6月8日
[ただいまぁ]
〈おかえりなさい、おそかったわね〉
[ごめんごめん、ちょっと用事が長引いちゃって]
〈ふぅん、ちょっと話あるから座って〉
[う、うんなんか怖いよ?]
〈あなた、私に隠していることあるでしょ〉
[そりゃ、あるとも。いろいろとね]
〈そういうの、今はいいの〉
[と、言いますと?]
〈なんで予定より帰りが遅くなったの?〉
[だから用事が長引いちゃって]
〈その用事って何?〉
[それは言えぬなぁ]
〈ふぅん。じゃあ、あのお金はどこにやったの?〉
[ん??]
〈あなたの机の引き出しの裏のあのお金のことよ〉
[え??なんのこと??]
〈まだとぼける気なの?〉
[いや、一体なんのことやら]
〈あなたのタンスの上から3番目の引き出しの右端、アルバムの子供達3人が並んで写っている写真の裏、トイレの電気をオン、風呂の換気扇をオフ、テレビをオン、リビングの電気をオフ、クーラーをオンにすると開くベッドの下の床の扉の中、etc...〉
[おいおいまじですか、]
〈私を誰だと思ってるの?〉
[世界で最高の俺の嫁さん]
〈まぁ、隠し金があること自体は別にいいの。家計は基本的に私が管理しているんだし、生活に問題ないから〉
[は、はぁ]
〈だけど、その隠し金たちが今日一斉に消えたのは大きな問題だわ〉
[そこまで知って、]
〈それで?そのお金はどこに行ったの?〉
[いやぁ、まいったなぁ]
〈今日何の日か知ってるよね?〉
[結婚記念日です!]
〈なんでわざわざ子供達をお父さん家に預けてきたかわかってる?〉
[君と2人で過ごすためです!]
〈そんな日に隠し金が一斉に無くなって、あなたの帰りは予定より遅くなった〉
[遅くなったのは予定外だったんだ、ごめんなさい]
〈謝るのはそこじゃないでしょ?〉
[]
〈こんなのサプライズプレゼントがあるってわかっちゃうじゃない!〉
[ごめん!君の力を甘く見すぎていたようだ]
〈よろしい、で?〉
[こちらでございます]
〈これ、よく覚えてたね〉
[君のことだ。忘れるわけないさ]
〈ありがとう〉
[いえいえ]
〈〉
[]
〈まぁ、モノより大事なものもあるけどね!〉
[いつもありがとう。愛してるよ]
〈・・・ご飯のことだよ!バカ夫っ。〉
[あちゃー!でも、大事なことでしょー!]
〈さっ!食べましょう?今日は気合入れて作ったんだから〉
[あ!その前に聞きたいことがあるんだけど]
〈なに?〉
[洗濯機の電源をいれて、洗面所の電気を消して、リビングのソファーをずらして、冷凍庫を開けっ放しにしたら開くベランダの植木鉢の下にある空間のあれはまだあるのかい?]
〈さすが私の世界最高の夫。惚れ直したわ〉