第9話
リオンは寮暮らしらしい。俺を抱えたまま寮に入っていった。
『従魔は獣舎に入るんじゃないのか?』
『今は君一人だし大丈夫だよ。小鳥の魔獣を従魔にしてる子は普通に部屋で飼ってるし。』
寮の部屋は随分質素な感じだった。雑貨等が少なくて、随分と寂しい。
『じゃあ、文字の勉強を始めようか。』
リオンはお手製の文字の一覧表を作ってくれて、それを見ながら本を使って文字を勉強していく。リオンは優秀な教師とは言えなかったが、少なくとも根気強くはあった。文字表を見ながらならば簡単な文章なら読めるかもしれない…という程度にはなった。
『随分助かった。ありがとう、リオン。』
『どういたしまして。』
『そんなリオンにお礼があるんだが。』
『?なに?』
俺はゴブリンからせしめたお宝を放出した。
『いまひとつ価値があるかどうかわからないんだが。』
『こ、これ、凄いものだよ…』
リオンの生まれは商家の5男坊。継ぐ家はないし、親の遺産もまず回ってこない。だけれど家にある品は好きなだけ見放題だった。よって宝石や貴金属を見る目はある。ゴブリンのお宝は安物も2,3混じっていたが殆どは高価な品で、慎ましやかに暮らせば5年は何もしないで生活できるそうだ。特にすごいのは青い宝石のはまった指輪。魔道具みたいで効果を調べる道具で効果を調べてみたら、攻撃すると時間差で2度目のダメージが入る効果があるらしい。
『じゃあ、その指輪はとっておこう。他は売ってしまってもいい。』
『というかこれどこで手に入れてきたの?』
『ゴブリンが持ってた。』
『へ~…光りものの好きなゴブリンだったのかな。』
『かもな。』
醜悪な緑の小人がじゃらじゃらアクセサリーを身につけているところを想像する。…シュールだ。ゴブさんは着飾っちゃいけない生き物だと思います。決定。今、俺が決めた。と言う訳でこれからもゴブさんが光りものを貯めこんでたら積極的に頂こうと思います。
恐々指輪を見つめていたリオンが顔をあげた。
『ところで君どこで寝る?食べ物ってどんなものならいいの?』
『スライムは眠らないんだぞ。食べ物は何でも食べる。ゴミとか残飯とかでも大丈夫。まあ、美味しい物が食べられるならその方が嬉しくはあるがな。』
『わかった。普段ボクが食べてるものと同じものを食べてもらうよ。吃驚するくらい質素だけど。』
自分と同等の扱いをしようとするリオンに思わず微笑みがもれる(スライムの表情筋に期待しないでください)
『ほんと気にしなくて良いぞ。石とか草でも全然いいし。ぶっちゃけ生きるだけならスライムは少量の水と光があれば生きられるんだ。俺は好んで魔物を食べてるけど。』
『魔物って美味しいの?』
『まずくはないな。でも味だけならさっき食べた串焼きの方が数万倍旨いぞ。』
主に魔物を食べてるのはスキルが吸収できるからだけどね。
早速夕食。食堂で食べるのだが、リオンの宣言通り夕食は質素だった。カチカチのパンに野菜の切れっぱしとほんの少しの肉が入ったスープ。味付けのされてないトマト。スープの味付けは塩オンリーだ。リオン曰く学食で唯一素晴らしい点をあげるなら、とにかく安いということだという。まともな食事がとりたければ自炊するか外で食べてくるか、らしい。リオンは自炊できなくもないが自炊で学食のコストを下回るのは難しいんだそうだ。劣悪な環境だ。リオンは相当お金に困っていたらしい。
『さっき渡した品を売り払って明日からは外で食べろよ。成長期の子供にこんな食事なんて言語道断だ。背が伸びなくなるぜ?』
『うーん…何か贅沢することに罪悪感を感じるんだけど。』
『その感覚は貧乏症という病気だ。いいからきちんと食え。あ、俺の食事はいらんぞ。スライムは食べるなら際限なく食べるが、殆ど食べなくても生きていけるし、それが別に苦痛じゃないからな。』
『いいのかなあ…』
『構わん、構わん。あと服も新しいの買えよ?いくらなんでも酷いぞ、それ。』
『うう…』
リオンの服は清潔ではあるけどいくつも接ぎを当てていてボロッちい。愛嬌のある顔も台無しだ。さぞやモテないことだろう。もし前世の俺がリオンくらいの(平均よりやや可愛い)スペックを持っていたらもっと人生変わっていたはずなのに!ギリギリ。(ハンカチを噛みしめる)ふ、ふん、まあ俺も今となっては誰もが羨む美スライムだけどね!このセクシー且つ艶やかなボディラインを見よ。……自分で自分の傷を抉るのはよそう。何だか無駄に傷ついた。
リオンはお湯を貰って身体を拭いて薄い布団に入る。
『ラヴィもお布団に入る?』
『そのうち入れてもらおうかな。今日はいい。今まで地面で生活してたんだから床が嫌ってこともないし。』
『…そう。おやすみ。』
『おやすみ。』
リオンの学校は週休二日。今日と明日が休みなはずだから明日は、ブツを換金して服を買いに行かせよう。それからまともな食事をお腹いっぱい食べさせてやりたい。仮にも俺の主人なんだからしゃんとして、幸福でいてもらわなくちゃ困る。
リオンが寝付いたのを確認してそっと寮から出た。魔物が大通りを歩くわけにもいかず、暗い裏道を歩く。【隠密】を使いつつ【気配察知】しながら歩いているんだが、うまく見つかるかなあ…発信器みたいなのが付けられるスキルがあれば便利なのに。
【超嗅覚】を頼りに進んで、如何にも怪しい裏通りでヤツを見つけた。ブロフだ。黒づくめの男相手に何か話している。
「前金は小金貨5枚。成功したらもう半分の小金貨5枚渡す。リオン・クラヴァスってガキを殺せ。あいつは俺に恥をかかせやがった。生かしちゃおけねえ。本当は自分で殺りてえが、こそこそ隠れて殺すのは苦手でな。頼んだぜ?」
黒ずくめの男は前金を受け取った。
「確かに。依頼だからな。間違いなく遂行しよう。」
俺はここまで聞いて人型になり双剣でブロフの首を狩った。
「な、何者だ!」
黒ずくめの男が誰何したが答えずに双剣を振るった。避けられたがそんなの推定済み。避けた先をめがけてウォーターカッターをぶち込んだ。
血まみれの死体二つ。このままじゃ騒ぎになるだろうから食べといた。飛び散った血液も綺麗に食べ取る。
―――【闇魔法】を覚えました―――
黒づくめの男からスキルが取れた。これで殆どの魔法は取れてると思うんだけど。
二人が取引していたお金は有り難く頂いて、リオンの部屋に転移した。
あのタコ根性悪そうだったから始末しておきたかったんだよな。案の定ろくでもない計画立ててたし。実害が出る前に消せてよかった。
人間を殺したのは初めてだが、特に罪悪感は感じなかった。サ、サイコパスちゃうねん!ただのスライムや。




