僕の好きな絵画
僕にとって人間とは美術の未成品だと思っている。
じゃあどうしたら完成するかって?
それは人間の終わりこそが美術作品の完成品だと。
僕は確実にそう思っている。
だから僕は展示会という物に素晴らしき魅力を感じるんだ。
だってそれはその人間たちが歩んできた道だと思うし、
ある種、人生の集大成だと思うんだよね。
だからこそ、僕はそういう人生の集大成を貴方と共に作り上げていきたいんだ。
何でって、僕は今までいろんな美術作品を描いてきたけど、
そのどれもがうまくいかない失敗作だったんだ。
でも今度作り上げる君の作品はとてもいい感じに出来上がりそうなんだ。
君は今までの絵具と違っていい味を出していると思うし、
君のその笑顔はまるで小公女セーラのように耽美で素晴らしい。
だから、僕がぽいって魔法をかければ、
君は素晴らしい芸術作品に今すぐだってなれるさ。
どうして君は怯えているのだい?
どうして君は悲鳴を上げてるんだい?
今君は巨匠である僕の素晴らしき瞬間に立ち会えるんだよ?
君が協力してくれたら、君の素晴らしさは新聞の一面に載るほどの、
そんな旋風を社会に巻き起こせるんだよ?
君のその容姿は、少なくともこの街の人々を感動させるほどの素質はあるはずだよ?
何も怖がることは無いさ。
さあ、顔を上げてごらん。
抵抗しないで。
君はミロのヴィーナスを超える素晴らしき芸術品になるんだ。
さあ、そろそろアトリエに花を咲かせる時間がやって来たよ。
ほら、息を止めて。
1、2、3、4、5、
やっぱり、君は未完成品の時から、寝顔の時まできれいだね。
そうして僕は自身の完成品を見る機会がやって来た。
僕の展示会には多くの観客がその「僕の絵画」を目当てにやってきた。
その観客の多くはその絵画を見て、感動のあまりすすり泣く人も現れた。
やっぱり、僕に才能がないわけじゃなかったんだ。
僕はこの大勢の観覧客を見てそう確信した。
僕はこの作品に協力してくれたあの子に会いにいった。
その子はとても心地の良い安らかな顔をしていた。
首元にはうっすらと赤い線が見えた。
それが僕の作品のサインだ。
こうして、自分の作品に自分のサインが残っているととても達成感があるよね
そうして僕は上を見上げて、僕の自信の絵画を見た。
それはもうなんとも美しく、言葉には言い表せない逸品だった。
こうして自分の作品は数を重ねるごとに美しくなっている。
そうすると僕の達成感は次第に高まっていくんだ。
僕はもう一回、その絵画を見た。
やっぱり美しい。
今まで何度も美術館には行っていたけど、
その美術作品には何にも興味が持てなかった。
何故なのか僕にもわからないんだ。
やっぱり、美術って人間が交わらないと意味がない気がするんだ。
だから、僕が作ったあの子の絵画は素晴らしい。
でも誰もこの素晴らしさを理解してくれる人はいない。
みんな頭がおかしいんだ。
でもそれでもいい。
僕はあの子のことが大好きだし、
もっとみんなにこの絵画を知ってほしいんだ。
でもみんなあまりにもすすり泣きが多くてみんなちゃんと味わえてないと思うんだよね
この絵画はピカソをも超える素晴らしいものだっていうのに、
誰もそのことを理解はしてくれない。
でもそんなことはどうでもいい。
自分が良ければすべていいんだ。
僕が好きな絵画は、君の人生を投影したその絵画だと思うよ。
でも、少しばかり今回の作品は爪が甘いところもあったな。
まあいいや。
また新しく絵具を見つけて書き出せばいい話。
さて、次の絵具でも探しますか。