所為なのは言うまでもない事だろ?
まぁ、とにかくだ。色々とあったが、何とか成田空港に着いた。
「じゃぁ、荷物を取って来いよ。そこで待ってるから」
回転寿司のように、次々と流れてくる荷物を見ながら、修二は遥に提案をする。
「ま、待って下さい!?」
ガッと、修二の腕を掴む遥。
「か弱い女の子を助けようという優しい気持ちが、修二さんには無いんですか!」
「…か弱いって、お前なぁ」
か弱い女の子は、あんな大量の荷物を引き連れては来ない。
「それにですよ?修二さんの後ろに、大量の荷物を抱えた女の子の姿・・可笑しいですよ?」
イラッとする修二。
しかし、遥が言った言葉を想像した瞬間、文句が言えなくなってしまった。
修二が歩く後ろに、大量の荷物を背負っている遥。どう考えても周りの人から、最低な男だと思われてしまうだろう。
「…だから言ったじゃねぇか」
渋々従う修二であった。
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荷物を大量に持つ修二。
ショルダーバッグだけを持つ遥。
「はぁはぁ…ここだな」
宅配サービスと書かれた看板を見ながら、修二は息を整える。
「…ほら、中で手続きして来いよ」
「はぁはぁ…分かりました。修二さん」
「何だ?」
「お姉ちゃんの住所が解る物を、貸して下さい」
「は?んなもん、ねぇよ」
コイツはいきなり、何を言っているんだ?
「な、ないって!?本当にお姉ちゃんのマネージャーだったんですか?」
「あのなぁ。マネージャーだからといって、担当するタレントの住所が解る物を所持したりはしないんだぞ」
「どうしてですか?」
「どうしてって、そりゃあ万が一それを落としたら大変だろ?ていうか、それを知ってどうするんだよ」
「え?何言ってるんですか?決まっているじゃないですか」
人差し指をたて、可愛らしく遥は告げる。
「送るんですよ。我が城に♡」
「は?アイツの家って、まだあるのか?」
「え?ないんですか?」
知らんがな。と、ツッコミたいところだが、それどころではない気がした修二は質問をする。
「まさかとは思うが・・お前が東京で暮らす家って、雪の家なのか?」
「姉妹だから普通ですよね?」
「い、いやしかしだな・・」
その後の言葉は絶対に言えない。
雪の家。つまり、自殺があった家。
そこに住む…だと?
言えるはずがない。
「そもそも、あれから1年経っているが、家賃とか払っていたのか?」
「家賃て、自分で払うんですか!?」
「当たり前だ!!寮じゃあるま・・い・・し?遥?」
「どどどど、どうしましょう修二さん!!」
この先の言葉を聞きたくない。しかし、聞かずにはいられない。
「私・・家なき子です」
同情するなら金を・・いや。同情しないからな。そもそも考えが甘すぎる。
「・・どうすんだよ」
頭をかきながら、俺は尋ねた。
すると、遥は泣きそうな表情を浮かべながら、こう言うのだ。
どうしましょう?と。
ホント、知らんがな。だよな?




